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ヘタレの努力家  作者: りばーしゃ
第2章 王都〜ミーション〜
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全種族歓迎居酒屋〝幸食亭〟

居酒屋と言えば笑顔が集う場所だと思ってます。


美味い飯と仲の良い友人。


それらは万国共通であり、決して嫌な事をする場ではないと。



皆さんはどう思いますかね?




「おお…!!」




 扉を開けたその向こう、目に入るのは様々な種族、様々な表情(かお)




 目尻を綻ばせ、肉の油を滴らせながらかぶり付き合う斥候のような軽装をした男性と熊の獣人。


 ジョッキを片手に肩を組み合いながら談笑する厳つい盾を背負った男性とドワーフ。


 タワーのようなパフェをもくもくと目を輝かせながらつつき合う、紫と青のツートンカラーをしたウェーブの髪をした女性と金色のストレートの髪を腰まで垂らしたエルフの女性。


 本を片手になにやら和気藹々(わきあいあい)と語り合う茶色の癖っ毛のした合わせ(かがみ)のような双子。


 それを遠くから見ながらによによとした怪しい笑みを浮かべて隣同士で囁き合うぶかぶかローブの鼬鼠(いたち)の獣人と青肌銀髪の目隠れ女性。


 それらを(さかな)にするようにカウンター席でちびちびと静かに小さな器をを煽る黒いトレンチコートを羽織った片角を生やした白髪の老人。


 眼鏡をかけたエルフとカモシカの獣人と食事をする二人組等、狐と狸と猿の獣人三人で食事をするパーティー等、etc……




 それぞれが思い思いの事をする笑顔の空間、言うならば〝居酒屋〟のような自由で平和な空間がそこにはあった。




 種族も、人種も、性別も、ごった混ぜにしたようなのに。


 ここには温かな〝笑顔〟しか無かった。




「…うわぁ……こりゃすげぇや……」




 思わず溢れ出る感嘆の気持ち。


 賑やか、且つ、幸せな光景に俺は圧倒されていた。


 ルギくんの村の件で少し滅入ってたのもあるが、それをかき消す様々な〝声〟。


 きらきらと肉の油が照り輝く炒め物や、真っ白な泡たっぷりのグラスを運ぶ種族は違えど同じ服装の店員達。


 と、その中の一人が俺達に気付いた。




「あっ、カナタさん!それにルギくんも!お久しぶりです。来て下さったんですね!!」




 ぱたたっ、と軽い足音をさせて向かってくるのは──ランさんじゃまいか。あっ、思い出した。






「バルちゃんの見た目はいう所ないからなー。所でお店の名前おせーて?ヴァサーゴさんの修行終わり次第王都向かうからさー」




「…やるわねカナタちゃん……素で言ってるわ…アタシのお店の名前はねー───〝幸食亭〟、〝全種族歓迎居酒屋〝幸食亭〟よ」




「こうしょくてい?…ほーん。うーん、間違って別のお店行っちまったら?」




「大丈夫よ。〝一番美味しい店なら〟アタシの所しか無いから。きっと無事に着けるわ」




「その時は僕がご案内しますね」







 なるほどな。バルちゃんの言う通り無事にお店に着けたのはそう言う事か。


 ギルドマスターのファウストさんも公認の美味さな訳だからなぁ…何よりこの盛況さは言わずもがな…か。




「ランさん!お久しぶりです。会えて良かった…!」




「ランさん久しぶり!ちょっと色々あって来ちゃった!!」




 にこっぱと、笑顔を溌剌(はつらつ)とさせるルギくん。


 そっか、そういえばルギくんもあの人ことバルちゃんの料理食べたいって言ってたしランさんと顔見知りなのも当然か。


 しかしその「ちょっと色々」がめっちゃ色々あり過ぎた気がするけどな……




「カウンター席が空いてるから案内しますね」




「お願いします。もう腹減り過ぎて…ほらシラタマもこのげっそり顔に……」




「にゅへ〜……」




 ひょいと頭から取ってみせると、ぽてっとしたボディの頬を瞬時にげっそりとさせるシラタマ。


 流石我が相棒シラタマ、俺の意図を瞬時に受け取る多芸さである。




「メニューはどうしますか?お任せなら店長が張り切って作ってくれますよ?」




 ウェイターのようなきちっとした白いシャツに灰色のスーツとパンツに身を包んだランさんがお手元のメモを取り出して聞いて来た。


 胸元の膨らみ、ぴしっと肌の流線形のラインが浮かんだパンツ、そこから伸びたしゅらっとした肌と同じ、綺麗な翡翠色をしたリザードマンの尻尾。


 見た目カッコいいのにこの丁寧な言葉使いとほんわかとした優しい声がとても可愛いと思います。




「お任せでお願いします。もうお腹の魔王様が唸って唸って……」




「オレもお任せで大丈夫だよ。どれも美味しいし」




 ぎゅるぎゅるずごご、きゅーくるくる。


 俺の腹は言わずもがな、ルギくんの腹の虫も可愛らしい音を響かせた。


 シラタマはそのままげっそりスタイルを維持。


 なんだこの腹ペコ集団。




「今お持ちしますねー」




 ぱたぱたと小走りで店の奥にランさんが向かうなり声が聞こえてくる。




 店長ー!!!カナタさん達来ましたよーー!!




 何ですって!?そっこー作り上げてアタシも持って行くわ!!あなた達!作っておくから出来上がり次第他の客のオーダー持って行って!!




 うん、相変わらずの様子で良かった。


 それではしばし、カウンターの席で待つことにしよう。




「いやぁ〜、にしても凄い繁盛してるなぁ……」




「オレも本店は初めて来たけど…凄いね。それなのにどんどん料理が運ばれてくるよ」




 客がオーダーをする、店員が厨房へ伝える、その数秒後に注文品が出てくる、お客へ届ける……


 なんてテンポの良い流れなんだろうか。


 自販機やロボットでさえこの速さは不可能だぞ。


 流石千人分の料理を一人で(まかな)えると言うだけある。




「ふっふっふ、今は丁度昼時だからな。儂は早めに頂いたのでこの空間を肴に一杯頂かせてもらってるよ」




 右隣に座る片角を生やした白髪の老人が俺達の声に返した。


 その老人のテーブルのすぐ側には被っていたであろうトレンチコートと同様の真っ黒な中折れ帽子が置かれている。


 ルギくんと同じ…?かと思いきや肌は人種と同じ肌色だった。まぁ、俺は人種でも白過ぎるが。




「昼酒…良いですねぇ…失礼ですが鬼人族の方だったりしますか?」




「ん?…んく……ぷはぁ。いや、少し違うかな。まぁ、気になさるな若人(わこうど)よ。ほれ、お待ちかねの物が来たようだぞ」




 酒をちびちびと呑みながらその老人は俺の予想をやんわりと否定した。


 そして老人の言う通り、大量の料理を持った人物が二人やってくる。




「カナタちゃん!!来てくれたのね!!ルギくんもいらっしゃい!!ようこそアタシの店へ!!」




 どす、とカウンターに並べられる様々な肉と色取り取りの野菜の山。


 とびっきりの笑顔で出迎えてくれたのはもちろん、バルちゃんと、ランさんだ。




「バルちゃん!!会いたかったよ!!あ、お金少ししか無い……」




 旅の路銀として少しヴァサーゴさんから渡されているが流石に心もと無い。


 この料理の山を払い切れるとは思えなかった。




「気にしなくていいのよ。アタシが奢るわ!!さぁたんと召し上がれ!!」




「「「わーい!(にゅー!)」」」」




「ふっふっふ、若いのぉ……」





 出ましたバルちゃんのイケメン、男前発言。


 この御恩はいずれ……!!


 ああ、空腹に耐えた甲斐があった…!!!




カナタ


「いざ肉体回復の儀へ!!!」




シラタマ


「にゅやー!!!」




ルギ


「ご飯ー!!」

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