圧倒
キャラアンケートとか需要あるだろうか…それとも軽いキャラストーリーのほうがあるのだろうか…うぅむ…
…
ずしゃり。
不適に笑う男の前で赤肌の大柄の男が崩れ落ちるように膝を着いた。
赤肌の男の額には肌と同様の二つの突起──もとい、鬼人族特有の角が生えている。
上裸に使い込まれた茶色の毛皮のベストを羽織り、丸太のような太さの下半身を覆う黒いズボンを履いた赤肌の男は、鬼人族の村に残る数少ない戦士の一人であった。
魔人とも引けを取らぬとも言われていたその戦力も、今ではこの男一人しか意識を保っていなかった。
『身体に…チカラが入らぬ……貴様等…ッ!一体……何をしたッ…!!』
身の丈程にもなる巨大な戦斧を杖代わりに、今ですら遅いかかる凄まじい倦怠感と途切れそうになる意識を堪え、赤肌の男が声を絞り出すように吠えた。
既に赤肌の男の仲間である男、女達は既にそれぞれの武器と共に地に伏している。
この男を支えるのは持ち前の力でも長年の技術でもない。
【鬼人族】と言う人族を圧倒する力を有した種族と言う『自尊心』それだけだった。
「へぇ…?なかなか耐えるじゃねぇか。流石、御伽話しに出てくる怪物【オーガ】。まだ意識があるなんてな」
にたりとした笑みを浮かべ、男はその薄汚れた少し長い金髪から八重歯を覗かせた。
小剣であるグラディウスをくるくると右手で弄ぶその姿には目立った外傷は見当たらない。
不思議な事に地面は抉れ、争った後があるというのに建物や置物などには全く損傷は無かった。
「遊ぶな。とっとと済ませろ。時間をかけると後々応援が来て面倒だ」
「へいへい。──で?居るんだろ?奥にガキ共がよ」
腕を組み、褐色の肌をしたスキンヘッドに顎髭を蓄えた男が金髪の男へとそう促すと、ぺろりと舌舐めずりをしてグラディウスを赤肌の男──鬼人族の戦士へと向けた。
『人族如きが…ッ…!我が子らには……手は出させんッ!!!!!』
───ッ!!
鋭い牙を剥き出しに、気迫がかける如く鬼人族の男はその金髪の男へと駆け出した。
これはこの男が今出せる最後の全力であった。
己が相棒である戦斧を握りしめ、渾身の力を込めて振りかざす。
この身がどうなろうとも、それが仲間の──僅かな糧になる為に。
──だが、現実は薄情であり、常に理不尽である事を彼は知る由も無かった。
「はっ、だからやり易いっての。あばよ、無駄な足掻きご苦労さん」
金髪の男がグラディウスを右手に握りしめ、同じく鬼人族の男目掛けて駆け出した。
二人の男が交差する。
小剣と戦斧。
はたから見たら結果は一目瞭然。
だがここは──そんな常識なんて通用しない。
武器と武器が交差するかと思うその刹那──金髪の男の身体が──鬼人族の男をすり抜けた。
『──ッカ……!』
がらん、と虚しく戦斧の音が響く。
それに次いで重々しい音を出しながら鬼人族の男の身体が地に伏した。
結果だけを見れば──勝ったのは小剣を弄ぶ金髪の男だった。
「『三倍』にしてやったぜ。せぇぜぇ良い夢でも見るんだな化物」
へらへらと笑いながら小剣を腰へとしまい、地に伏した男へと吐き捨てる。
そして頃合いを見計らって口を開くのは腕を組むスキンヘッドの男だった。
「ご苦労。俺は奴隷を仕入れてくる。お前は村の入り口へ見張りをしていろ」
「うぇ。だる。人使い荒くねーかダンナ?」
へらへらとした顔から一変、苦々しい顔を浮かべてそう返す。
だが、その金髪の男の言葉にスキンヘッドの男は鋭い目を閉じ、鼻から息を溢す。
「お前が逃さなさきゃこんな事しなくても良かったんだマヌケ。何かあったりすぐに知らせろ」
「はぁーい…ちきしょー。『魔封じの腕輪』付けても逃げ出す奴隷なんざ聞いた事ねぇッすよ。しかもその上客の品物は鬼人族なんて……はぁ…ツイてねぇ…だりぃ……」
だらりと上半身をさせ、ぶつぶつと愚痴を垂れ流しながら金髪の男はその場を後にした。
スキンヘッドの男はそのつるつるとした頭を右手で撫でながら左手首に付けた腕輪のような物を見つめる。
腕時計のように似た形をしているがそれには継ぎ目も無く、秒針すら無い。
しかしその文字すら書いていない文字盤の上部には小さな青い光点が複数輝いていた。
「……『一人』足りないな。まぁ、良い。どうせ顧客の希望は一人だからなんとでもなる──が、急ぐか。あの連絡が本当がどうかは分からんが」
スキンヘッドの男はここに着く前に仲間からある連絡を受けていた。
その仲間は少し『居眠り癖』がある奴の為、あまり信用はしていないがそのワードは男の脳内へと残っていた。
【稲妻】が王都に来ている──と。
「本当ならばすぐに離れた方が良いが……しかし──【稲妻】か。どうせなら少し見てみたいものだ。【三仙】の一人の直弟子、現総ギルドマスター且つ、【英雄】の一人──か」
見たくも無いと言えば嘘になる。
【弟】と戦ったその【英雄】のを顔を。
「…ふん、何を今更。こんな薄汚れた仕事をしている俺が何を。──さぁ、仕事だ。あのマヌケが時間稼ぎぐらいになってくれれば良いが」
…




