黒、その後、白
この更新にて総PV1万を迎える事になりそうです。
処女作が5年かかっていたのを1年足らずで迎えるとは思いませんでした。
ありがとうございまする。
…うん、固いな。これからも書き進めて行くのでよろしこ!
…
ここはとある道端の外れ。
そこには外をぐるりと緑色の布で覆われた大きめの馬車と、その少し離れた所に二人の男が居た。
「はぁ〜っ!だりぃ〜…!早く酒でも飲みてぇぜ」
木へ腰掛け、使い込まれた、少し古い両刃の剣の手入れをしながら男が言った。
褪せた茶色のフードから覗く金色の髪は薄汚れており、服装もあまり綺麗とは言えない冒険者風の格好をしていた。
身長はあまり高くもなく低くもない、所謂中肉中背といった所だ。
両刃の剣もそこまで大きな物ではない、護身にも使われる手頃なサイズのグラディウスといった所か。
「うるせぇぞ新入り。こっちは金の計算中なんだ。暇なら奴隷共に飯でもやって来い」
切り株の上に様々な硬貨を積みながらメモを取る男が愚痴を吐く男に言い捨てた。
褐色のスキンヘッドに綺麗に整えられた顎髭を生やし、黒いローブを羽織った姿──彼は奴隷商である。
ごつごつとした指先はその見た目と違って正確に硬貨を積み上げ、しっかりとした字を書き上げていく。
男はその風貌からは真逆な、几帳面な性格のようだ。
「へいへい、分かりましたよ……」
「雑に扱うなよ。冒険者から拾ってやったお前の飯代が無くなるからな」
「分かってますよダンナ。今度は逃したりなんかしませんって。あの時はすいませんでしたって」
カチン、と腰の鞘へと手入れの終わった己の獲物をしまうと男はぶっきらぼうに立ち上がって奴隷の居る馬車へと向かった。
それを横目で見ながらスキンヘッドの男はため息を一つ着いた。
「…折角珍しい鬼の子供を手に入れたってのにあん馬鹿め。王都のボスへ言うのは俺だっつーのによ。コレだから【異世界人】は扱いにくい」
からり、とメモをし終えたペンを離し、男は鋭い目を閉じて己の頭を撫でながらそう呟く。
しかし、彼の【能力】は優秀である事には違いは無かった。
「『魔封じの手錠』をしてて逃げる奴隷なんて売れればどれだけの価値があったか。まぁ、油断してた俺も悪いか。ボスにも進言しておこう。王都でこの仕事が出来るのもボスの【能力】があってこそだからな」
数え終わった硬貨を皮袋へとしまい、男は王都への地図をチラリと見た。
「さて、食料が無くなる前に行くとしよう。ギルドもなんか騒がしくなってやがるしな」
時間は有限であるように食料も無限ではない、日が暮れる前に王都へと着かねばなるまい。
男は目に映る小さなその塀を見据えた。
…
『ふざけんな!じいちゃんだけ隔離ってどう言う事だよ!!』
あんだけ毎年あったのに一つ足りないはずは無い。
納得の仕様がない事実にオレは吠えるように叫んだ。
『薬が一つ足りない故に仕方ないのだ。ここは王都から遠い、最早自然治癒を待つしかない』
叔父がやれやれと言いながらそう答えた。
口ではそう言っていたが目が『早く消えろ』と訴えているのを覚えている。
叔父は『オレの事が嫌い』だから。
『どうしてもと言うならお前が取りに行くしかあるまい。ガキのお前にそんな事が出来るのならな』
下卑た笑みを浮かべて叔父が言った。
知ってるのだ。子供のオレにはそんな交通費などは無い事を。
この村では『オレを助ける者なぞ居ない事を』。
いや、『一人』はいるが当てには出来ない。
そもそも『今は』居ないし、この状況なんて知らないだろうから。
『やってやるよ!テメェ等の手を借りるなんてこっちからお断りだ!!』
そう言ってから村から飛び出し、王都へ向かったのは良いが甘かった。
『忌み児《ご》』として産まれたオレにはそんな身体能力なんて無いに等しかった。
子供の考える準備なんてたかが知れてる。
すぐに食料は底を尽き、弱った所を奴隷商に捕まるなんて思いもしなかった。
大型の動物でも手懐けてれば話は違ったのかも知れないが……
『あぁ?テメェ何睨んでやがる。捕まっちまったテメェの運を呪いな!』
そんな事知るか、そもそもこの目つきは生まれつきだ……なんて事お構い無しに拳や蹴りが飛んで来た。
もう一人男がいたがソイツがその場に居なくて助かった。
なんとか緩んだ鎖から抜け出して湖へと逃げる事が出来たからな。
『忌み児』とは言え折れる事が無かったこの身体はオレが思ってたよりも頑丈らしい。
でも…流石に…手錠を着けて泳ぐのは……無理だったかな………
薄れゆく意識の中、ふと思うのはじいちゃんの笑顔が最後に見れなかった事か。
じいちゃん…ごめん……
…
意識がはっきりした時に感じたのはとても良い匂いだった。
ここは一体何処なのだろうか?
まさかこれがあの世という所なのだろうか。
そう思ってしまえば増えるのは恐怖という波。
目蓋の裏に広がる暗闇を満たすのは早かった。
パチパチと言う音と何かが燃える臭い。
それは彼の恐怖感をさらに煽った。
火…?まさか…っ…喰われる!?
ぶわり、と汗が噴き出す。
逃げなければ。
『……うわぁ──ぶふっ!』
目を開けたと思ったら飛び込んで来たのは──白い毛の塊だった。
へ?え?何?どうなってるの?
恐怖感から一転、痛さとは全く無縁だったその柔らかでほわほわの感触に衝撃を消された事によって得た感情は、戸惑いだった。
「にゅや?」
くるーりとこちらを見て、首を傾げる丸い生物に少年の思考は硬直する事を選んだ。
何この白いもふもふ。
???
「えっ、オレまだ名前でないの!?」
カナタ
「次回だってよ」
シラタマ
「ふにゅ」




