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ヘタレの努力家  作者: りばーしゃ
第3章 武術大会〝アーツカッチア〟
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可愛さとえげつなさ




「とんがりマスクとファードラゴン…あのでっかい青いうんこか!」




 画面に映るのはあの予選でも見たでっかいうん…いや、大きな青いドラゴンらしきものが居た。


 ぎゅるぎゅると早く動いていてはっきりとは分からないが。




「えははっ!仮にもドラゴンをうんこたぁおめぇやっぱおもしれぇなカナタ!ドラゴンつっても〝ドラゴンっぽくない〟ドラゴンでな…そうだな、おめぇさんの仲間の毛玉に〝似てる〟な…」




「にゅ?」




「シラタマに?」




 俺の言葉にアイゼンがチラリとルギくんにもふられているシラタマを見て酒を口に運ぶ。


 ドラゴンっぽくないドラゴン──そう思いながら画面に映されたステージを見た。




『あーット!!巨獣兄弟、果敢にファードラゴンに向かって行きますが素早くうねるその巨体に巧みにかわされて行クゥー!!』




『カヴォド兄者!このままじゃこっちの身体がもたねぇぞ!!』




『分かってらぁ!…クソが!〝こんなに速く動く〟なんてよ!可愛い面しててもドラゴンって事かよ!!!』




 背丈と変わらない程の巨大な斧とハンマーを持ち、ドワーフの兄弟がそう悪態を吐いては果敢に向かうがその宙に浮く青く、巨大なドラゴンに当たる気配はない。


 そのドワーフの動きは決して遅いものではない、むしろその巨大な武器であんなに動けるかと感心するものだ。


 だが…これは相手が悪い。




『オラァアアアアアア!!』




『カヴォド選手がチスコ選手のハンマーによる一撃によって出来た隙を狙いますがかわさレルー!!速イ!速いぞファードラゴーン!!その可愛さに油断してはいけまセン!これがドラゴンの実力ダー!!!』




『クオッ』




『……!』




 ドラゴンとは思えない丸みを帯びた爬虫類の幼体のごとき顔につぶらな黒い瞳、長く青い身体には短くふわふわとした青白い体毛が生え、その名前の通り首元には襟巻きのようなふわふわもこもこの白い〝ファー〟があった。


 小さく鳴いたそのドラゴンの頭の上には黒いローブに身を纏い、白い手袋、黒いシルクハットをした人物が一人。


 白い特殊なとんがりマスク…〝ペストマスク〟と呼ばれるそれを着けたその人物が広げた両手を広げると不思議な事が起きた。




──そ──ろ──そ──ろ──き──め──る──よ──




 ふわりと宙に漂う青白いそれは……〝文字〟。


 確かに〝そろそろきめるよ〟と読めるナージ語のそれはこの戦いを終わらせる意志が込められていた。




『出まシター!!とんがりマスク座長の〝プラズマ(荷電粒子)〟文字ィ!この戦いを終わらせるつもリダー!!!』




『なんだとォ!?ふざけんじゃ──!?』




『カヴォド兄者避けろォ!!』




 斧を扱うカヴォドの元に迫るはその文字だったプラズマの球体。


 チスコが咄嗟に叫ぶがカヴォドの斧はステージに食い込み、その動作を鈍らせる。


 斧を抜く途中だったカヴォドの身体にそのプラズマが触れる──




『兄者ーッ!!』




『…?何ともねぇ…いや…!身体が…!?』




『…?……ぐおっ!?…い、痛くねぇ?』




 プラズマが触れたカヴォドの身体がふわりと浮く。青白いプラズマに包まれながら。


 それは呆気に取られたチスコが食らった時も同様であった。


 これが……攻撃だと言う事を感じさせないかのように。




『……!』




『うおっ』




『身体が勝手に!?』




 座長が両手を上にするとその二人の身体が座長の思い通りに宙に舞う。


 そしてファードラゴンが身体を〝二重の横輪〟にした時、彼らの曲芸が始まる。




『クオっ!』




『『う、うあぁああああああああ!?』』




『始まっタァーー!!とんがり団の曲芸攻撃ィ!!座長操る彼等の肉体はコースとなったファードラゴンの身体を滑る滑ルゥウウウウウ!!!』




 ぎゅるぎゅると座長の指先とシンクロした二人の身体がそのリングとなったファードラゴンのコースの上で回る回る。


 なるほど、曲芸攻撃とはよく言った物だ。あんなものを高速で喰らい続ければ──




『クオッ』




『『ぐげッ……おえええええええッ!!』』




 すっかり目を回し、尻尾によってぽいっとステージ上に捨てられた二人はやむなく胃の中のものをぶちまけた。


 そしてバッタリと倒れた所で審判による声が上がる。




『勝者!とんがり団!』




『……!』




『クオー』




 手を振ってアピールする座長、とんがりマスクに愛らしく無くふわふわにょろにょろとしたファードラゴン。


 だが俺の感想はそれと真逆で……





「え、えげつねぇ…」




「楽しそう…!」




「えははっ!カナタも坊主もどっちも正しい感想だな!そうさ!アイツらはあれで遊戯として金を稼ぎ、敵も倒して来やがったんだよ」




 俺とルギくんの異なる感想にアイゼンはそう説明した。


 なるほど…確かにあれなら子供には遊戯としては堪らないだろう。ドラゴンの背を滑れるのだから。


 あの宙に浮いたドワーフをボールの様に巧みに扱う技術を見れば安心も出来る。


 現に彼等ドワーフの外傷は一つとして無い……外傷はだが。ああ、見るも無惨なお髭。おぼろろしたお陰でとても見てられない物に…あっ、水ぶっかけられた。




「試合が終わったら広場でいつものごとく子供やら遊ばせて商売してるさ。次にやる試合はーっと…おっ、陰陽化怪流いんようけがいりゅうと──」




「よし行こう兄ちゃん!オレ、ドラゴンに乗りたい!」




「がってんだルギくん!俺も乗りたい!」




「ふにゅー!」




「おいおい、試合を見なくても良いのか?」




 頭にシラタマが登り定位置にセット、駆け出すルギくんに続けー、と勇む俺たちにアイゼンがそう呆れて顔で言うが見たところでやる事は決まっている。




「そんなの力いっぱいやるだけだろ?大体俺が見たところで戦略作る頭なんてねーしロスに任せたわー、おら行くぞシャク食ってるのおしまいだ。そんじゃー行ってくらぁ〜」




「あーれー、ウチの肉ぅ〜」







「あーあ、行っちまったぞカナタのヤツ…良いのかよロス。一応見といた方が良いんじゃねぇのか?」




「まぁまぁ、とりあえずは僕達が見ておけば大丈夫でしょう。カナタはそういうの得意ではないですし…それに陰陽化怪流いんようけがいりゅうなら見知った仲で──」




「──バカヤロー、その後だ。炎雷流武術一派えんらいりゅうぶじゅついっぱの試合、その後にこの大会に一人で参戦してる剣客集団〝血染ちぞおぼろ〟の一人、ホコラというさむらいの試合だ。とりあえずお前らだけでもしっかり見とけよ」




カナタ


「いざドラゴーン」



ルギ


「ドラゴーン」




シラタマ


「ふにゅー」




シャク


「ちょっと待ってひたすらもぐもぐしてたからウチ何も知らないんだケド」

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