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ヘタレの努力家  作者: りばーしゃ
第3章 武術大会〝アーツカッチア〟
159/213

肉は肉を呼ぶ

一応既に完結の目処は立っております……まだまだ先ではありますが……


スピードが早まるか否かは読書の反応次第ですので宜しければ感想、レビューなどばんばんお願いします!


短くとも励みになりますので軽い気持ちでどうぞ。




 ぱくり。


 程よい温度になった焼きたての肉、大豆肉を口に含む。


 程よい弾力が歯を叩き、濃縮されたスパイシーで芳醇ほうじゅんな薫りと共に肉が軽やかに裂けた。




「うめー!大豆肉の串ステーキ!!こりゃあ疲れた身体に肉汁が染み渡るぜぇ!!」




「こりゃあうめぇ。実際の肉より食ってて重くねぇし幾らでも食えるなこりゃ」




「これならさっぱりしてて朝食に出たとしても食べられるな。この濃厚さは複数の野菜から取った汁だな。美味い。どうだポクス」




「うめぇっス!これなら腹一杯食ってももたれないっス!」




「おいしー!」




「ふにゅー♪」




 もっしゃもっしゃと大豆肉を食らう二人と毛玉。


 一人は金色短髪のエルフ、もう一人と毛玉は言わずもがな頭の上から降りたルギくんとシラタマである。


 あぐあぐと串に食らい付くポクスはまさに犬のよう。よし、脳内でポチと呼ぼう。


 一方俺の二倍の面積のあるミノタウロスのダクスさんは鋭い目を細めて食べる顔は少しながら不満足そうだ。




「確かに美味いが…自分にはちょいとあっさりし過ぎて物足りねぇな。普通の奴を一つ頼む」




「はーい。あ!そういえば今朝にヘビーベアーのお肉が納品されましてねー!もう少しで出来上がるんですけど……」




「何だと!?それは本当か!?」




 どうです?と首を傾げるシェパードの獣人であるノンさんの可愛い事よ。


 鋭く、細かった目をカッと開いて驚くダクスさん。


 それに続いてキュクロプスの男性、アイゼンが補足するように口を開いた。




「おいカナタおめぇも食おうぜ!ヘビーベアーの肉は適切な温度で仕上がった肉はスナックみてぇにザクザクしてて濃厚な肉汁が飛び出すんだ。うんめぇぞ?」




「なにそれ超美味そう……うん?今朝に納品?」




「ギルドに店長が依頼してたのをこっちへ来てた〝大会出場者〟が受けてくれたみたいで……『この大会で稼ぐチャンスよ!』と高額で依頼してた店長流石ですねぇ……」




 そのノンさんのやたら似てる店長(バルちゃん)の物真似を交えた説明に、ふと一人の男としたやり取りを思い出した。



──……話しは纏まったかい、あんちゃん。なら早々にここから立ち去った方が良い。血の匂いに釣られて猛獣がくるぞ──




──ええ、そうします。助太刀(すけだち)感謝します。この大きい方の魔物は貴方の手柄です。どうぞ持っていって下さい──




──あー、いい、いい。〝(ぜに)は間に合ってる〟からあんちゃんが一緒に持ってってくれ──




 あの言葉はそう言う意味だったのかとカナタは一人(うなず)いた。通りで強い訳だ、と。




「…なるほど。あの無精髭の侍、大会出場者だったのか……ちなみにおいくらの依頼だったのノンさん?」




「んー、確か五百万バイス程だったかな?」




「ご、ごひゃっ!?」




 その金額に目ん玉が飛び出る程驚いた。


 たっけぇ!!上等なマグロ一匹レベルかよ!?




「そいつぁ随分と出したもんだが……その判断は間違っちゃいねぇなぁハルディンよ」




「ああ。一匹だけでも個体自体の大きさがデカいからな。食い尽くす頃には充分過ぎる程お釣りがくるだろう」




 なるほど、本当にマグロみたいな物っぽい。山のマグロとでもいうもんだろうか。




「…むっ。美味そうな匂いにウチ覚醒」




「おお、シャク。起きたか」




「とりあえずその串の肉をウチにもくれたもう」




 胸元のポケットにでろんと力無く寝ていたシャクが寝ぼけ(まなこ)で顔を上げた。


 ほいよ、と言いながら肉を一切れ串からついーっと取って渡す。


 少し悪かった顔色は大分戻っている。


 飯を食えばいつも通りの体調になるだろう。いいタイミングで起きたなお前。




「ちなみにノンさんお幾らで?」




「『宣伝してくれるならパーティ分の本数タダで良いわ〜』って店長から御達しですぜカナタちん」




「何…だと!?」




「美味しいお肉がタダだと…ッ」




「ふにゅ…ッ」




 再び店長(バルちゃん)の物真似をしてここだけの話ですぜとジト目をしてくるノンさんの言葉に思考が止まった。


 ぶぁかな、一匹五百万クラスの高級食材を使った串焼きがタダ…しかもパーティ分だと…!?


 驚く俺とは対称的にルギくんとシラタマのおめめが輝き、(よだれ)(したた)っている。きっと効果音を付けるなら〝ぎゅぴーん〟に違いない。




「店長の予想通り予選突破したでしょカナタちん。良い宣伝になるから突破祝いだと思って美味しく食べてちょーよ」




「えはははッ!そりゃあ随分と買われてんなぁカナタ!!おれ達にもパーティ分くれ。もちろん金は出すし宣伝もしてやらぁ」




「こちらもパーティ分頂こう。ポクスも食ってみるといい、筋肉が喜ぶ」




「なら食うっす!」




 あからさまに嫌そうな顔をしてたポクスにハルディンがそう付け加えるとコロリと態度を変えていた。ちょろい、ちょろいぞポクス。




「まいどあり〜♪」







「お、来たな」




「おーい大丈夫だべがカナタよぉ〜」




「お、ゼーベックとダグ」




 物を受け取ってとりあえずはパーティの奴らに合流する事にした俺達は向こうからやって来た二人とステージ外で合流。


 周りに人は多いがキュクロプス、ミノタウロス、俺、イケメン細マッチョエルフという明らかに異質な雰囲気のおかげでスムーズに来れた。


 つーか怖くて幾ら目立とうがあんまり近くに来たいと思えんだろこれ。




「とりあえず無事そうで何よりだ。びっくりしたぜお前があんな姿でぶっ倒れるなんてよ?」




「能力の限界までやっちまったからな。シャクがカバーしてくれなきゃ右腕が消し飛んでたとよ」




「け、消し飛んで……軽く言う事でねぇだよカナタ」




「そんだけやらなきゃダメだったからな。アイゼン達は強かった。今度やったらどうなるか分からねぇよ。ハルディンの魔法もタイマンだったら俺の方が倒れてたかもしれねぇしな」




「えははっ!嬉しい事を言ってくれる!なぁハルディン?」




「ああ。次回が楽しみだ」




 互いに顔を見合って笑う二人。


 最初に敗れたが、俺みたいに魔法適正の無い脳筋と違ってハルディンは複数の魔法を組み合わせた拳打や技は明らかな強みだ。


 たまたまごり押しで何とかなっただけ。俺は運が良かった。あれが雷や氷、炎などの触れる事も出来そうに無い温度まで出せるまで修練を積めば俺なんかひとたまりも無いだろう。




「ところで…ちゃんと〝やって来た〟かダグ?」




「ああ、大丈夫だよ。この眼でしーっかり変える所を見届けただよ」




「あーあ〜うるせぇうるせぇ…」




「やって来た…?変える…?何やらせて来たんだロス」




「何って……パーティ名に決まってるだろ?本戦であんなアホらしいパーティ名で呼ばれてたまるか」




「ありがとうロス。ダグナイス付き人」




 良いよ良いよと手を振るダグと対称的に不貞腐(ふてくさ)れるゼーベック。


 それは正解。誰がチームゼーベックなぞ好むものか。




「ところで…私のパーティ含めアイゼンの所の女性達は何処だ?」




「あそこの人だかりの中だろうな」




 アイゼンが指差す方向に野太い声と黄色い声の混じる人だかり。


 やだめっちゃ分かりやすい。




「よし、ポクスチャード、お前も付き合え。あの場所から引きずり出すぞ」




「あっ。ちょっと!?ダクスさん!?カ、カナタの兄貴ィ〜!」




「言ってらっさーい」




 鼻息荒くポチの襟元掴んで行くダクスさんはまさに獲物目掛けた闘牛。


 きゃいんきゃいんとでも鳴いてそうなポチには悪いが俺はあの女性男性群がる場所には行きとうないのでな。




「どったの?」




「実はなゼーベックよ。バルちゃんの出店があってそこでな……ヘビーベアーの串焼きが手に入ったからみんなで食おうって話をな……」




「ヘビーベアーの串焼きだと!?おめぇマジか!?」




「宣伝してくれるならタダって事でみんなでうめぇうめぇ言いながら食おうぜ?そこのスクリーンに映ってる試合見ながらよ」




「そらぁ鼻息荒くなる訳だなぁ……オラも楽しみだよ」




「肉!おにぐ!!」




「ふにゅやっ!」




 おーっ!と拳をあげーの眼を輝かせーの(よだれ)垂らすルギくんとシラタマがとても欲望に忠実で和みましたまる。




ルギ


「おにぐーっ!!」




シラタマ


「ふにゅやーっ!!」




シャク


「全く、もう少し落ち着いて欲しいものだねぇ」




カナタ


「その口の両端から滴りつつある液体を止めてから言おうかお前」

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