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ヘタレの努力家  作者: りばーしゃ
第3章 武術大会〝アーツカッチア〟
151/213

最高戦力

活動報告にも書きますが明日ワクチン1回目を受けて来ます。


副反応でまともに動けない事も予想出来るのでもしかしたら来週土曜日は更新出来ないかもしれません。


すみませんがその時はご了承下さい。




「おらー!勝ってきたぞ〜」




 のっしのっし、わざとらしく股を広げ、腕を広げ、まさに調子に乗ってますと言わんばかりの歩き方でゼーベックがステージから帰って来た。


 ものの見事なドヤ顔がとても腹立たしい。ぶん殴って良い?




「お疲れ。心配はしてなかった」




「お疲れだよゼーベック」




「どうだカナタこのオレのすばぶへぇッ!!──何しやがる!?」




「すまん、手が勝手に」




 己の右頬を抑えながらゼーベックが吠えるが、全く謝る気の無い返事をしておく。


 気付いたらゼーベックの右頬をばちこんと平手打ちしていたんだ。仕方ないよね、勝手に動いたんだもん。




「手が勝手になら仕方ないなカナタ」




「それは仕方ないだなぁ」




「それは仕方ないね兄ちゃん」




「仕方ないね旦那。うんうん」




 (うなず)きと共に親指を上げる三人、腕組むシャク。


 その見事にシンクロしたグッジョブにゼーベックが再び吠える。




「オメェら!!言葉と裏腹に親指立ててんじゃねぇよ!!」




「…ふにゅ?」




「シラタマ…おめぇも「どんまい?」みてぇな顔すんな一番傷付くからよ……」




 首を傾げ、小さく鳴いたシラタマにゼーベックは分かりやすく肩を落として沈んだ。シラタマつおい。


 さて、三文芝居はここまでにして……聞こうか、あのゼーベックの強さを。




「──で、どうしてゼーベックがあそこまで接近戦出来たんだ?身体系の能力も持ってたのか?」




「コイツの能力は放出系だ、僕が補償する。〝ただ身体強化魔法が得意〟でな。他の魔法は〝ヘタクソ〟な代わりにずば抜けてるんだ」




「そこをシュエンさんに見抜かれてなぁ。オラが少し接近戦の手解(てほど)きを受けた後、あの通り動けなくなるまで相手させられてたんだよぉ」




 ロスの説明にダグがそう付け足した。


 なるほど、そう言う事だったのか。通りであのシュエンさんが心なしか満足気だった訳だ。




「他の魔法は〝ヘタクソ〟なん?こう言う火の玉とかぽん、と出せないワケ?」




 右手の腕輪に着けている火の魔玉に意識を込め、掌に拳程の火の玉を作り出し、浮かべる。


 おっ、我ながら上手く出来たな、と自負しながらその火の玉を見つめた。


 魔法は想像力(イメージ)が大事と図書館にあった本に書いてあったが……想像力だけじゃない、一円玉を側面で積み立てるような精密さも必要だ。


 俺が出したこの火の玉は〝魔玉〟という媒体、ライターにあたるような物があるから簡単に出来る方だが……実際の魔法はより難しいと言えるだろう。


 無から作り出す訳だから簡単な筈は無い。


 まぁそれは俺のような魔法の無い世界から来た異世界人の話で、この世界の人は幼少から慣れていると思うのだが?




「〝ゼーベックの能力〟のせいですよ。ううーん、なんと話したものか……」




「体験してみりゃわかんだろロス。おら、カナタ。オレの右手触ってみろ」




「右手?──あ゛っづぁ!!!?」




 回答に困るロスにゼーベックが不意に右手を見せつけて来る。


 言われた通り触ってみると、自分の右手の指先に強烈な痛みが走り、思わず手を離した。


 じゅう、と指紋を焦がすような──〝熱〟が右手にはあったのだ。




「あっぢ!!あぢ!あぢ!ほぉ〜!!?おめぇ何しやがんだこんにゃろ!!」




 手を振り、冷ますように息を何度も吹き掛け、それをしたゼーベックに吠えた。


 めっちゃ熱かった。冬場の真っ赤なストーブの金属部に手を触れてしまったみたいに熱かった。




「ぶははは、良い反応しやがる。で、おめぇ今〝熱い〟のは分かったか?」




「んなもん分かるか!!」




「だろ?この能力の修行にかかりっきりだったから普通の魔法は苦手なんだ。制御出来なきゃ、家族や友人はもちろん、〝自分の命〟にも関わるからな」




「ッ…!なるほどな、こんなん暴走しちまったら確かにやべぇ」




「身体強化が上手くなったのはそのおまけ…って感じでな」




 手が焼き付くような……〝見えない高熱〟、それが制御出来ずに、増してやどの程度出ているのかが分からなかったら被害は予想は容易い。


 恐らく冷気の方もだろう。苦労は人の倍以上、そして最後に付け足した〝自分の命〟にもという事は(おの)が能力で死にかけた事も裏付けている。


 なんだよこのバカ、しっかり努力家じゃねぇか。




「大体オレの能力がありゃ火なんていらねぇからな。対象の温度あげてやりゃあ燃えるし。大体半径数メートルまでの温度ならオレ一人で猛暑も極寒も関係ねぇな」




「…ねぇねぇ、人力エアコンじゃね?」




「…言うな。分かるけど」




 自慢げに言うゼーベックにボソリとシャクが耳元でそう囁いて来る。


 その通りだけどその言葉は本人には伝えるなよ。







「ごめん、負けちゃった」




「気にするな。相手の実力の方が上だっただけだ。良い体捌きだったぞ。次は私が出よう」







「わりぃ、負けたわ。アイツ強かったよ」




「しゃあねぇしゃあねぇ。あんなに頻繁(ひんぱん)に身体強化使って息一つ切れてねぇんだ。次は大将のおれが出らぁ。それで負けりゃあそれまでよ」







「ん、兄ちゃん。相手強そうだよ」




「お。どれどれ……いやまてデケェよ」




 ルギくんの声にステージを見てみるとそこには試合相手だろう人物が二人。


 肩まで伸ばしたさらさらとした金髪に、鍛え抜かれた肉体を持つエルフの男性。


 例えるならば器械体操の選手並みの筋量だろうか。


 そのエルフ特有の甘い顔つきにその肉体もあって試合を見に来ている女性達からは黄色い声が上がっていた。


 そして俺がデケェと(こぼ)した相手こそあのキュクロプス。


 やや薄めの赤肌に、真っ赤な髪は後ろへ撫で付けられ、そのゴツゴツとした筋肉に覆われた四肢はまさに大木の様。


 図体とその一つ目にある黄色い目もあって威圧感が凄まじい。




「ハルディンと、アイゼン……相手はリーダーが出てきたか」




「まぁ、次オレらの方が勝っちまったら実質負けだからな。そらぁ出てくるだろ」




 ロスとゼーベックの言葉通りどうやら大将がお相手らしい。


 そうか、これで俺たちが勝ったら実質予選抜けか。




「どうだかカナタ。行けそうだか?」




「もちろんだぜダグ。相手が男でリーダーってんなら思う存分ぶん殴れるってもんよ」




「兄ちゃん頑張れー!」




「ふにゅにゅー!」




 ダグの言葉に軽く言葉を返すと、ルギくんの応援に続いてシラタマがぽいんぽいんと跳ねながら鳴いていた。かわいい。




「行ってこいカナタ。てめぇの力、周りに見せてやれ」




「おう、行ってくらぁ」




 ひらひらとゼーベックに右手を振りながら前を向いたままで言葉を返し、上着であるミリタリージャケットを脱いで黒いノースリーブ一枚になる。


 さて、いっちょやりますか……!!




カナタ


「さぁー、組み手以来の本番だ。ヴァサーゴ師匠、行って来ます!」

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