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ヘタレの努力家  作者: りばーしゃ
第2章 王都〜ミーション〜
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シラタマぴんち




「どうしたシラタ──シラタマぁ!!?」




「シラタマがどうし──シラタマぁ!!?」




 振り返って見てみるとそのシラタマの姿に驚いた。


 何か黒い物が顔面に──へばりついて必死に取ろうとしているそのシラタマの姿に。




「に゛ゅー!!ふに゛ゅー!!!」




 わたわたと両手を挙げて悲鳴のような叫びを上げるシラタマは小さな円を描きながら弾み回っていた。


 しかしもふもふの顔には黒い何かがヘドロのようにべたりとくっ付いたままでびくともしていない。




「おまっ!!黒いとりもちがくっ付いてるじゃねぇか!!一体何で遊んでたんだ!!?」




 シラタマと言うのにとりもちがくっ付いてるという面白い──って馬鹿野郎。笑えんわ!




「…わぷ。なんだこ──兄ちゃん!!これ!!!オレでも分かるヤバい文字!!!」




 どうしたもんかと考えているとそのどたばた騒ぎで飛んで来た紙がルギくんの顔面に張り付いていた。


 その紙を見るなり声を出して俺にそれを慌てて手渡してくる。


 こんな時になんぞや!?とは思ったがその余りにも慌てた表情をしていたのでその紙を見ると……




「何々……『危険!この玉は呪われています。高位の光属性の能力者が居ない場合触れるべからずすぐに離れたし』……シラタマお前なんつーもんを!!!!!今取ってやるッ!!!」




 見た瞬間やべぇと分かる文体。


 でかでかと〝危険〟の二文字と、髑髏(どくろ)が書かれたその紙は明らかにやべぇ事を知らせていた。


 高位の光属性の能力者ぁ?そんな(もん)居ねぇよ早く取らねば!!!


 慌てふためくシラタマを鷲掴み、その黒いとりもちみたいな物をひっぺはがすべくそいつに手をやった。


 ぐぬり、とした気持ちの悪い感触が襲ってくるがこちらに何か痛みやまとわりつくような節はない。ならば好都合!




「ぬんだりゃあああああ!!シラタマから離れろこの黒とりもちィいいいい!」




「に゛ゅうううううう!!」




 ぐにーんと伸びながらも、全くシラタマから外れない黒とりもち。


 それに堪えるようにシラタマも雄叫びを挙げるが全くと言っていい程取れそうには無い。




「早よ取れろやこのとりもちこるぅあああああああ!!!!」




「えとえとオレはどうすれば……あっあっあ」




 しぶとい黒とりもちと奮闘する俺だが、どうすればいいのか分からないルギくんはなんかわたわたしてる。


 早く取らねばと言う気持ちを他所に、黒とりもちはシラタマから一向に離れる気配は無い。


 マジで無理なのか、ヤバいもう呪われているのではと言う考えが脳裏に()ぎったその時だった。




──ええい、何故意識を乗っ取れない。




「は?」




「にょ?」




「へ?」




 どこからともなく声が聞こえた。


 苛立ちを含んだ、女性の声が。




──なんだこの柔っこい毛の塊とバカみてぇに硬い皮膚は?




 その声が聞こえる度に黒いとりもちがぐにょぐにょと(うごめ)く。ん、なんかチクチクした。


 つまりこの声の主は……このぐにょぐにょの黒とりもち。




「バカな……黒とりもちが喋っただと……」




──誰が黒とりもちだ。誰が。




「ふにょおおおお」




 どぅるり、と気持ちの悪い動きでシラタマのぼでーを解放し、俺の手の中へとその黒とりもちの塊が移っていく。


 やっだきもい。




「兄ちゃん捨て!どっかに捨て捨て!!」




「ぬぁああ!離れん!!!来んな黒とりもち!!!」




 ルギくんの言う通り右手をぶんぶんと振って飛ばそうとするがやはりシラタマにくっ付いていた時と同じく離れる事は無かった。




──へぇ?あんた…ウチの事そんなに軽く扱えるのか。




 黒とりもちがそう言い終わると、俺の目の前の次元が歪む。


 そして──小さな……どエロい格好した〝女性〟が出て来た。




「こっちに標的変えてみたけどあんたの意識も乗っ取れない……面白い奴が居たもんだ」




 ニタリ、とした笑みを浮かべ、その右側に束ねた真っ黒なサイドテールの小さな女性は俺の事を舐め回すように周りを飛び回った。


 全身ラバースーツのような肌にぴっちりとつく黒い素材、胸元は上下分かれてる競泳水着ような青い衣服をまとい、腰元も青いドレープを巻いている。


 大きさは大体十五センチ程。あれか、妖精とかがこんなサイズだっただろうか。


 フィギュアぐらいのサイズだ。


 ひとしきり俺の身体を見た後、目の前で仁王立ちするように浮かんで口を開いた。




「なるほどやっべぇ身体してんなぁ……気に入った!この〝シャク〟があんたの武器となってやろう」




「──断る!」




「拒否権は無い!」




「ぶぁかな!?」




 何という事でしょう。断れないとかやめろ。


 と、その騒ぎに気付いたであろうダグがこちらへ駆けつけていた。




「おおい、一体どしたん……おお、そう言う事かルギくん。とりあえず店長に見て貰うべカナタ。オラには呪いとか解けねぇからな」




 ルギくんのその注意書きの書かれた紙を見るなり事態を把握したダグはそう言ってくれた。


 そうか、まだなんとかなるチャンスは!







「あらあら、遂に見つかったのかい?」




「コイツに着いて行く。……おっと、解呪とかは出来ねぇぞ?仕方なくじゃなくてウチの意思で決めたからな?」




「こっちは大助かりだよ。貴女たまたま触れた冒険者を乗っ取って逃げようとしても結局その相手の魔力を使い果てて近場で倒れてるんだから。その度に店に戻す手間を考えたら……」




「うるへー」




 なんだこの娘と親のような会話は。


 そして会話を聞くにとんでもねぇ事してるじゃねえか。




「ま、せいぜいその人に迷惑かけないようにするんだよ」




「うるへー」




「あの、これはどうすれば……」




「ああ、お代は結構ですよ。たっぷりこき使ってやって下さいな。ほぅ、ほぅ、ほぅ、ほぅ」




 やり場の無い黒い玉の付いた手を出す俺に梟の店長さんがそう優しく笑った。


 え……?

 



「良かったじゃねぇかカナタ。呪物をタダで手に入れれるなんてそうそうねぇぞ?かー、エロい妖精がタダとか羨ましいぜ」




「…うーん、まぁ…カナタ。と、とりあえず武器?防具か分からないけど手に入って良かったんじゃないか?」




「……すまねぇカナタ。オラも着いて行けば良がったな」




「ああ…おう…うん、大丈夫だダグ、お前は悪くないから。大丈夫ダヨドンドコドン」




「兄ちゃん気を確かに」




「ふにゅー」




 左腕を引っ張るルギくん、ぽふぽふと俺の頭を叩くシラタマ。


 ああ、癒し。そうだタダで魔道具が手に入ったんだ!前向きに──




「よろしくなぁ兄ちゃん?ん?」




──やっべぇそのドヤ顔腹立たしい。




カナタ


「タダで魔道具を手に入れただけタダで魔道具を手に入れただけタダで魔道具を手に入れただけ……!」




ルギ


「ヤバい、兄ちゃんが拳を握りながら呪文のように同じ言葉を…!シラタマ!もっともふもふを!」




シラタマ


「にゅ〜〜!」

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