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第90話【S級ドラゴンVS元S級騎士】

 地に屈した超大型ドラゴンが、大口開けたまま動かなくなった。

 瞳は光を失い、流血に染まる。

 

「……死んだか?」


「はぁ……はぁ……さすがに」


 カティアの疑問にローエが答える。


 俺も超大型ドラゴンの脳が再生しないかと。

 そこだけが今は心配だった。

 だが、少し経った今でも脳が再生していく様子はない。

 

 やっと、本当に倒せたんだ。

 みんなの連携がなかったら、絶対に倒せなかっただろう。


 当のカティアさんたちは魔法や全力攻撃のせいで息が上がっている様だった。


 でも、誰もやられていない。

 犠牲になっていない。

 本当によかった。


 安堵して尻餅をついた俺は、柄だけになった親父の形見を見た。

 刀身は……跡形もない。


 無理させてゴメン親父。

 今まで……本当にありがとう。


 額に柄をつけながら黙祷(もくとう)する。


 そして俺は、そっと柄と鞘を地面に置いた。

 こんな状況でなければ家のどこかにしまっておくという選択肢もあったのだが。 


「みなさん無事ですか!」


「!」


 突如聞こえた声に打たれ、俺は我に返った目をそちらに向けた。

 城壁から降りてきたらしい総司令とその部下たちだ。


「総司令……」


 誰にも聞こえないほどの小さな声で俺は呟いた。


 総司令はクタクタな俺たちを見回して、一瞬だけホッとしたのか口もとを緩ませる。

 しかしすぐに気を引き締め直した顔になった。


「みなさんお見事でした。お疲れでしょうが、A級ドラゴンがもうすぐそこまで来ています。急ぎ東側の援護へ向かってください!」


 言われて確認すれば、確かにA級ドラゴンの群れは接近していた。

 血の海が迫るような恐怖さえ覚える光景だ。


 俺は「了解です」と重い身体を立たせて言った。

 ちんたら休んでる場合じゃない。

 避難民のルートを確保せねば。


「ローエさんとフランベール先生は先に東側の援護に向かってください。俺とカティアさんは代わりの武器を調達してきます」


「了解!」


 二人は迅速に東側へと向かった。

 

「俺たちも行きましょう。カティアさん」


「ああ」


「総司令。俺たちは行きます」


「ええ。ここはお任せください」


「お願いします」


 たった数人しかいない総司令の部隊。

 彼らにあの数のA級ドラゴンを抑えることができるのだろうか?


 殿(しんがり)とは言え、これでは撤退も難しく思う。


 しかし総司令の顔に迷いはない。

 今は、その顔を信じるしかなかった。



 東へ抜けるための城壁にある小さな入口。

 そこには避難民で溢れ返り、長い列を作っていた。

 国王も妻と息子たちを連れてそこに並ぶ。


「おい見ろ! ドラゴンが倒れてる! 誰かがやったんだ!」


 足を止め、避難民の誰かが叫んだ。

 すべての人間がその声に反応し、超大型ドラゴンのいた方角に視線を向ける。


 見れば確かに、超大型ドラゴンが倒れて動かなくなっていた。


「あんなデカいのを、よくも!」


 避難民の一人が歓喜の声を上げる。


「誰がやったんだ!?」

「例のゼクードって子じゃないのか?」


 その避難民たちの言葉には国王も同感だった。


 おそらくゼクードが討伐したのだろう。

 やはり大したものだ。


「よそ見をするな! 前に進め!」


 王国騎士たちの怒鳴り声に叩かれ、国王や避難民は慌てて歩みを再開した。

 


 A級ドラゴンの群れを仲間たちと迎え撃つ。

 クロイツァーは先陣を切り、双剣を煌めかせ疾走した。

 A級ドラゴンの火球をかわして前進し、すれ違い様に無数の斬撃をお見舞いする。


 斬られたA級ドラゴンは頭部と腹部から鮮血を吹き出させ瞬時に絶命した。


 間もなく、次のドラゴンどもが攻め立てる。

 二匹同時の飛びかかり攻撃だ。


 クロイツァーは双剣を逆手に持ち、身体を回転させながら飛んだ。

 飛びかかりの爪を刀身で受けて滑らせ、無力化する。


 しかしそれはただの受け流しではなく、反撃にも転じるカウンター剣舞。


 ズパンと音を響かせてA級ドラゴン二匹の首が飛んだ。


 さらに今度は三匹が迫る。

 進めば進むほど数が多くなる。

 飛んでくる火球の密度も上がってくる。


 左右に展開するA級ドラゴンだけでも百を越える。

 敵の奥行きなどを考えればさらにその数は増えるだろう。


 さすがにこの数が相手では、単騎で出過ぎはまずい。

 囲まれればそれこそおしまいだ。


 ふと味方の進行具合を見た。

 セルディスが隣で戦っている。

 すでに二匹を撃破しているようだ。


 足の遅い他の味方たちはようやく前線にたどり着いた感じだった。

 彼らは左右に広がってA級ドラゴンの群れに当たっていく。

 避難民が通るルートを押し広げていく。


 よし。

 これを維持して、避難民がすべて通れば我々の勝ちだ。


「クロイツァー様! 来ましたぞ!」


 隣でセルディスが声を弾かせた。

 何が来たのか。それはわかっている。

 その辺の雑魚とは桁違いの殺気を発しているドラゴンがいる。


 群れの奥からやってきたのは、青い竜鱗のドラゴン。

 背中に氷山を背負ったようなあの風貌は、見たことがある。


「前にここへ攻めてきたS級ドラゴンですな」


 ハンマーを構え、セルディスが言った。


 やはりそうか。

 ならば頭部を覆った氷を剥がして攻撃するのが効率的だ。

 その情報はカティアから聞いている。

 怒りが頂点に達すると全身を氷で覆うとも。


「奴をルート外へ誘導する。やつの取り巻きは任せるぞ」

「かしこまりました」


 クロイツァーとセルディスは地面を抉り蹴って、爆発的に加速した。


 クロイツァーは囮になるため、S級ドラゴンに肉薄する。


 やつは白銀のブレスを放ってきたが、それも情報をもらっているから対処は容易だった。

 凄まじい弾速で見切るのも大変だが、いつか来ると予想していれば避けるのは容易い。


 回避完了と同時に飛び、やつの顔面の氷に二刀の連撃を叩きつける。

 フォレッドほどではないが、気を練り込ませた双剣の攻撃力は氷に亀裂を走らせた。


 S級ドラゴンは驚いて後退した。

 ──後退したと見せかけて長い尻尾による薙ぎ払いをクロイツァーに放つ。


「ふん」


 鼻息ひとつでそれさえも避けた。

 避けた動作に斬りつけを混ぜ、尻尾を切断する。

 S級ドラゴンは痛みにのたうち回った。


 その一連の攻撃によりS級ドラゴンは、クロイツァーを危険な存在だと認識させた。


 耳をつんざく大咆哮を発してきた。


「ぐっ!」

「のっ!」


 鼓膜のダメージと同時に衝撃波に吹き飛ばされそうになる。

 それらをふんばり終えると、S級ドラゴンがクロイツァーを狙って爪をギラつかせた。


 そうだ。

 お前の相手は私だ。

 かかってこい!


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