第24話【緊急事態発生】
嫌な予感というのは、何かしらの予兆があるものだ。
それを今日は朝から『風』で感じていた。
国王は詩人ではないが、何か今日の風はざわついている。
そう表現したくなるほど嫌な風だった。
「国王さま! 大変です!」
予感の的中を知らせるように、ここ『謁見の間』に声が響いた。
血相を変えてやってきた彼らは『偵察騎士隊』だ。
「どうした?」
「はっ! S級ドラゴンと思わしき大型の竜が、200を超えるA級ドラゴンを率いてここ【エルガンディ王国】に向かっています!」
「なんだと!? それは本当か!」
「間違いありません!」
『偵察騎士隊』の隊長の言葉に、周囲にいた騎士たちが不安を募らせたのかざわめき始めた。
「騒ぐな! この日のために我々も準備をしていたのだぞ!」
国王はみなに思い出させるように大声で告げる。
それが功を奏し、騎士たちはざわめきを止めて国王に視線を集中させた。
「みな武器を取れ! ドラゴンどもを迎え撃つぞ!」
「おおおおおおおおおおおお!」
騎士たちの士気が上がり、各部隊で迅速な行動が始まった。
いつかゼクードの父フォレッドが言い残していた事を守り、今日という日を迎えた。
負けるはずはない。
舐めるなよドラゴンども。
一人の英雄に頼りきっていた過去の我々ではない。
※
ローエさんの暖かくて柔らかい天国のような太ももで寝かせて頂いた俺は、それはそれは完璧な目覚めを迎えた。
恐ろしく視界がクリアで、脳もスッキリしている。
眠気は一切残らず完全回復した!
そんな素晴らしいコンディションで授業を受けていると、その事態はいきなり訪れた。
S級ドラゴンがA級ドラゴンの大軍を率いて【エルガンディ王国】に向かって来ている。
伝令の騎士から報告を受けた俺は授業中だったがそれを中断。
フランベール先生と共に【第一城壁】まで急いだ。
そこにはすでにローエさんとカティアさんもいた。
他の味方にはA級の王国騎士たちがいて、彼らは慌ただしくバリスタや大砲などの準備をしている。
この現場の空気がようやく俺に現実味を与えてくれた。
本当に来るんだ。
あのS級ドラゴンが。
「ゼクード隊長! 先生! 待っていましたわ」
「お待たせしました。ローエさん。ドラゴンの群れはどのくらいに現れるか分かりますか?」
「正確には分かりませんわ。でも偵察の方から聞いた話では、もう一時間以内に目視できるところまで来るはずと言ってました」
「なるほど」
俺は胸壁から草原を眺める。
あと一時間以内に、この青空の下は戦場になる。
未知なる脅威のS級ドラゴンと、A級ドラゴンの大軍と。
「まさか群れを率いてやって来るとはな」
カティアさんが言うとローエさんが頷く。
「ええ。しかも200を超える大軍らしいですわ」
200を超える大軍か……そんな大軍と戦ったことなんてない。
さすがに不安を覚えてしまう。
「それだけの数が相手だと、わたしたち四人だけじゃ相手にできないわ。味方の騎士さんたちとしっかり足並みを揃えて戦いましょう」
フランベール先生の言葉に俺は「そうですね」と相づちを打った。
こっちにも味方はたくさんいるんだ。
そう簡単に負けはしない。
「ゼクード隊長」
聞き慣れない男性の声に呼ばれ、俺はその声の主に視線をやった。
銀の鎧を身に纏った男性がそこにいて、こちらに歩み寄ってくる。
さらに彼の背後にも何人かの隊長らしき男性たちがついてきていた。
「はい?」
「私はこの戦いの総司令官を任された者です。よろしくお願い致します」
総司令!?
凄い偉い人だ!
「あ、こちらこそよろしくお願い致します!」
俺はしっかりお辞儀した。
するも総司令官は頷いて返してくる。
「S級騎士であるみなさんに作戦を伝えに参りました」
「作戦ですか?」
「ええ。唯一あのS級ドラゴンと戦えるあなた方をA級ドラゴン相手に消耗させるわけにはいきません。なのでまず他の騎士たちにA級ドラゴンを掃討させます」
「え? でもどうやってですか?」
分断的な意味でも難しい気がする。
A級ドラゴンを倒している間にS級ドラゴンがそれをのんびり待ってくれるはずもないし。
「それなのですが、幸いなことにS級ドラゴンは群れの後方にいるそうなのです。なので前方に展開するA級ドラゴンをこの迎撃拠点にあるバリスタ・大砲そして魔法騎士たちの遠距離魔法による一斉射撃で一気に数を削ります」
「ドラゴン達がバラけていた場合はどうするのですか?」
気になったらしいフランベール先生が聞いた。
「ご安心を。すでに別の部隊がドラゴンの誘導を開始しています。ここ【第一城壁】のゲートまで誘導し、敢えてゲートを開放します」
「ゲートを開放!? そんなことをしたら【第一城壁】が意味もなく突破されてしまうのでは?」
カティアさんが驚く。
俺も同じことを思ったのだが、この総司令官が考えていることがすぐにわかった。
ゲートを潜らせてドラゴン達を密集させるんだ。
その方が一斉射撃の効果はデカくなる。
「敢えてゲートを潜らせ、ドラゴンどもを密集させます。そこに先ほど言った一斉射撃をおこない数を減らすのです」
「なるほど。でも、リスクも大きいですわね」
ローエさんの言葉には総司令官も同意らしく。
「ええ。ドラゴンを街に近づけてしまうデメリットがあります。それと、何をしてくるか分からないS級ドラゴンが後ろに控えています。分からないものは対処のしようがありません。まずは数を減らし、あなた方がS級ドラゴンと戦えるようにする。これが最善かと」
「了解です。総司令官」と俺は頷く。
「あれほどの数を相手にするには総司令官のこの作戦が一番良い方法のはずだと俺も思います。この作戦で行きましょう」
「よろしく頼みます。ドラゴンの数が減ったらあとはあなた方の出番です。孤立したS級ドラゴンを討ち取ってください。もちろん我々も出来る限りの援護は致します」
「お願いします」
そう言って話を締め括ろうとしたときだった。
「来たぞ! ドラゴンの群れだ!」
望遠鏡を覗いた一人の騎士が叫んだ。




