第21話【国王さまとゼクード】
狩猟は無事に終わり、ローエ・カティア・フランベールを連れて城の『謁見の間』へと赴く。
「『ドラゴンキラー隊』帰還しました!」
国王さまの面前で俺達は跪いた。
「うむ、ご苦労だった。では面を上げよ。奴らにしかと見せつけて来たか?」
その問いに俺は答えられなかった。
何故なら俺はゲートで待機していたからだ。
ローエさんは【リングレイス王国】を。
カティアさんは【オルブレイブ王国】を。
フランベール先生は【アークルム王国】を担当し、残った俺は文字通り出番がなかった。
受付嬢さんから説明を受けて、俺は待機だと聞かされた時はさすがに目が点になりました。
俺がゲートまで来た意味は? みたいな心情だったよ。
「御安心を陛下。た~っぷりと実力の差を見せつけてやりましたわ!」
俺の代わりに答えたのはローエさんだった。
「ならば良い。これで奴らも今まで以上に鍛練に励むだろう」
言いながら国王さまは玉座から立ち上がる。
「お前たちもいつS級ドラゴンが来ても大丈夫なように、日々鍛練を怠るなよ?」
「はっ!」っと俺達は揃って直立する。
「今日は本当にご苦労だった。ゼクード隊長以外は帰ってよいぞ」
え、俺だけ残るの?
なんで?
ま、まさか何かの説教か!?
なんも心当たりないけど。
「了解」とローエさん達がハッキリとした声で応えて踵を返す。
そしてスタスタと綺麗な足並みで『謁見の間』から出ていった。
あぁ、いっしょに帰りたかったなぁ。
「ゼクード・フォルス」
「あ、はい!」
「どうだ? 隊長生活はやっていけそうか?」
「ぁ、はい! 大丈夫です! 最初はローエさんやカティアさんには認めてもらえなかったんですけど、実力を見せたらちゃんと認めてくれて。今では凄く優しくしてもらってます」
「ほう? どう優しくしてもらっているのだ?」
あれ?
なんか国王さまが食いついてきた。
こんな話に興味あるのかな?
「え、と。実は朝はローエさんに、昼はフランベール先生に、夜はカティアさんに食事を作ってもらってるんです」
「なんと誠かそれは?」
「はい。たぶんみんな、俺が両親いないことに気づいて優しくしてくれてるんだと思ってます」
「なるほどな。優しい部下たちで良かったじゃないか」
「本当にそう思います」
本当にそうだ。いつか彼女たちに御返しも考えないと。
「それにしても、もう彼女たちを落とし始めているとはな。さすがはフォレッドの息子ということか」
まさかここで親父の名が出てくるとは。
いやそれよりローエさんたちを落とそうとしてるわけじゃないですよ?
まだ。
いや、可能なら落として自分の女性にしたいけどね?
「国王さまは親父──父フォレッドの事をよくご存知なんですか?」
「当然だ。この国の英雄だぞ?」
ですよね~。
「アイツとは親友でもあってな。……いや、悪友か?」
え?
親父と国王さまが親友!?
嘘でしょ?
「若い頃はよく城を抜け出していっしょに女の尻を追いかけていた」
「ええ!?」
こ、国王さまが女の尻を追いかけてた!?
このめっちゃ真面目そうな国王さまが!?
嘘だ信じられない!
「楽しかったなぁ、あの時は。色んな女性と知り合えたのもあるが、何よりフォレッド自身の発言がいちいち面白くてな」
「発言、ですか?」
「うむ。『みんな女が好きなくせに、なんで優しくできねーんだろうな?』とか『男のキンタマだってよ。女性がいなかったら只の邪魔な突起物じゃねーか』とか」
うわぁ国王相手に下品だぁ。
さすが親父。
尊敬せんけど。
「城では考えられん発言の数々だったが、それ故に私も考えさせられた。優秀な男がいれば、無能な男もいる。それは女性も同じだ。そして男の得意分野を持って生まれる女性も確かにいる。逆もしかり」
国王さまの言葉に、俺はたしかにその通りだなと思った。
ドラゴン狩りは身体能力に優れた男性の得意分野。
でもそれが得意でない男性もたくさんいる。
そしてそれが得意分野になったローエさんたちのような強い女性陣もたくさんいる。
つまりそういうこと。
この国王さまが王位を継いでからだったか、この【エルガンディ王国】の男尊女卑はかなり薄くなってきている。
まさか親父が与えた影響で、国王さまがこんなにも素晴らしい名君になったのかと思うと凄い。
「と、まぁそんなこんなでな。フォレッドに教えられたことは私にとっては大きなものだった。あいつのおかげで凝り固まった私の価値観も変えられたと言えよう」
「父に代わり光栄であります」
「ふふ。……ぁあ、そういえばもうひとつ。フォレッドから言われたことがある」
「え?」
「『俺の息子ゼクードは間違いなく天才だ。何せ俺とセレンの息子だからな!』だったかな」
おお、久しぶりに聞いた母の名前だ。
顔も声もほとんど覚えてないけど、きっと綺麗な人だったんだろうなぁとは思う。
物心ついた時に一度で良いから会いたかったな……
「何を根拠に天才と言っているのか聞いたら『ゼクードは4歳でもう俺の剣術に興味を持ってるんだぜ? これはもう天才だろ?』と言っていた」
ごめん親父。
それ興味もったの剣術じゃない。
あのとき親父が言ってた『強ければモテる説』に興味もっただけなんです。はい。
「そして驚く事にゼクード。お前は本当に強く成長した。しかも15歳というその若さでだ。あいつの予言は当たっていたという事だ」
天才、かぁ。
昔よくグリータ達にも言われたな。
「お前は本当に剣の天才なのかもしれんな。ゼクードよ」
「ええ、まぁ……きっとそうなんだろうと思います」
今さら否定する気もないし、する必要もない。
最初は自分こそが普通で、他がみんなどんくさいのだと思っていた。
けれどそれは間違いで、俺はただ単に身体的にセンス的に恵まれていただけ。
一度この件でクラスメイトたちとケンカになったこともある。
『お前なんか運が良かっただけじゃねーか!』
そう怒鳴られたことがある。
そうなんだろうけど、だからどうしろと言うのか?
お前らに合わせて弱くなれってのか?
そう言い返して余計に大ゲンカになったこともある。
あの時はホント、それでケンカにばっかなってた気がするな。
今では良い(?)思い出だけども。
「自覚があるならそれでいい。ひたすら精進せよ。今日の件でわかっただろうが、他国のS級騎士たちはまだあの程度だ。そしてお前の部下たちもお前には及ばん」
「? はい」
国王さまは何が言いたいんだろ?
「わからんか? S級騎士たちのトップに今お前は立っているんだ。つまり人類最強の騎士。今のところはな」
「なるほど」
人類最強の騎士とは、これまたデカい看板だなぁ。
「全S級ドラゴンの討伐は、お前に掛かっていると言っても過言ではない。期待しているぞ」
「はい!」
「あとフォレッドにも『ゼクードが強くなってたら遠慮なくコキ使ってくれよ』と許可も得ている。だから遠慮なくコキ使わせてもらうぞ?」
「ぇ、あ、はい……」
あのクソ親父。
なに勝手なことに許可出してんだ。
墓参り行ってやんねーぞ。
ま、いいけどさ。
こんな立派な身体で生んでくれた母に免じて頑張るよ。




