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第97話【母怖し】

【エルガンディ王国】が滅び、大地の支配者は完全にドラゴンとなった。


 俺たちは絶滅を免れるため鉱山へ潜り、さらに地下へと身を隠した。


【リングレイス王国】の滅亡。

【オルブレイブ王国】の滅亡。

【アークルム王国】の滅亡。


 総司令の死。

 老兵たちの死。

 セルディスの死。

 クロイツァーの死。


 人類の壁となって、みな戦死した。


 あまりにも多くの犠牲が出た。

 逃げ遅れた市民の数は計り知れない。

 現に鉱山へ逃げ延びた人間は千にも満たないのだから。


 それでも国王さまはこう言う。


「我々はまだ、敗北していない!」


 ……そうだ。

 負けてなんていない。

 俺たちが生きてる。


 反撃の時は必ず来る。

 俺たちが強くなるその時こそ、必ず。


 俺たちを守るために散っていった……多くの命のために。

 俺たちは必ず。

 反撃の狼煙をあげる!



 ──人類がドラゴンに敗北してから、二年の月日が流れた。


 長く苦しい地下での生活が二年間。

 それでも俺たちは強くなった。


 俺は(よわい)十七となり、騎士としての実力はすでにS級では足りないとSSS(トリプルエス)級という頭一つ抜けた称号をもらったほどだ。


 誰よりも強い自負はある。

 また、こうなれたのは産まれた俺の三人の子供のおかげでもあると思っている。


 父としての自覚が、俺を強くしてくれたんだと思うのだ。


 その意味では俺の愛妻ローエ・カティア・フランベールのおかげとも言えるだろう。


「……どうですか隊長?」


 ここはS級ドラゴンがうろつく草原の南方角。

 晴れた青空の下で俺は仲間たちを連れて探索に来ていた。

 青いS級ドラゴンたちから身を隠すために、大岩の物陰に隠れていた。


 そこで先ほど声を掛けてきたのは、俺の後ろにいる義妹(ぎまい)のレィナだ。

 リーネが錬金してくれたオリハルコン製の装備を、俺たちと同じく身に纏っている。 


 そんな彼女に俺は「間違いない」とだけ返した。


 大岩越しにS級ドラゴンの群れを覗いていたが、それをやめてレィナたちの方へ視線を戻した。


 S級騎士となったレィナとグリータがそこにいた。

 SS(ダブルエス)級騎士のガイスも同じく。

 俺を含めたこの四人の偵察隊として編成され、今に至る。


「やっぱりこの南方面はS級ドラゴンの密度が違う。ディザスタードラゴンの巣は、間違いなくこの南の果てのどこかにある」


 俺が言うと、向かいのグリータが口を開いた。


「やっぱりそうか。二年前のあの時、S級ドラゴンの群れはエルガンディの南方面からやってきたって話だからな」


「どうするゼクード隊長? もう少し進んでみるか?」


 ガイスに聞かれて俺は首を横に振った。

 敵の数は四体で、数的にも四対四の同数だから勝つのは容易いだろう。


「いや、いったん【ヨコアナ】に戻ろう。いま見えてるドラゴンの数だけなら、このメンバーでも殲滅可能だけど、奥にどれだけいるか分かったもんじゃない」


 戦いの音で奥から別のドラゴンがたくさんやってくるかもしれない。


「そうですね。それに今から戻れば夕方までには帰還できますし、頃合いだと思います」


 レィナの言葉に頷いて、俺たちは待機させていた馬の元へと戻る。

 その道中、親友グリータが俺の隣にやってきた。


「ゼクード。南の奥へ探索に出るときには、もう今度はオレをメンバーには入れんなよ? あんな数相手にしてたら命がいくつあっても足んねぇよ」


「弱気だなぁロリータ。お前それでもS級か? もう少し自信持──」


 ゴンッ!


「イテェ!」


「その呼び方やめろ。殴るぞ」


「殴ってから言うなって……」


「こらグリータ! ドラゴンに見つかるでしょ! 隊長も気を緩めないでください!」


「す、すいません」


 レィナに叱られた。

 でもレィナの声が一番大きかった気がする。


「──いや、残念だが気づかれたようだぞ」


 ガイスが大剣の柄を握りながらそう言った。

 たしかに、先ほどの四体の足音がこちらに近づいてくる。

 人間の声だと確信してこっちに来ている。


 やれやれ。

 ならば短期決戦だ。

 増援が来る前に片付ける。


「一人一体。一分で片付けて撤退するぞ!」


「了解!」と三人の返事を聞き、俺は先陣を切った。

 大岩の影から青いS級ドラゴンが姿を現し、その瞬間に俺はロングブレードを引き抜く。


 青いS級ドラゴンのことは国王が名付けた【ブルードラゴン】と呼称(こしょう)している。

 そのブルードラゴンに肉薄しロングブレードに『気』を送り込む。


 一点の刃に凝縮された本物の『気』は斬れ味を増加させる。

 二年間の修行で練り上げた最高密度の『気』を刀身に纏わせる。


【真・(ドラゴン)斬り】


 俺の進化した剣技。

 その一閃はブルードラゴンの身体をバターのように容易く一刀両断した。


 オリハルコン製のロングブレードはもとの斬れ味がミスリルの何倍もの鋭さがある。

 その攻撃力に『気』を重ねれば、もはや断てぬものはなかった。


 先頭の一匹を真っ二つにされて、後続のブルードラゴンが一歩引いた。


 その隙を逃さず、グリータたちが突撃する。


「【真紅の舞】!」


 義父クロイツァーの奥義をレィナは放った。

 無数の斬撃がブルードラゴンの全身を切り裂き、血を薔薇のように吹き舞わせて絶命する。


 その隣でグリータはブルードラゴンの尻尾の薙ぎ払いを受けようとしていた。


「見飽きたんだよ!」


 高速で迫り来る尻尾をバックラーで簡単にパリィし、敵の頭部へ弾き返した。

 尻尾の先端がブルードラゴンの眼に当たり怯む。


 その怯みを予測していたグリータは跳躍し、ブルードラゴンの脳天を片手剣でブッ刺した。

 派手な血飛沫(ちしぶき)をあげたブルードラゴンは脳をやられて亡骸と化す。


 ガイスに至ってはブルードラゴンの首を一刀両断。

 超重量と斬れ味を活かした迷いなき一撃は、ブルードラゴンの首を見事に落とす。


 それぞれが敵を倒すのにかかった時間は数秒ほど。

 上出来である。


 すると南方面の奥から別のドラゴンの咆哮が聞こえた。

 やはり来たか。


 グリータたちに視線をやり、みんな頷くと一声もあげずに馬の方へ疾走。

 みな乗馬し、一斉にその場から去って行った。



 地下への入口でもあり、拠点でもある【ヨコアナ】へと続く草原の扉。

 その付近に、赤いS級のドラゴンマンが六体うろついていた。


 人間の匂いを嗅ぎ付けた六体だったが、人間を見つけられないで気性が荒くなっていた。


 草でカモフラージュされた扉を見つけられず、S級ドラゴンマンはこぞってウロウロするばかり。


 この赤いS級ドラゴンマン。

 今では【リザードマン】と呼称されている。


 たとえ見つけられたとしても、その巨体ではこの扉を潜ることは不可能なのだが。


 一匹が苛立ちを露にし、怒りのままに咆哮を発した。

 すると他の五体もキレたように咆哮を始める。


 地鳴りさえ起こし、近くの木を薙ぎ倒してしまいそうなほどの咆哮だった。


「うるさいですわ!」


 ドゴン!


 怒声を張り上げてどこからともなく現れたのは、緑の鎧をまとった金髪の女騎士ローエだった。


 彼女の放った銃槌による打撃はリザードマンの巨体をオモチャの人形の如く軽く吹き飛ばした。

 頭から血を流したリザードマンは瞳の色を無くして瞬時に絶命する。


 するともう一匹がローエに向かって飛び掛かったが、眉間を氷の矢で射ぬかれ、地面に激突して倒れた。


「悪いけど、今は静かにしてくれないかしら?」


 冷たく言い放ったのは青い鎧姿のフランベール。

 リザードマンの怒りを遥かに凌駕する『怒』を全身から放っている。


「その通りだ」とフランベールに同意する声を発しながら現れたのは三人目の女騎士カティア。


 真紅の騎士カティアは、リザードマンの腹に銃槍による突き攻撃を放った。


 その突きはS級ドラゴンマンの腹を穿(うが)ち、トンネル状の風穴を開ける。


 リザードマンが倒れ、その上にカティアが踏み乗り、凄まじい怒りを含んだ眼でリザードマンたちを睨みつけた。


「子供が起きてしまうだろう。バカ者が」


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