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警備計画の改善

 次の日、誠は、朝から国軍の兵士の訓練場を訪れていた。

 昨日に来ていた貴族に、その貴族主催のパーティの警備計画の見直しを頼まれていたのだ。そのため、この警備を担当する兵士の実力と人柄の確認ために、この場所に訪れたのだ。


 誠も居るが、美人の集団である。この集団が現れた瞬間、兵士たちの訓練の手が止まったのだが、特に何もせず、集団で話をしていると、訓練が再開された。


「横田くん、詳しい話を聞いてもいいの?」


 誠に優子から確認の声がかかった。


「はい。昨日、古川さんたちと入れ替わりで出て行った貴族の方を覚えていますか? その方は子爵なのですが、新興貴族で、この国の格式と伝統のある貴族から好かれていません。ですので、自前で、警備の兵すら手配できません。パーティなどを行う場合は、国に報酬を用意して、警備を依頼するしかないのです。その警備計画の見直しの依頼が僕に来たので、ここへ訪れました」


「いろいろと気になるところはあるんだけど、これって、横田くんの仕事なの?」


「役職から言えば、違います。本来であれば、越権行為です。しかし、この越権行為をすることに意味があるのです。まだ、僕の管理権限が及ぶ範囲が、この国では定まっていません。自分で判断して、その範囲を狭めることはないと考えています」


「なるほど、相変わらず、黒いわね」


「黒くありません、事実です」


「それは、もういいわ。それで、ここで何をするの?」


「僕は、何もしません。……ジュリアさん。この資料にある兵士の実力をできるだけ詳しく評価してください」


 誠はそう言って、騎士のお姉さんであるジュリアに資料を渡した。誠では、兵士の実力を判断できないので仕方ないが、仕事の丸投げである。


「畏まりました」


 ジュリアは素直に頷いて、行動を開始した。


「いつもこうやって仕事をしてるのね」


「はい。僕にはこういった知識はありません。ですから、古川さんもお願いします。古川さんは、この国の武術体系とは違った、武術体系の知識を持っています。その目で、評価してください」


 誠はそう言って、新たな資料を優子に渡した。


「準備がいいわね。初めから、私にもさせるつもりだったのね」


「はい。これが僕の仕事です」


「ところで、横田くんは、ここで何をするの?」


「ここは、訓練場です。僕は、鍛錬をします」


 こうして、ジュリアと優子の評価が終わるまで、誠は鍛錬を続けた。もちろん、鍛錬しながら、その兵士の人柄を確認することは怠ってはいないのだが……。



 午後になって、教会から治癒の専門家が誠の部屋を訪れた。優子の予想通り、担当者はシスターだった。

 話し合いは、リビングで行われていた。参加者は、優子、シスターとその付き人、それに、魔導士のマーガレット、騎士のジュリア、その彼女らの付き人である。

話し合いの内容は重要だが、女性の集団である。傍目には、お菓子パーティにしか見えない。お菓子は腐るほどあるのだ。実際に、食べないと腐ってしまう。問題はないのだろう。


その時間、誠は、執務室で、警備計画の見直しに取り掛かっていた。


「こちらが、昨日、お求めになった過去の警備計画とその実績に関する資料です。やはり、過去の資料の確認まで行われるのですね」


 事務官のソフィアは、棚に収められた資料に指差し、感心まじりの言葉を発した。誠が、今回の警備計画の見直しのために、これらの資料を求めたのではないとわかっているのだが、何のためなのかが、見えてこないのだ。これを探るために、宰相から派遣されているのだが、今のところ、進展はない。もちろん、誠の仕事振りから、学べることは多くあるので、無駄な時間を過ごしているとは思っていないのだが。

 

「やはり、過去から学ぶことは多くあります。私は、この国のことを知りません。少しでも、この国を知るために、過去からも学べればと考えています」


 誠からは、いつも通りの当たり障りのない答えが返って来るだけである。

もしかしたら、この国の事を、この国の誰よりも知っているかもしれない誠の言葉に、ソフィアは、まったく重みを感じない。どうすれば、この男の考えが見えるのか、ソフィアは悩みながら、その日も過ぎていった。




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