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誠の生い立ち

 誠は、新しく用意された部屋で、お茶を飲みながら寛いでいた。もちろん、傍目に寛いでいるようにみえるだけだ、魔力操作の訓練は続けている。


(おお、いい部屋ではないか。どう見ても下級士官の部屋ではないな。これは、大貴族様の私室兼執務室と言ったところか)


 師匠から軽口が入る。


(私のために、用意された広さではありません。多くの監視と付き人のための広さです。できれば、気難しい方を用意してくれると助かるのですが)


(なぜだ? そんな奴と一緒にいると肩が凝るだろう)


(気難しい方となら喋らなくてもいいのです。あまり喋っていると、必ず、ボロが出ます)


(なるほどな。しかし、お前は、昨日から饒舌ではないか?)


(ああいった仕事のような、定型の会話では、まずボロは出ません。それに、感情を乗せなくても不自然さがでません。しかし、プライベートな内容の会話だと、不自然さが表に出てきます。そのため、逆に読まれる可能性が出てきます)


(なるほどな。そんなのお前はどうやって鍛えたのだ)


(小さい頃からずっとやっているのが大きいですね。教えてくれたのは、向こうの世界の霊たちですね)


(お前は、元の世界でも、霊から教育を受けていたのか。親はどうした。親もこの手の能力を持っていたのだろう)


(両親は、私が生まれて、すぐに亡くなったそうです。私の物心が付くまでは、霊として、傍に居てくれたのですが、私が譲り受けた守護霊の説明をすると満足したのか成仏してしまいました。後から気付いたことですが、かなり無理をして残っていてくれたようです)


(いい親御さんだったとは、言い難いな)


(愛しているとは言っていましたが、繋げていたので、そんな感情ではなかったのは、わかります。気にしていたのは先祖代々に伝わってきた守護霊のことでしょう。かなり重荷だったようです)


(そんなに大変なことなのか、精霊と契約しているってのは、この世界では良いことの方が多いぞ。それも契約しているのが高位精霊ともなれば、契約者は神扱いだぞ)


(昔は、私たちの世界でもそうであったようです。しかし、現代では、ほとんどすべての人に見えないもの、感じることのできないものに対して、その存在を否定する風潮が強くあります。私たちのように霊能力を持つ者に対する蔑視もあります。そう言ったものを重荷に感じていたのでしょう)


(科学と言っていたか、それで検証をできない物は認めないということだな。面白い考え方だな。お前たちは神にでもなったつもりか)


(そう考えることができないから、両親は苦しんでいたのでしょう)


(そういうことだろうな。では、お前はどうなのだ)


(私は、かなり特殊なのではないでしょうか。6歳になるまで、科学が万能であると信じられている環境に居なかったのです。私は、両親はもちろんのこと、世話をしてくれる親族もいませんでした。そのため、侍女のような方に世話をされていました。その方は、お金で雇っているわけですから、多少変わった子供でも何も言いません。ですから、6歳になるまで気にもしていませんでした。

そして、霊たちから話を聞いていましたから、学校では、霊関係のことは話さないようにしていました。それに、小さいころは、多少ボロが出ても、夢見がちの少年と思われる程度で何も問題はありませんでした。そうやって、鍛えていけたのだと思います)


(なるほどな、お前にとっては、いい環境だったのだな)


(そうだと思います。受け継いだのが、守護霊だけでなく、かなりの資産であったため、問題が起きるのが目に見えているので、孤児院のような施設に入れられるようなこともなかったようです)


(ちょうどいい、その守護霊とは何なのだ?)


(親からは、名前ぐらいしか聞いていません。というよりも幼すぎて理解できませんでした。ちなみに、名前は、朱雀、白虎、青龍、玄武です。まとめて、四神です。)


(こいつらは、お前の世界の神なのか?)


(たぶん、神の名をあやかっただけだと思います。調べてわかったことですが、別の国の神話に出てくる神獣ですので、こいつら自身は、神ではないと思います)


(そういうこともあるのだろう。そう言えば、こいつらとは、意思の疎通はできんのか? 精霊ならできるだろう)


(向こうは、繋がなくても、私の言いたいことはわかっているようですが、私の身に危険が及ばない限り、完全に干渉してきませんね。私たちの世界では、守護霊とはそういうものです)


(そうか、俺が勝手に精霊だと言ってるだけだからな。お前ももう気付いてるだろうと思うが、世界には、神が定めたルールがある。これは、時代によっても多少は変わるが、世界が違うとかなり大きな違いが出る。ステータスなんかはそうなのかもしれん。文字化と数値化をしてカードに記載できるようにしたのは俺だが、システムを作ったのは神だからな。

 まぁ、ステータスもお前の世界にもあるのかもしれんがな。だいたい魔術や霊があるのに、科学的に検証できないから、ないとか言ってる世界だからな。なんとも不思議な世界だ。

 そういった世界のルールがあるから、お前の世界では、その守護霊には、守護対象に必要以上に干渉してはならないというルールがあるのかもしれんな)


(たしかに、そう言われると納得できますね。これも要検証ということにしておきましょう)


(そうだな。この手の話も必要だが、まずは、鍛錬だな。だが、魔導士団長とか言う奴もなかなかいい目を持っている。お前の魔力操作の高さに気付きそうだな。ちょっと手を加えるぞ。体の負荷に合わせて、自然に見えるように魔力を乱せ)


(はい。……できるのですか、そんなこと?)


(できないだろうから、練習するんだ。間違っても勝手に乱すなよ。自分の意志で、人から自然に見えるように乱すんだ。最初は、勝手に乱れるのを感じるところからだ。やれ)


 こうして、新しい部屋で、鍛錬に新しい課題が加わり、いつもの鍛錬が始まった。



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