玲人と聖治※
会話文多め(いつものこと)
肉付けが足りなかったかもしれない(´・ω・`)
◇玲人視点
やっぱり僕の玲那は世界一可愛いな。今では可愛いより綺麗といった方がしっくりくるかもしれないが、可愛いものは可愛い。会えない時間がより玲那を思う時間となった。液晶画面越しでも日々成長を感じ、まだ子供らしさを残しながらも少しづつ大人の女性に近づいていく姿が眩しかった。
実際に会ってみると、会わない間にだいぶ身長差がついて腕にすっぽりおさまるその姿に愛しさが増す。はじめて玲那を見た時から守ってあげたい庇護欲を強く感じているが、残念ながら僕の妹はどちらかというと大人しく人に守られるよりも人を守っている側の人間だ。
厄介ごとには自然に巻き込まれ、問題事には全力で挑んでいく。可憐な外見に反するしなやかで剛直な鋼メンタル。その発言力、行動力で気づけば人を助けている。助けられた人は玲那に感謝し、今度は自分が玲那を守りたいと感じる。報告を聞く限りあいかわらず多方面でいろいろやらかしているようだ。
自分勝手な正義を押し付けて上から目線で守ってやるというおバカさんとは違う。玲那には助けてやったなんて考えが微塵もない。玲那という存在に周りが勝手に救われているからだ。
助けられた者が自分の立場を弁え、玲那に純粋に感謝するだけなら別にいい。
しかし、玲那に盲信し玲那の為にといいながら自分の欲を押し付けたり暴走する人がいる。
それに、助けられた者がいるということはその者が助けられるような状況となった元凶の人がいる。その元凶が逆恨みで玲那を害そうとしてくることもある。
今のところは圧倒的に玲那に救われた人や玲那を守りたいと思ってる人が多くて、お互いに連携をとり護衛に当たってるからいろいろと未然に防げている。
昔から玲那に張り付いてる聖治には耳にタコができるくらい言いつけてきたが、聖治は婚約者になった役割をしっかり理解しているのだろうか。虫よけとはいえ、玲那に好意を向ける者に威嚇ばかりしては、玲那の成長の妨げになるんだけどね。虫よけ効果もあまり見られてないし。
玲那は自分に向けられる感情に疎いように思える。いや、理解していてあえて無視しているのかな。「今は恋愛どころじゃないの、もっと楽しくて、もっと夢中になれることがいっぱいあるの!」という感情が近いのだろうか。玲那の物事にとり組むエネルギー量はもの凄い。あれが恋愛面に向けられたらどうんるんだろうか。怖いようで楽しみでもある。
玲那には自由に生きてほしい。何にも縛られることなく玲那らしくあって欲しい。
のびのびと光輝く世界で前向きに生きる姿が一番似合っている玲那を見守っていきたい。
今は離れているけど、将来的には僕が一番近くでね。
あまり役に立ってない聖治には、忠告しておかないといけないな。
◇◇◇
◇聖治視点
僕は昔から玲人さんが苦手だ。
流石に玲那の兄なだけあってハイスペックで眉目秀麗、成績優秀、運動神経抜群。良家御曹司のあり方としてこの人を見習えとまで言われる人。
世間的には妹の玲那をもの凄く溺愛しているお兄さんとなっているが、僕からすると玲那を見る目は一般的な兄が妹を見る愛情から逸脱していると思う。
この人はいつも余裕があって、付け入るすきが全くない。会話をしていても主導権は常に彼にある。彼が海外の学校に留学して玲那の近くにいないことが本当に有難い。
お茶菓子を片づけ、玲那の家の書斎で学園の資料を怜人さんに見てもらう。
できれば、これ以上玲那が表だって暴走しないように余計な事を言って欲しくないんだけど。
「成程ね、家の格差で公然と認められるイジメ行為か」
「うん。教師や学校側も見て見ぬふりだし、風紀委員会も機能してなくて学園内は荒れ放題だったの。今は風紀委員長と話し合って見回りとかしてもらうようになったけど、他にどう手をつけていけばいいか悩んでて」
「肝心の生徒会長が権力至上主義のバ会長だからね」
これまでの経緯を怜人さんに話す。資料を見ながら怜人さんの目が今回のサバイバルーイベントに止まる。そして怜人さんと玲那のやり取りに熱が入る。
「でも、今回のサバイバルイベントは結果的にいい方向に作用したんだね」
「ええ、庶民を見直したって声が多く聞かれて、目に見えた奨学生のイジメは減ったの。でも放課後の空き教室での暴行未遂の報告とか今だにあるし、根本的な解決にはなってないのよ」
「このイベント終了後のアンケートなんだけど庶民を見直したって言うものが多いけど、いつも以上に楽しかったって意見も多いよね」
「ええ、そうね」
「過去のイベントをみると学生が直接参加型って少ないね。参加しても一部の生徒だけ。全校生徒参加はあまりない。学生主体の学校運営とは名ばかりで、実際は学生本人の力ではなく家のお金を使った人任せだ。でも今回は多くの学生が参加して、本来なら盛り上がらなかっただろうけど玲那の活躍で大いに盛り上がった」
「なるほど。自分に関係ないイベントじゃ興味も湧かないってことね。今回はゲーム参加も多かったし、直接参加ではないけどモニター観戦もあった」
「たぶんイジメが減ったのは庶民を見直したということに加え、イベントを楽しめたってことが大きいと思うよ。お金持ちの人って娯楽に餓えてたりするからね。もっと彼らが夢中になれることを探っていったらどうかな? 身分関係なく一緒に楽しいことをする仲間だって思えたら皆の意識が変わると思うけど」
「さすがお兄様! そうよね。私もともと自分の手でいろんな行事計画して学生らしい生活を送る為にこの学園を選んだのだから当初の目的に向けて私らしく突き進めばいいのよね!」
「君にできないことはない、いつも言っているだろう?」
「ふふっ。お兄様にそうやって背中を押してもらえると心強いわ!」
ああ、嫌だ。
やめてくれ。
玲那を唆さないでくれ。
玲那の望みはなんだって叶えてやりたいのに、望むことをすべて叶えていたらいつか玲那は僕なんかじゃ手の届かない存在になってしまいそうだ。
これ以上僕から玲那を取り上げないでくれ。
「僕は反対だ……これ以上、玲那に危ないことしてほしくない! 怜人さんは玲那が心配じゃないんですか!?」
「せ、聖治? いきなりどうしたの」
急に立ち上がり叫んだ僕をみて玲那は驚く。それに対して怜人さんは冷静だった。
「勿論、可愛い玲那の心配はしているよ? でも、それを上回るくらい玲那を信頼しているんだ」
彼は特に表情を変えずに答える。玲那のことは自分が一番分かっているという風にみえてそれがさらに僕をイラつかせる。
「信頼なら僕だってしている。玲那の凄さはよく分かってるよ!」
「そうか、なら玲那のやりたい事を反対するのは君のエゴじゃないのか?」
「っ!?」
怜人さんに言い返すことが出来ない。確かに、これは僕のエゴだ。
「玲那、ちょっと聖治と2人で話したいから席を外してくれないか?」
「……ええ、わかった」
複雑そうな表情の玲那は静かに部屋を出ていった。
玲那の出ていった書斎は静かに張りつめた空気が漂う。
「あなたはどうしてそんなに落ち着いてられるんですか?」
「玲那は本当に凄い子だと知っているからだよ」
「そんなの僕だって知っている。玲那は無意識に人を惹きつけてやまない。だからこれ以上玲那に目立ったことはして欲しくない!」
「聖治、君は玲那を幸せにしたいとは思っていないのかい?」
「何を言ってるんだ、思っているに決まってるだろ」
「君を見ていると「自分が玲那を幸せにしたい」じゃなくて「玲那に自分を幸せにしてもらいたい」ようにみえるけどね」
そんなはずない……とは、すぐさま言い返せない。
玲人さんの言葉が胸に刺さる。
「まあ、玲那は守られるお姫様なんて性格ではないからね。幸せにしてあげたいヒロイン役より幸せにしてやるよっていうヒーロー役の方が合ってる子だ。だからといって玲那の幸せを考えてくれない男の婚約者なんて邪魔でしかないんだよ」
無言で言葉に詰まる僕に対して、怜人さんが言葉を重ねる。
「とはいえ、昔は僕だって自分基準で玲那の邪魔になりそうな人を陰ながら排除したり玲那の行動範囲を狭めたりしていたんだけどね。同じ過ちを犯している君に1つ昔話をしようか」
え、これだけ僕にエゴだなんだと言ってたのに自分も同じことしてたのか。
「これは玲那秘蔵エピソードファイル48のことなんだけど……」
「なにそのファイル。凄い気になるんだけど」
「名付けて「自分の意見が絶対? 認めて欲しいですって? 自分の意見は認めて欲しいのに他の人の意見は聞かずに撥ねつけてるあなたが? 自分を認めて欲しいなら、まずあなたが周りの人を認めなさいよ」事件簿。はじまりはじまり~」
この話を聞いて、僕はまた玲那という人に惚れ直すのだ。
モブおじさん救済事件簿は次回!
久々の玲那ちゃん無双。
うまく表現できるといいな!
マタネー!!.....((((((○゜ε゜○)ノ~~ |出口|




