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第31話 救い出してみせるが

 俺は一人、街を駆け巡っていた。絵里の言葉が頭から離れない。小川さんが監禁されているとは、考えられなかった。でも、今はその現実を受け入れ、彼女を救い出すことに全力を注ぐしかない。


 どこを探しても、小川さんの姿は見つからない。一体どこにいるんだ?このまま時間が過ぎてしまうのが怖かった。昨日まで、俺たちは楽しい時間を過ごしていたのに、今はこんな状況になってしまった。


 絵里の言葉は、冗談ではなかった。彼女は本気で、その狂気が現実のものとなっている。だからこそ、俺は諦めるわけにはいかない。小川さんを見つけ出し、彼女を絵里と風間隼人の手から救い出さなければ。


 懸命に街を走り、思い当たる場所を一つずつ探していく。けれど、どこにも小川さんの姿はない。焦りと不安が心を支配していた。


 でも、俺は諦めることができない。彼女を放っておくわけにはいかない。どこかにヒントがあるはずだ。絵里や風間との過去の出来事、彼らの言動から何か手掛かりを見つけなければ。


 時間は容赦なく過ぎていく。俺の足は疲れていたが、心は小川さんを救うという強い意志で満ち満ちていた。どんな困難が待ち受けていても、俺は彼女を救い出す。それが俺にできる唯一のことだった。


 夜が更けていく中、俺は街をさまよい続けた。どうか、小川さんが無事でいてくれますように。その祈りを胸に、俺は探し続けるのだった。


 俺は走りながら、絵里の言葉と画像を思い出す。そこに映っていた部屋…あれは俺の部屋だった。自分の部屋で風間隼人と亜美が寝ていた場所。まさか、そこで小川さんが……。


 怒りと恐怖が交差する。


 到着して、俺は自分の部屋のドアを開けた。中には縛られた小川さんがいた。彼女の姿を見て、俺の心は激しい怒りに包まれた。


「小川さん!」



 俺は急いで彼女のもとへ駆け寄り、縄を解き始めた。彼女の目には涙が溢れていた。


「大丈夫、もう安全だから」



 俺の言葉に、彼女はホッとした表情を見せた。


 その時、後ろから声が聞こえた。振り返ると、そこには風間隼人が立っていた。彼の顔にはねじれた笑みが浮かんでいた。


「よく来たな」


 風間は俺を見て、嘲るように言った。


「お前、一体何を考えてるんだ?」


 俺は彼に詰め寄った。彼の行動には理解が及ばなかった。


「そんなの見ればわかるだろう」


 風間は冷静な顔で答えた。


「俺は絵里の計画に協力しているだけだ、別にこの女はどうでもいいが、俺の性欲を満たす女になるはずだ」


 俺の心は激しい怒りで沸騰した。


「お前、それでいいと思ってるのか? こんなことして!」


 風間は俺の怒りを嘲笑うように笑った。


「お前には分からないだろうな……亜美にも裏切られた癖して」

「ふざけるな、原因はお前にもあるだろ」


 俺は彼に声を荒げた。


 風間隼人の狂気が、その言葉から滲み出ていた。彼は俺を見下ろしながら、過去の出来事を嘲るように語り始めた。


「そういえば、亜美ともここで寝たんだっけな! はは、あの時は本当に楽しかったし、気持ち良かった」


 風間はねじれた笑顔で言った。


 その言葉に、俺の心はさらに怒りで燃え上がった。


「お前、本当に最低だな」

「それで絵里とも? これが姉妹丼ってやつか」


 俺は冷静ではいられなかった。当然だろう。

 風間は冷笑しながら答えた。


「まあ! 絵里もいい女だったよ……あいつの愛は独占欲が強いけど、それもまた面白い」


 俺は風間の言葉に憤りを感じた。彼はただ自分の欲望のために他人を利用しているだけだった。


「お前は人間のクズだ! 亜美も絵里も、お前にとってはただの道具だったのか?」


 風間は一瞬、表情を曇らせたが、すぐに笑みを取り戻した。


「愛っていうのは色々な形があるんだよ、お前には理解できないかもしれないけど」


 その時、小川さんが弱々しい声で俺に話しかけた。


「名雲くん、早くここから出よう……」


 俺は小川さんの手を取り、彼女を連れて部屋から出ることにした。風間隼人の狂気を背にして、俺たちはその場を後にした。彼女を安全な場所に連れて行き、警察に通報することが最優先だった。


 風間隼人は俺たちが部屋を出ることを許さなかった。


「おいおい、そんなに簡単に行かせると思った?」


 彼は俺たちの前に立ちふさがり、挑戦的な笑みを浮かべた。


「これからが本当の見せ場なんだよ」


 風間は俺に近づき、突然の一撃で俺を床に倒した。


 俺は反撃しようとしたが、風間は体格も運動神経も俺を上回っていた。彼の拳が何度も俺の顔と体を打ち、俺は次第に力を失っていった。


「こっちを見ろよ」


 風間は笑いながら、俺を一方的に殴り続けた。彼の拳から逃れることができず、俺は血を吐きながら地面に倒れ込んだ。


 小川さんは慌てて俺のもとに駆け寄った。


「名雲くん! 大丈夫?」


 俺は小川さんの声が遠くで聞こえるように感じた。意識はもうろうとして、気を失いそうになっていた。


 その時、風間の笑い声が耳に響いた。


「ほら、こんなに弱い男に何ができるって言うんだ?」


 俺は小川さんを守らなければと思いながら、意識が朦朧としていた。風間の狂気と暴力に、俺たちはどう対抗すればいいのか。その答えを見つける前に、俺は暗闇に落ちていった。

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