98.火の勇者は、無愛想?
俺たちはフォティヤトゥヤァへと上陸した。
そのときに、火の勇者ヨウ・スナイプ・ファイアローに助けてもらった。
ヨウの手に持っていた弓が、ボロボロと崩れていく。
ポロが首をかしげながら尋ねる。
「ヨウ様。どうして弓が壊れたのですか? それに、聖剣が見当たらないのですが?」
ヨウは聖剣ファイア・ローを持っている……はず。
「ヨウの聖剣は、弓の形をしてるんだ」
「弓……相変わらず、【剣】ってついてるのに形は自由なんですね……」
サンダー・ソーンは鞭だったし、アクア・テールは槍だった。
聖剣を作ったやつは、自由な発想の持ち主らしい。好感が持てるね。
っと、それはどうでもよくって。
「ヨウ。おまえの持ってた弓……ファイア・ローじゃないだろう?」
「…………」
ヨウは何も答えない。
砂色の外套を、頭からすっぽりとかぶっているため、表情もうかがえない。
彼女がふいっ、とそっぽを向いてその場を離れようとする。
ポロはその態度を見て、眉間にしわを寄せる。
「随分と、失礼な勇者様なのですね」
「まあまあ。彼女、口下手なだけだから。わるいやつじゃないんだよ」
例によって、俺は聖剣の所有者である、勇者とは面識がある。
俺は彼女らの持つ聖剣のメンテを担当していたからだ。
「女の方なのですか?」
あ、そっか、外套で覆ってて姿が見えないのか。
「そうだよ。美人だぜ」
「……美人」
なぜかずぅん、と落ち込んでいるポロ。
ナニに落ち込んでるんだ……?
「ポロも十分美人なのに」
「! ほ、本当ですかっ?」
さっきと一転して笑顔になる。
犬尻尾がぶんぶんと振られていた。
「もちろん」
「~! やった! ありがとうございますー! うれしいですっ!」
ポロは美人って事実を言っただけなんだが、ナニを喜んでいるんだろうか。
『創造主よ、本当に無自覚な女たらしだのぅ』
闇の聖剣、夜空があきれたように言う。
え、そうかなぁ?
まあいいや、どうでも。それより聖剣!
「ヨウ、待ってってば」
俺はスタスタ進んでいく彼女の手を取る。
ヨウはびくんっ、と体をこわばらせる。
「わるいわるい。人付き合い苦手だったなおまえ」
「…………なに?」
「いや、手ぶらで危険地帯に行こうとしてて、止めないやつはいないだろう?」
ヨウはミダガハラ火山へ向かおうとしていた。
何をするつもりかは不明だが、得物がないじょうたいで行くのはまずい。
「協力しようぜ」
「……なぜ?」
「なぜって……この島いまやばいんだろ? それにおまえも、ファイア・ロー持ってないってことは、何か事情があってあいつと離れてるわけだ。違うか?」
ヨウは答えない。
だが、違うんだったら違うと、言うやつだからな。
「力になるぜ」
「……なぜ?」
「そりゃあ……ほっとけないからだよ」
相手は聖剣の使い手。
メンテするのは、八宝斎の仕事だからな。
するとヨウは黙りこくったあとに、小さくうなずいた。
協力することに、同意してくれたわけだ。
「あんがと。じゃ、さっそく話聞かせてくれよ」
こくん、とヨウがうなずく。
「……………………はぁ~♡ すき♡ かぁっこいいよぉ~♡」
「ん? 何か言ったか?」
「…………」
ふるふる、とヨウが首を振る。
あれおかしいな、なんか小さく誰かの声が聞こえたような……気のせいか。
そんな俺を見て、ポロが目を剥いていた。
「夜空さん、もしかしてあのヨウってひと……」
『うむ……大方の予想通り。そして他の勇者と同様じゃろうな』
「ああ……ライバル多し……」
何言ってんだ、ふたりとも?
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