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【完結】追放された鍛冶師はチートスキルで伝説を作りまくる 〜婚約者に店を追い出されたけど、気ままにモノ作っていられる今の方が幸せです〜  作者: 茨木野
二章

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98.火の勇者は、無愛想?



 俺たちはフォティヤトゥヤァへと上陸した。

 そのときに、火の勇者ヨウ・スナイプ・ファイアローに助けてもらった。


 ヨウの手に持っていた弓が、ボロボロと崩れていく。

 ポロが首をかしげながら尋ねる。


「ヨウ様。どうして弓が壊れたのですか? それに、聖剣が見当たらないのですが?」


 ヨウは聖剣ファイア・ローを持っている……はず。


「ヨウの聖剣は、弓の形をしてるんだ」

「弓……相変わらず、【剣】ってついてるのに形は自由なんですね……」


 サンダー・ソーンは鞭だったし、アクア・テールは槍だった。 

 聖剣を作ったやつは、自由な発想の持ち主らしい。好感が持てるね。


 っと、それはどうでもよくって。


「ヨウ。おまえの持ってた弓……ファイア・ローじゃないだろう?」

「…………」


 ヨウは何も答えない。

 砂色の外套を、頭からすっぽりとかぶっているため、表情もうかがえない。


 彼女がふいっ、とそっぽを向いてその場を離れようとする。

 ポロはその態度を見て、眉間にしわを寄せる。


「随分と、失礼な勇者様なのですね」

「まあまあ。彼女、口下手なだけだから。わるいやつじゃないんだよ」


 例によって、俺は聖剣の所有者である、勇者とは面識がある。

 俺は彼女らの持つ聖剣のメンテを担当していたからだ。


「女の方なのですか?」


 あ、そっか、外套で覆ってて姿が見えないのか。


「そうだよ。美人だぜ」

「……美人」


 なぜかずぅん、と落ち込んでいるポロ。

 ナニに落ち込んでるんだ……?


「ポロも十分美人なのに」

「! ほ、本当ですかっ?」


 さっきと一転して笑顔になる。

 犬尻尾がぶんぶんと振られていた。


「もちろん」

「~! やった! ありがとうございますー! うれしいですっ!」


 ポロは美人って事実を言っただけなんだが、ナニを喜んでいるんだろうか。


『創造主よ、本当に無自覚な女たらしだのぅ』


 闇の聖剣、夜空があきれたように言う。

 え、そうかなぁ?

 まあいいや、どうでも。それより聖剣!


「ヨウ、待ってってば」


 俺はスタスタ進んでいく彼女の手を取る。

 ヨウはびくんっ、と体をこわばらせる。


「わるいわるい。人付き合い苦手だったなおまえ」

「…………なに?」

「いや、手ぶらで危険地帯に行こうとしてて、止めないやつはいないだろう?」


 ヨウはミダガハラ火山へ向かおうとしていた。

 何をするつもりかは不明だが、得物がないじょうたいで行くのはまずい。


「協力しようぜ」

「……なぜ?」

「なぜって……この島いまやばいんだろ? それにおまえも、ファイア・ロー持ってないってことは、何か事情があってあいつと離れてるわけだ。違うか?」


 ヨウは答えない。

 だが、違うんだったら違うと、言うやつだからな。


「力になるぜ」

「……なぜ?」

「そりゃあ……ほっとけないからだよ」


 相手は聖剣の使い手。

 メンテするのは、八宝斎はっぽうさいの仕事だからな。


 するとヨウは黙りこくったあとに、小さくうなずいた。

 協力することに、同意してくれたわけだ。


「あんがと。じゃ、さっそく話聞かせてくれよ」


 こくん、とヨウがうなずく。


「……………………はぁ~♡ すき♡ かぁっこいいよぉ~♡」

「ん? 何か言ったか?」

「…………」


 ふるふる、とヨウが首を振る。

 あれおかしいな、なんか小さく誰かの声が聞こえたような……気のせいか。


 そんな俺を見て、ポロが目を剥いていた。


「夜空さん、もしかしてあのヨウってひと……」

『うむ……大方の予想通り。そして他の勇者と同様じゃろうな』

「ああ……ライバル多し……」


 何言ってんだ、ふたりとも?

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