90.作りたかったから
《ヴィルSide》
俺は鉄の船、魔法船を完成させた。
「す、すごい……! なんだこの船は……! こんなの見たことない!」
ウォズにある商業ギルド、銀鳳商会のトップ、エチゴーヤさんが、俺の作った魔法船を見て驚愕していた。
「これはなんだ……こんな大きな船が、どうして海の上に沈まずに浮いてられるんだ!?」
俺は簡単に構造の説明をする。
キムズカジーさんが得意げにうなずく。
「すごかろう。これほど大きな船となれば、人も物も今までの10……いや、20倍の量積み込むことができるぞ!」
「20倍!?」
「ああ、そして速度は今までの50倍!」
「ご……!?」
ぱくぱく、とエチゴーヤさんが口を動かしてる。
そんな驚くことだろうか?
今まで風を受けて進んでいた。
風の影響をもろに受ける。
毎日のように強風がふいていればいいが、そうでない日の方が多い。
一方で魔法船は魔法エンジンで動いている。
風を使って進むより、遥かに進みが早いのは必定じゃないか。
「しかも天候に関係なく船を出せる」
「な、な、なんだってえええええええええええええええええええええええ!?」
これもそんな驚くことか……?
だって風を動力にしてないんだから、全天候で動かせるに決まってるじゃないか。
「う゛ぃ、ヴィルさん……いや、ヴィル様!」
「え、なに?」
様なんて付けてどうしたんだろうか……?
「この船、い、いくらで譲ってくれますか!? いいねで買いますよ!」
「え、別にただでいいよ」
「なぁあああああああ!? なにぃいいいいいいいいいいい!?」
何驚いてるんだろう……?
「いや、だってこれ、俺が作りたくて作っただけだし、素材はあんたんとこからもらってんだから、金なんていらないよ」
「つ、作りたくて……作っただけ……」
「うん」
船は完成したし、試運転も済ませた。
これで喜ぶ人がいれば、もう俺の目的は達成したも同然なのである。
「ありがとう! ありがとうございます! ヴィル様! あなたは神様だっ!」
大げさだなぁ神様だなんて。
たかが魔法船作っただけ、俺は俺の好きなことを、好きなように作っただけなのに。
それに船を作ったのだって、作りたかったって衝動と、それと船を使って南の国フォティヤトゥヤァへ速く行きたいがため。
ようは俺のためにやったことなのに……。
涙を流しながら、めちゃくちゃ感謝されてしまった。
別に良いのにな。
「ほんじゃ、キムさん。またね」
「ああ、またなヴィル」
俺は叔父である、キムズカジーさんと握手をして、分かれる。
こうして、俺はウォズの街を離れて、南にある島国、フォティヤトゥヤァへと旅立つのだった。
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