89.鉄の船
《ポロSide》
ヴィルが船造りに精を出してる、一方。
ポロは冒険者として活動していた。
「せやぁ!」
ウォズ近郊の森にて、彼女は狩りを行っている。
モンスターを紙のようにバッサバッサと斬っていく。
「ふぅ……」
『おとなしく待っておれば良いのに』
「身体動かしてる方が性に合うんですよ」
手に持っている闇の聖剣、夜空に語りかける。
ヴィルと別れた後、ポロは夜空、そして光の聖剣ルクスとともに冒険者活動をしている。
『金でも貯めて何かしたいことがあるのかの?』
無為にモンスターを狩るのではなく、冒険者として働けばお金も入る。
……金を貯めて、したいことがあるわけではない。
「いえ、でもいつか何かするとき、選択肢が増えるかなって。だから貯めておこうかと」
『なるほど……堅実なのじゃな』
ポロは夜空をさやに戻して、街へと向かう。
『主はまだ船造りかの? もう三日じゃぞ』
ポロたちが港に到着してから三日。
ヴィルはずっと港の倉庫に引きこもって作業をしている。
『まだ出発しないのかの』
「さぁ……って、なんですかね、あの人だかり?」
ウォズの街へ戻ると、港の方に人だかりができていた。
ポロは気になって、近づいてみると……。
「『なっ!? なんだあれぇ……!?』」
『わー! でっけえ船ぇ!』
ポロも聖剣たちも驚愕していた。
そこにあったのは……今まで、見たことのない、まったく新しい……。
「なにあれ……?」
『形から察するに……船じゃないか?』
「え、ええ!? あんなおっきいのが? しかも……あれどうみても、鉄で出てきますよ!?」
ポロが見やるそれは、明らかに金属製のものだった。
船と言えば木。この世界での常識だ。
「鉄の船なんて……そんな重い物が、浮かぶわけないのに……」
「おー、ポロ。ちょうど良いところに」
「ヴィル様!」
ヴィルとドワーフのキムズカジーが、ポロたちに近づいてくる。
ふぁああ……と二人があくびをしていた。
「あ、あれはなんですか?」
「え、船だぞ。見てわかるだろ?」
「あんな船見たことないですっ! 鉄で出てきてるんですよね?」
「うん」
「うんって……」
そんなあっさり肯定されても困る。
『主よ。なぜ鉄が浮いてる? 重くて沈むんじゃないか?』
「ふふふ、そこはこだわったポイントなんだ」
ヴィルが得意げに語る。
「確かに鉄だと沈んじまう。だから、船の底は空洞になっててな」
『空洞……?』
「ああ。ほら、風呂入ったときにさ、タオルで風船みたいなもん、作ったことあるだろ?」
確かに遊びでやったことはある。
「あれって風船……空気の包みは水に浮いてたろ?」
「そうですね……は! まさか……」
「そう。それを応用した。鉄の船ではあるんだが、底には空気が入る場所をつくっておいた。これで鉄でも浮くってわけよ。まあ、それだけじゃなくて、魔法でバランスを調整してるんだが……ってどうした?」
ポロは……久しぶりに言う。
「やっぱり、こんなすごい物作ってしまう、ヴィル様ってすごいです!」
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