87.昔話
俺はじーさんの弟、キムズカジーさんと一緒に、魔法船を完成させた。
その日の夜。
俺はキムズカジーさんの倉庫で、船の設計図を書いていた。
「まだやってるのか?」
「ああ」
振り返るとキムズカジーさんが、一升瓶を片手に立っていた。
「こいつで一杯やらないか? 旅立つ前に」
「おお! いいのか?」
「うむ」
俺とじーさんは近くの箱に腰を下ろして、酒を飲む。
「うま! これうめえな! こんな酒飲んだことねえや!」
「そうだろう? それは極東の酒、【清酒】というやつだ」
「へえ……極東……」
名前だけは聞いたことあるな。
実際にいったことはないけど。
「極東は面白いものがおおいぞ。わしも兄者といったことがある」
「ガンコジーさんも……か」
言うまでもないんだが、じーさんにも過去があったんだよな。
俺が知ってるのは、もう王都で職人やってるときのじーさんしかしらん。
旅をしていた……か。
そんなの初めて聞いたよ。ふむ……
「なあキムズカジーさん。ガンコジーさん……先代の八宝斎ってどんなやつだったんだ」
なんだかんだで、俺はじーさんのこと完全に知らないんだよな。
「そうだな……兄者は頑固なクソジジイだったな」
「頑固なクソジジイ……」
罵倒か? と一瞬思ったんだが、キムズカジーさんは昔を懐かしむように、笑いながら語っていた。
悪口じゃないんだな。
「とにかくクオリティにこだわる人だった。自分が作りたいと思ったものを、必ず作る。どれくらい時間がかかってもいい、自分の納得のいく、最高の1品を作りたいってな」
わかる気がする。
俺もそうだからな。
「兄者はわしとともに世界を回り、ともに修行しておった。だが、ある日を境に修行を辞めて、王都に骨を埋める覚悟をしたようじゃ」
「なんかきっかけあったのかな? 結婚とか?」
「ずっと前にすでに結婚しておったわ」
なんだ、結婚をきっかけに、飛び回るの辞めたのだと思ってたけど。
違うのか。
「じゃあどうして?」
「おぬしを拾ったからじゃ」
「…………………………は?」
……拾った?
え……?
「ど、どういうこと……?」
「え……?」
ぽかん、とキムズカジーさんが口を大きく開く。
やがて、ばつの悪そうな顔をしたあと、ぺこりと頭を下げた。
「すまん……聞かなかったことに……ならぬよな」
「ああ……」
今のは、どういうことなんだ……?
するとキムズカジーさんは一口酒を飲んで言う。
「ヴィル。ぬしは……兄者が拾ってきた子供なんじゃよ」
……つまり、俺は親父の本当の息子じゃないって……こと?
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