80.旅立ち
《ヴィルSide》
俺たちは水の聖剣によって被害をうけた、獣人国を直して回った。
それから数日後。
「本当にありがとうございました」
水の勇者ペルシャと、その娘ラグドールが、王都の入り口で俺たちのことを見送りにきてくれた。
「あなたたちがきてくれなかったら、この国は滅亡しておりました。本当に感謝しております」
『ありがとね、二人ともっ』
剣精アクア・テールがペルシャの肩にのってる。
青い毛皮の小さな狐だ。
「ヴィル様、それにポロさん。おふたりは、我が国の救世主ですわ!」
王女ラグドールが笑顔で言う。
ポロさん……か。
いつの間にか仲良くなってたな、ふたりとも。
「良いってことよ。俺はただ、壊れたものをメンテしにきただけさ」
「私は……」
ポロは何か言いかけて、口を閉ざす。
「私は……まだ救世主なんて、呼ばれるほどの人じゃないわ」
「ポロ……」
また前みたいに暗くなるのかと思いきや、カノジョは前を向いて、はっきり言う。
「でもいつか、そう言ってもらえるにふさわしい、立派な人間になるわ」
ポロは意を決したように言う。
俺がちょっとみない間に、大きく成長したな。
「ポロさん……やっぱり行ってしまうんですね」
ラグドールがさみしそうにつぶやく。
「うん。ごめん、ラグドール。私、やっと目標ができたんだ。立派な、勇者になるって」
……目標。
そういえば、ポロは前に復讐とかいっていたはずだ。
でも……今は代わったらしい。
勇者になる、か。
良い目標じゃあないか。
「ペルシャ様以外の勇者の人に、あって、勇者のなんたるかを学ぶつもり」
「そう……ですの。わかりましたわ。では、これ以上は引き留めません」
「うん、ごめん。でもまた……絶対帰ってくるよ。約束する」
ポロが右手を差し出す。
暗かった表情から一転して、ラグドールがポロの手を握る。
「約束ですわよ!」
別れを済ませた後、俺たちは国を出発した。
後ろではずっと、ラグドールが俺たちを見送っている。
「勇者になるか……良い目標ができたじゃないか」
となりを歩いてるポロが、尻尾をぱたぱたさせる。
「そ、そうですかね?」
「ああ、復讐なんかより健全で良いと思うね」
ポロの頭をくしゃくしゃと撫でる。
前に進めたカノジョを、褒めてあげたかったのだ。
「じゃ、次は別の勇者がいるとこいってみるか」
「よろしいのですか? 行き先を、私がしたいことに併せてもらって」
「おうよ。俺はただあちこち放浪したいだけだからな。せっかく目標ができたんだ、そっち優先してこうぜ」
「はい!」
こうして、長かった獣人国でのいざこざを解消し、俺とポロは新たなる土地へ向かうのだった。
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