79.一歩、勇者
《ポロSide》
ペルシャに稽古を付けてもらった後……。
獣人ポロは王女ラグドールとともに、獣人国のなかを歩いていた。
「まだこの辺は、アクア・テールの影響残ってるなぁ」
水の聖剣の効果で、植物が過剰増殖した。
もとより獣人国は緑豊かな土地であったが、さらにすごいことになっている。
ジャングルを抜けていくと、そこには一つの村があった。
「王女様!」「勇者様も!」
ヴィルとペルシャが戦っている間、ポロはラグドールとともに、周辺住人の避難を行った。
そのときに訪れた村の一つだ。
ポロの登場に、村人たちが笑顔になる。
ポロはぺこりと会釈する。
「今日はどうしたのですか?」
「……その」
ポロは口ごもったあとに言う。
「村を、直しに来ました」
植物モンスターたちが暴れた+水の聖剣の被害の爪痕は、未だ国中に残っている。
ヴィルと二人手分けして、その壊れた村などを直してるのだ。
「おお、ありがとうございます! よろしくお願いします!」
村人に頼まれて、ポロは腰のナイフ……光の聖剣ルクスを手に取る。
「すぅ……はぁ……」
……前は、使おうとして使えなかった。
聖剣に聖剣を使ってもらうという、なんとも情けない失敗をした。
でも……今は違う。
「ルクス……ううん、るーちゃん」
『!』
そう……ペルシャから教わったのだ。
聖剣使いは、一人で戦うのではないと。
自分たちが使う剣には、心があるのだ。
……今にして思えば。
ヴィルも同じことを言っていた気がする。
物には心があると。
最初、ヴィルの言ってることがまったく理解できなかった。
ちょっと変わってるなこの人と、割と失礼なことを思っていた。
でも今は、ペルシャから教わったことで、理解したのだ。
聖剣だけじゃない、物には、作った人の思いが詰まっている。
しゃべれなくても、人格がなかったとしてもだ。
「私……今、この壊れた村を直したいの。るーちゃん……お願いがあるんだ」
身勝手に使うんじゃなくて、力を、貸してもらう。
ペルシャのように、ヴィルのように。
「この村の困ってる人を、助けたいの。るーちゃん、あなたには、全てを直す力がある。その力を……少しでいいから、貸してちょうだい」
ポロの思いは果たして……。
『うん! もちろんだよ、まーま!』
今まで以上に、ルクスの刃が強く輝く。
それは村を一瞬で包み込むと……あっという間に、村にあった壊れた物、全てを直した。
それだけじゃない。
「おお! 身体が軽いぞ!」
「なんだか気分がいいぜ!」
なんと、村人たちの不調すら直してしまったのである。
「す、すごいわ、るーちゃん! まるでヴィル様みたい!」
するとルクスは人の姿になって、ポロに抱きつく。
「るー、すごい! でも……まーまもすごい!」
「私……?」
「うん! るー、とてもうれしい! まーま、うれしい! だからうれしー!」
何を言ってるのか、ちょっとよくわからなかった……。
でも、ペルシャから学んだことを実践したら、今まで以上の結果を残せた。
「ポロさん。またひとつ、強くなれましたね!」
「ラグドールさん……うん!」
村人たちは「ありがとー!」「ありがとう勇者さまぁ!」と感謝の言葉を述べている。
だが……感謝したいのは自分もだ。
力の使い方を教えてくれた、ペルシャ。
そして何より、ルクスを託してくれた、ヴィル。
目を閉じて、感謝し、そして言う。
「ラグドールさん、次の村へ行こう! まだまだ、困ってる人はたくさんいるだろうから!」
「はい! いきましょうですわ!」
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