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【完結】追放された鍛冶師はチートスキルで伝説を作りまくる 〜婚約者に店を追い出されたけど、気ままにモノ作っていられる今の方が幸せです〜  作者: 茨木野
二章

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73.お疲れヒーロー



《ポロSide》


 水の勇者の暴走を、ヴィルが止めた。

 ふと……ポロは目を覚ます。


「ん……ここは……?」


 知らない天井が目の前に広がっている。

 誰かの手のぬくもりを感じた。


「あ……ラグドール……王女」


 水の勇者ペルシャの娘、ラグドールがベッド脇で突っ伏していた。


「ラグドールはずっと、おまえの手ぇ握っててくれたぞ」

「! ヴィル様っ!」

「よっ。目が覚めたか?」


 ヴィルがいつも通り、朗らかな笑みを浮かべる。

 ここがどこで、今がいつなのかわからなくて、一瞬だけ混乱したものの……。


 ヴィルの、敬愛すべき人物の笑みを見れて、心が落ち着いた。


「ここはどこでしょうか?」

「ネログーマ王都、エヴァシマのなかにある病院だよ」

「病院……」

「あ、大丈夫。怪我はしてないよ。魔力が欠乏してたくらいだったしな。それも全修復で治したし」


 ヴィルは簡単に、あの後の顛末を語ってくれた。

 壊れた王都は、ヴィルのスキルで元通り。


 怪我人も、ヴィルのスキルで全員無事。


「…………」


 なんだか、むなしさのようなものが胸に去来した。

 心の変化が顔に出ていたのか、ヴィルが尋ねてくる。


「どうしたよ?」


 そう言われて、直ぐに言葉がでなかった。

 遠回しに、尊敬するヴィルを非難することになるんじゃないかと思ったのだ。


「言いたいことがあるんだったら、言ってみ?」


 ヴィルはずっと穏やかな表情のままである。

 この人が怒ってるところをほとんど見たことがなかった。


 ものが粗末に扱われるときだけ、彼は激高する。

 彼ならば、自分の言葉を受け止めてくれる。


 そう思って、ポロは口にする。


「……私って……必要だったでしょうか?」


 根源的な質問だった。

 壊れた街も、暴走する敵も、ヴィルが居れば全て解決できた。


 怪我人だって、ヴィルが治してしまったのだ。

 なら……自分がいることに、何か意味があったのだろうか?


「わたしは……ヴィル様に比べたら力も弱いし、あなたのように特別なスキルがあるわけでもない。ただ……ヴィル様に聖剣を貸してもらってるだけの、ただの獣人です」


 唯一無二のヴィルと違って、自分の代わりはいくらでもいる。

 光、闇の聖剣は、ヴィルが仕立てた、誰でも使える剣なのだから。


 あの場に別に自分がいなくても、良かったのでは無いか……と。

 なんだったらヴィルがいるんだから、自分は不要だったのでは……。


「そんなことないよ」


 ヴィルは微笑んで、頭をなでる。


「不必要なんてことはない。おまえがいたから、戦いに集中できた。おまえがいたから、街の人たちを守れた」

「でも……でもヴィル様でも、良かったのでは……?」

「いーや、俺じゃ駄目だったよ。見てごらん?」


 ポロはベッド脇に、サイドテーブルが置いてあることに気づく。

 そしてテーブルの上には、たくさんのお見舞いの品が置いてあった。


 そのどれにも、ポロに対する感謝の言葉しか書いていない。


「街の人たちにとって、今回の一番の功労者はさ。巨神兵やっつけたり、街直したりした俺じゃ無くて……みんなを敵から守ってくれた、ポロ……おまえなんだよ」


 ポロは恐る恐る、ベッド脇に置いてあった手紙を手に取る。


『ありがとう、ゆーしゃさまっ』


 ……ぽた、ぽた……とポロの頬を涙が伝う。

 自分の頑張りが、無駄じゃ無かった。


 自分の戦いには、意味があったのだと、ヴィルの言葉でようやく実感できた。


「う……うう……うううう……」


 ぽん、とヴィルはポロの肩を叩く。


「よく頑張った。ありがとう。今回のMVPは、間違いなくおまえさ。俺はただ壊して、治しただけ。救ったのは……ポロ、おまえだ」

「あ……あり……ありがとう……ござい……ます……」


 ヴィルがうなずいて、ポロの頭をくしゃくしゃとなでる。


「今はゆっくり寝て、気力を回復させな」

「はい……!」


 ポロがうなずくと……。


「ポロさん!」


 ラグドールがちょうど目を覚ましたようだ。

 カノジョはきゅっ、とポロの体に抱きつく。


「急に倒れたから、とても心配しましたわ!」


 ……一緒に活動して、励ましてくれた、この王女のことを愛おしく感じていた。

 ポロはきゅっと抱きしめ返して、言う。

「私は大丈夫だよ……ラグドール。一緒にみんなを助けるの、手伝ってくれて……どうもありがとう」


 側に居てくれたのに、一度も言ってなかったお礼を、カノジョが口にする。

 ラグドールは目を丸くしたあと、花が咲くような笑みを浮かべて、抱きしめてきた。


 ポロはまだ、自分が特別で、唯一であるとは思えなかった。

 自分に自信が持てないで居る。


 でも……今回のことで少しだけ、自分にも、価値があるんじゃないかって……。

 ほんの少しだけ、そう思えるようになったのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >『ありがとう、ゆーしゃさまっ』 こういう純真な感謝はどんな褒美よりも嬉しいですね(^-^)
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