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【完結】追放された鍛冶師はチートスキルで伝説を作りまくる 〜婚約者に店を追い出されたけど、気ままにモノ作っていられる今の方が幸せです〜  作者: 茨木野
二章

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72.獣人、勇者として第一歩を踏みだす



《ポロSide》


 ヴィルが破壊された王都を、修復した、一方その頃。

 避難所となってる、ヴィルの建てたシェルター付近にて。


「くっ! 数が多いのじゃ!」

「です……ね!」


 ヴィルの作った闇の聖剣、夜空と、仲間の獣人ポロが戦っていた。

 彼女たちの前には、植物型のモンスターが無数にいる。


 敵を倒しても次から次へと沸いてくるモンスター達。

 しかし二人は攻撃を辞めない。


 シェルターのなかには、王都近辺の村から移動してきた獣人が居る。

 彼らを守りたいから、という崇高な理念から、ポロは戦ってはいなかった。


 ただ、ヴィルから村人の避難を任されたから、彼女はその拳を振る。

 今、彼女はたくさんの悩みを抱えている。


 でも……それは一旦脇へ置いていた。

 彼女は戦う。


 ヴィルから与えられたミッションをこなすため。

 そして……。


「ポロさん! 頑張ってくださいまし!」


 シェルターのなかから、自分を応援してくれる……王女ラグドールからの声。

 それらがポロの背中を押している。


「ぜえ……はあ……でやぁああああああああああ!」


 ポロは拳を振る。

 武器を装備してはいない。


 光の聖剣ルクスはラグドールにあずけている。

 彼女が振るうのは己の拳。


「はあ……はあ……はあ……」


 巨大な死喰い花(デス・プラント)と、人面樹トレントが次々襲いかかってくる。

 正直、もうヘロヘロだ。


「がんばってくださいましー!」「がんばれー!」「おねえちゃーん! ふぁいとー!」


 ……それでも不思議と、敵に立ち向かうことができた。

 いや、本当はしゃがみ込んで、倒れてしまいたい。


 でも……。


「なぜじゃ……?」


 隣で背中を会わせて戦ってる、夜空が尋ねてくる。

 彼女は人間の姿で、手刀を使って敵を切り刻んでいる。


「なぜ立ち向かう? なぜ座り込まない?」


 ……そんなときではないだろうに。

 どうして質問してくるのだろう。


 でも……。


「……後ろの、連中の声援が、わたしに……楽させてくれないの……です」


 倒れそうになるたび、後ろから声援が聞こえてくる。

 立たないと、立ち向かわないと、と思うのだ。


 にや……と夜空が笑う。


「その意気やよし! ポロ! ゆくぞ!」

「え!?」


 夜空の体が光ると、形を変える。

 ポロの手には黒い刀……聖剣 夜空が握られる。


『我を抜け! ポロ!』


 ……抜けだって?

 でも、ヴィルにつけられた封印の鎖があって、引き抜けないはず。


『そんなものは気にするな! 剣を抜け!』


 ……なんなんだ、本当に。

 ヴィルも、夜空も。


 ヴィルは今のポロには剣は使えないといった。

 夜空も、今のポロには使われたくないと……言った。


 なのに今度は、夜空が抜けと言ってくる。


「ほんと……勝手……なんだから!」


 人面樹トレント死喰い花(デス・プラント)の波が押し寄せてくる。

 これが最後とばかりに。


 ポロは剣を構えて、引き抜いた。

 その勢いのまま剣を振る。


「でえええええやぁあああああああああああああああああああああ!」


 闇の聖剣の特製は、文字通り闇。

 全てを飲み込む強大な力。


 以前のポロは、剣を振るっても、その一割程度の力しか引き出せなかった。

 斬撃は三日月程度の、空間の裂け目しか産まなかった。


 だが……。

 今は、違う。


「!? お、おっきい……!」


 三日月だった空間の裂け目は、半月状へと、形を変えていた。

 それは今までよりもたくさんのモンスターを、空間のなかに吸い込んでいく。


 やがて……大量に居たモンスターたちは、すべて……消え去った。


「はっ……! ハッ……! ハッ……!」


 どさり、とポロがその場に倒れ伏す。


「ポロさん!!!!」

「らぐ……どーる……」


 王女ラグドールが涙をうかべながら、ポロに近寄り、そして抱きつく。


「ありがとう……! わたくしたちを助けてくれて! 闇の勇者……ポロ様!」


 ……はは、何が勇者だ。

 自分なんて……まだまだだ……。


 でも……。

 ポロの、そしてシェルターのなかにいた獣人達の笑顔を見ていたら……。


 なんか、とても気分が良くなった。


「見て! 雨が止んだよ!」


 今まで国を覆っていた雨雲が、徐々に消えていく。

 さっきは少しだけあいていた雲の切れ間……。


 しかし今は、完全に、青空が広がっている。


「おーい! みんなー!」


 青空の上は、白い竜が居た。

 その背中にはヴィルと、そしてドレスを着た獣人。


「ヴィル様! お母様ぁ!!!!」


 ……ポロは全てを理解する。

 ヴィルが、問題を解決したのだと。


 良かった……とポロはつぶやく。


「わたし……やりきったんですね……」

『うむ、そうじゃ! 立派だったぞ、ポロよ!』


 夜空が褒めてくれた。

 ヴィルも笑っている。


 ……きっと、ヴィルも褒めてくれるよね?

 そう思ったら安心して、ポロは気を失うのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ポロもよく頑張った
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