71.一瞬で崩壊した王都を直す
俺は暴走していた水の聖剣、アクア・テールを元に戻した。
槍の形をしたアクアを手に、俺は勇者ペルシャのもとへむかう。
「おーい、ペルシャ様~」
「う、うう……」
ペルシャは俺の作った簡易シェルター(森の木を超錬成して作った)のなかにいる。
巨神兵から救助したあと、ここに寝かしつけておいたのだ。
「はっ! う゛ぃ、ヴィル!」
「ひさしぶり、ペルシャ様」
彼女とは昔なじみだ。
聖剣のメンテナンスのときに、何度も顔を合わせている。
「アクアは!?」
「問題ないよ。ほら」
俺はすっかり元通りに治った、水の聖剣アクア・テールを、ペルシャに渡す。
彼女はパァ……! と笑顔になると、アクアを抱きしめる。
「良かった……アクア……無事で……」
『あたしもごめんね、ペルシャ……』
「ううん、こっちもごめんなさいね。力不足で……」
うんうん、感動の再会だ。
良かった、アクアもペルシャも無事でさ。
「ヴィル……! そうです、王都は!? 国はどうなってますか!?」
「そっちも問題ないよ」
「で、ですが……わたしが暴れ回ったせいで、国は崩壊寸前では……」
「いいや、大丈夫さ」
俺はシェルターの外に出る。
外では、ロウリィちゃんが待っていた。
『あ、無事だったんすね。女王様』
「おうよ。ロウリィちゃん、背中に俺ら載せてくんない? 最後の仕上げするから」
俺はペルシャといっしょに、ロウリィちゃんの背中の上に載る。
ばさっ、とロウリィちゃんが翼を広げて飛ぶ。
俺たちがいるのは王都郊外。
王都の街は、たしかにペルシャが生やした木の化け物のせいで、穴ぼこだらけだ。
美しい王都の町並みが、傷付いてる姿に、ペルシャが心を痛めている。
俺はそんな女王様の頭をなでる。
「大丈夫。あんたの優秀な娘さんが、王都民はみんな避難させてたよ」
「! ラグドールが! あの子……いつの間に成長して……」
そもそも助けを呼びに来たのもラグドールだからな。
あいつはやるやつだ。
「でも……王都の街が」
「それこそ問題ないよ」
俺は神鎚ミョルニルを手に取る。
すると上空に、巨大な魔法陣が出現。
よく見ると、地上では小さな魔法陣がいくつも浮かんでいる。
壊れた建物の上に、いくつもだ。
「そんで……全修復!」
かつん、と俺は大きな魔法陣を叩く。
すると……。
一気に、壊れた建物が一瞬で元通りになったのだ。
「す、すごいです……! ハンマーの一振りで、崩壊した王都が一瞬で治ってしまいました!」
『な、なんか前よりパワーアップしてるっすね……。前は一つずつ治す物を叩かないといけなかったのに』
俺もいくつも神器を作ったことで、神器の扱い方(知識)も、前より深くなった。
神鎚ミョルニル。
「ガンコジーさんからもらったこの神器は、効果を拡張させることができるらしいんだ」
『なるほど……神器を作った経験から、神器への理解も深まったんすね。さすがっす』
ま、何はともあれ、これで一件落着っと。




