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【完結】追放された鍛冶師はチートスキルで伝説を作りまくる 〜婚約者に店を追い出されたけど、気ままにモノ作っていられる今の方が幸せです〜  作者: 茨木野
二章

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70.暴走する水の聖剣を治す



《ヴィルSide》


 俺は獣人国の王都郊外にて、呪物となった水の聖剣アクア・テールと相対してる。

 さっきまで巨神兵の手の中にあった大きな槍は、形を換えていた。


 それは1本の長い、巨大な蜻蛉だ。

 それを見て、白竜のロウリィちゃんは叫ぶ。


『とんぼっす!』

「ああ。おそらく、アクア・テール全体が付喪神となったんだろう」


 付喪神。

 それは、七福塵しちふくじんの作る、人格を持つ呪いのアイテムだ。


『ぶぶぶっ! そのとおり! 付喪神が1柱! 水龍蜻蛉ドラ・ドラフライとは俺様のことよ! ブブブ!』


 なんという……ダサいネーミングだ。

 作ったやつに愛を感じねえ。


「そいつは、そんなくそださネームの武器じゃない。アクア・テールだ」

『ぶぶぶ! ばかが。今はこの聖剣は俺様のもんよ!』

「元の人格は?」

『俺様の中で沈んでいる! さぁヴィル・クラフト! アクア・テールを壊さず、俺様だけを破壊できるかなぁ!』


 どうやら付喪神のやろう、聖剣に寄生して、同化してやがる。

 でかい水の蜻蛉の尻尾には、赤黒い結晶体が見える。あれが核だ。


 アレを壊せば良い……だが。


『ブブブン! 俺様の素早さについてこれるかなぁ……!?』


 超高速で飛翔する蜻蛉。

 ロウリィちゃんも、そして俺も目で追うことはできない。

 ざしゅっ、とロウリィちゃんの翼をかみちぎっていった。


「大丈夫か、ロウリィちゃん」

『これくらいへでもねーっすよ!』


 ロウリィちゃんは魔神だから、通常の人間よりは頑丈だ。

 しかしこれを続けられると厄介である。


 ……よし。


「そい!」


 俺はロウリィちゃんの背中の上で、ハンマーを振る。

 スカッ……!


『ぶぶぶぶーん! どこを狙ってるんだぁ!?』


 高速飛翔、だが目で追えない俺には、ハンマーが当たることはない。

 ぶん、ぶん……! とハンマーが空を切る。


『闇雲に戦ってもだめっすよ! もっと作戦を練らないと!』

「作戦……? そんなもの作っても面白くないだろ?」

『おも……え、ええ!? 何いってんすかこの状況で!?』


 俺は敵の姿、そしてこの状況から、インスピレーションを得ていた。

 蜻蛉が縦横無尽に飛び回り、じりじりとロウリィちゃんを削っていく。


 修復スキルですぐに治療できるけど……。


『ぶぶぶ! 防戦一方じゃあねえか!』


 ふと、俺たちは獣人国王都の外壁のあたりまで、追い詰められていた。


『ああ、もうだめっす……』

「いや、完成だ」

『はえ……? 完成……?』


 蜻蛉のやろうも、ロウリィちゃんも気づいていない様子だが……。

 

「作品は、もう完成している」

『なにをごちゃごちゃと! 死ねぇえええええええええい!』


 蜻蛉が助走を付けて、俺たちにめがけて突っ込んでこようとする……。

 そのときだ。


 ぐしゃあ! と蜻蛉の顔がいきなりひしゃげたのだ。


『な!? なんだこれは!? なにか……固いモノが!』


 蜻蛉のやつは、やっと気づいたようだ。

 

「どうだい、俺の作品はよ」


 蜻蛉が顔面を潰されたことにより、吹き出た血が、【それ】を汚す。


『!? あ、あれは……なんすか? 壁……?』

「いいや、違うよ。お城さ」

『城ぉおおおおお!?』


 蜻蛉のやつは俺らより目が多いからか、早めに気づいた様子。


『ここに……ある! 城だ! 透明な城が、俺様を取り囲んでいる!!!! まるで、牢獄のように!』


 そう……!

 これが俺の、新しい作品だ。


「空気のブロックを飛ばして、積んで、作ったのさ。巨大な空気の城をな」


 目をよぉくこらせば見えるのだ。

 獣人国の城に負けないくらい、立派なお城が。


 その中に蜻蛉のやつを完全にとじこめている。


「いくらおまえが早く飛び回ろうと、その中じゃ自由に動けないだろう」

『まさかおまえ! ハンマーをぶんぶんと無意味に振り回していたんじゃなく! 戦闘中に城を作ってたのか!?』

「そのとおりさ」

『なんつー余裕っす……』


 ロウリィちゃんがあきれている。

 まあ壊そうと思えば、万物破壊で一発でぶっ壊せる。


 でも、そんなことはしない。

 水の聖剣アクア・テールは、勇者ペルシャの相棒だからな。


 俺は、呪物だけを壊す策として、この空気のお城を作ったのである。


『へ、へん! だからどうした!? 閉じ込めただけじゃないか! 俺様はまだ生きてるぞ!』

「いや、もう詰みだよ」


 俺は(ボックス)のなかから、マッチを取り出す。

 しゅっ、と棒をこすって、そして空気の城へと投げ入れる。


 すると、城の内部で業火があがる。


『ぎやぁあああああああああああああああああああああ!』

「アクア・テールは水の聖剣。炎には強い……だが、呪物化させている、核の部分は違う」


 水の素材で作られてるアクア・テールとちがって、核は炎に弱い別の素材でできている。

 ならば、一気に燃やせば、核だけを燃やし尽くせる。


『だせえ! だぁせえええええええええええええ!』

「無駄だよ」


 空気の城には、燃焼に必要な酸素がごまんとある。

 炎は酸素を大量に食らって、激しく燃え上がる。

 それでもアクア・テールは燃えることがない。


 ……付喪神だけが、ドロドロに溶けて……やがて1本の水の槍となった。

 からん、と地面に倒れる。


 俺は、もったいなさを感じながらも、空気のお城を壊した。

 ああ……もったいない……でもまあ、敵を倒すという目的を達成できたのだ、城も喜んでいることだろう。


 それに、美しい城を作れて満足だ。

 さて。


「大丈夫かい、アクア・テール」

『う、うん……ごめんね、ヴィル……助けてくれてありがとう』


 アクア・テールには傷一つついていない。

 溶けてる箇所もない。よし。


「うん、無事で良かったよ」


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― 新着の感想 ―
[良い点] スカッと痛快 [一言] 荒唐無稽もここまで来るとお見事と。
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