66.敵を分析し罠を張る
俺は助っ人の魔神ロウリィちゃんとともに、巨神兵へと変化した水の勇者、ペルシャと戦ってる。
白竜姿のロウリィの背に乗りながら、敵全体の構造を見やる。
なるほど……。
『どうするっすか!? 相手は巨大な槍使いっすけど』
「まずは……近づいてみてくれ」
『了解っす!』
ロウリィちゃんが空を高速で飛翔し、接近する。
巨神兵が槍を流麗に動かし、接近するロウリィちゃんに攻撃。
がきぃん!
槍がロウリィを貫こうとしたので、俺はハンマーで槍を弾き飛ばした。
『っぶねえ……! ヴィルさんが弾いてくれなかったら、やばかったすわ……。距離取るっす!』
そういってロウリィちゃんが引く。
すると巨神兵は槍を構えて、先端から水ビームを照射してきた。
空気ブロックでビームの軌道を無理矢理変える。
『どうすんすか!? 接近したら槍による攻撃、離れたらビーム。これじゃ近づけないし、遠くから攻撃するのも無理っすよ!』
「ああ、まあでも、今ので大体の構造がわかった」
『構造?』
ロウリィちゃんがビームを避けまくる。
その上で俺は説明する。
「巨神兵には弱点が二つある。一つ目は巨神兵心臓の処にある、勇者ペルシャの本体」
もうひとつは……。
「巨大化した水の聖剣、アクア・テールの柄んとこだ。あそこに呪いのアイテム……呪具が填まってる」
『ようするに、巨神兵の心臓か、聖剣の柄を破壊すれば、活動停止するってわけっすね』
ビームが飛んできたので、空気のブロックを置いて避ける。
『やばいっすよ。槍の柄なんてものすごい早さで動いてて狙えないし、心臓部は動かないけど、近寄れば槍の反撃受けますし』
持久戦も難しそうだしな。
巨神兵に攻撃しても、直ぐに再生してしまう。
魔力切れを狙いたいとこだが……。
アクア・テールの厄介なとこだが、水分が周りにあれば、それを魔力に変えてしまう。
水場だとほぼ敵無しだ。
『もうこれ無敵じゃないっすか! アクア・テールのせいで雨はずっと降り続けてるっすし』
雨……そう、雨だ。
巨神兵は雨の結界を張っている。
国を覆うほどの結界だ。
ということは、各地で……。
「よし、ロウリィちゃん作戦が決まった」
『やっとっすか! もう体力切れてきてて、避けるのも難しいっすよ!?』
ぽん、と俺はロウリィの肩を叩く。
「このまま避け続けてて」
『はぁ!?』
俺はロウリィちゃんから降りる。
「通信で合図したら、俺の指示するところに、巨神兵を連れてきてくれー!」
『ちょっ!? ヴィルさん!? どうすんすか!? ヴィルさーん!』
あんなデカブツ、真正面から挑んでも勝てない。
ならばトラップを張って隙を突くしかないだろう。
俺はロウリィちゃんから降りて、着地する。
■から【それ】を取り出して、ハンマーで叩く。
地面に埋めると、その場から立ち去る。 頑張ってくれ、ロウリィちゃん。
俺の作戦は王都ではできないんだ。
ナンデかって……?
この、獣人国の建物達を、これ以上壊せないからだ。
ここは獣人達が長い時間かけて作った、町なのだ。
思いの詰まった建物を、壊すわけにはいかない。
俺は一度王都を離れて、外壁を出る。
しばらく走ると、平原へと到着する。
俺は地面に向かってハンマーを叩く。
……よし!
「ロウリィちゃん! 俺が指示する場所に巨神兵を連れてきて!」
『わ、わかったっす!』
ロウリィちゃんとは魔道具を通して、通話ができる。
さっき俺が王都の中に仕掛けたトラップのもとへ、巨神兵を誘導……。
敵がそれを踏んづけた、その瞬間……。
俺の目の前に、巨神兵がテレポートしてきたのだ。
『OOOOOOOOOOHOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!』
『転移結晶っすか!?』
そのとおり。
王都内に転移結晶を置いて、踏んづけると転移が発動するトラップを作っておいた。
で、巨神兵はトラップを踏んで……。
俺が仕掛けた、第二の罠の上に、墜ちてきたのだ。
巨神兵は地面を踏んづけようとするも……。
ズボッ……!
ずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずずず!
「どうだい、底なし沼トラップは」
平原の地面を、超錬成を使って、底なし沼に変えたのだ。
巨神兵はそのまま沈んでいく。
あがけばあがくほど沈んでいく仕組みだ。
『これ、町中でもできたんじゃないっすか?』
「え、そんなことしたら、王都の建物までしずんじまうだろ?」
『どこまでも物を大切にするんすね……』
当たり前だ。
俺は物を粗末にするやつが大嫌いだからな。
アクア・テールを呪物に変えたやつは、絶対に許せない。
物を幸せにするんじゃ無くて、不幸にするやつは……まじで、この手でぶん殴ってやる。




