61.七福塵、獣人女王を化け物に変える
ヴィルが王都へ向かう、一方……。
王都エヴァシマにて。
かつては、美しい水の都として有名だった場所。
しかし今は、完全に密林化してしまっている。
異常増殖した植物に建物は壊され、異形の植物モンスター達がうろついてる。
そんな中、ひときわ大きな木造建築物があった。
獣人の王が住む城。
今は巨大樹が城を貫いてる。
城の中、王の玉座には……巨大な樹が佇立していた。
その樹に、下半身を埋められ、動けないで居る女がいた。
「う、うう……」
「やぁ、目が覚めたかな、女王さん?」
「! おまえは……!!!!」
女王ペルシャの前に立っているのは、白い布で体を覆った美青年……。
「七福塵さ。名乗ってなかったね」
七福塵。
呪いのアイテム……呪物を配る、最低最悪の魔道具師だ。
七福塵をにらみつけるのは、この国の女王、ペルシャ=フォン=ネログーマ。
白く美しい髪を持った、猫の獣人。
ラグドールよりも胸が大きく、背が高い。
そんな彼女の手には、水の聖剣アクア・テールが握られてる。
聖剣とはいうが、その見た目は一本の長い槍だ。
ペルシャの右手はアクア・テールを握っている。
いな、握らされている。
「アクアをなおしなさい!」
「それは悪いけどできない相談だ。実験の最中だからねえ……」
アクア・テールの刃には、赤い目玉のような呪物が装着させられている。
そこから黒い木の根が伸びており、槍の本体、そして女王の体を無理矢理くっつけさせている。
「現在国を使った大規模な実験の最中なんだよねー。アクア・テールの癒やしの力を暴走させた結果、果たしてどうなるか」
アクア・テールの力のせいで、国内の植物が異常増殖させられている……と。
七福塵から状況を伝えられる。
「…………」
「おや、絶望しないんだね」
「ええ、きっと……娘がヴィルを連れて、ここに着てくださる。あの方なら、きっと治してくださるわ」
ペルシャとヴィルは既知の間柄だ。
六人いる(ポロを含めれば七人だが)勇者達の聖剣を、ヴィルが一人でメンテしていたのだ。
大体の女勇者達は、ヴィルに信頼と、そして好意を寄せている。
誰にも修復不可能な、相棒を、治してくれる唯一の存在……。
「ふふん、八宝斎か。まあ来るね。てゆーか、実際にもう向かってるしね」
「!」
ペルシャの目に希望の光が灯る。
ヴィルが来れば全てを治してくれる……だが。
「なぜ……あなたは嬉しそうなのです? 計画の邪魔をされるというのに」
七福塵の表情は明るい。
まるで、ヴィルが来るのを心待ちにしてるかのようだ。
「ま、そっちがメインなとこあるからね」
「どういう……?」
「国を使った実験は、あくまで八宝斎のためにあるってことさ」
七福塵は近づいてくる。
ペルシャがにげようとするも、体が植物と合体させられているため、動けない。
「さ、もうちょっと暴れてもらおうかな」
七福塵がアクア・テールの刃を手でなでる。
するとドクン……! と呪物が脈打ち……。
ずおおおおお……! とそこから植物が伸びてきた。
「ひぃ……! や、やめて……! いやああああああああああ!」
アクア・テールから伸びた木の枝が、まるでモンスターの触手のように、ペルシャの体を包み込む。
その豊満な体を、丁寧にラッピングしていく。
「勇者と呪いの聖剣の融合……さて、八宝斎はどうやって解決するのかな……くくく!」
異形の化け物へと変身していく、美しい獣人王をみながら、七福塵は実に楽しそうにつぶやくのだった。
【★読者の皆様へ お願いがあります】
ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!
現時点でも構いませんので、
ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!
お好きな★を入れてください!
よろしくお願いします!




