60.結界の作り方を教える
俺たちはネログーマ王都、エヴァシマを目指している。
馬車に乗っていると、ふと、獣人王女のラグドールが、俺に問うてきた。
「ところでヴィル様。先ほどの新型結界発生装置ですが……どうやって作ったのですか?」
村を出る際、俺は自分で作った、結界装置をおいてった。
それは一般的に出回っている物ではない。
「作り方は単純だよ。必要なのは魔石くらい」
「魔石……たしか、魔物の体内から採取できる、特殊な鉱物でしたね」
「そうそう」
俺は■(黄金の手に備わっている収納箱)から、魔石を取り出す。
真珠のような、小さな魔石だ。
「魔物の体内にある、魔力を含有した特別な鉱物だ。魔道具を動かす燃料になる……と、一般的な使い方はそうなってる」
「違う使い方があるのですか?」
ポロが俺に問うてきた。
「ああ。これ、よく見て見?」
俺はポロに魔石を渡す。
「表面にさ、模様が描かれてない?」
「…………?」
ポロが首をかしげる。
人間よりは、目が良い獣人でも見えないか。
俺は■から特殊なルーペを取り出して、ポロに渡す。
ポロがそれを装着して、もう一度、魔石を見ると……。
「! 表面に、細かな文様が描かれております!」
「魔石の表面には術式が刻まれてるんだよ」
術式。
魔法的なものを起こす、設計図のようなもんだ。
俺がよく見る、魔法陣がそれだ。
「魔石って、全部の表面に術式が刻まれている。こいつに魔物が魔力を流すことで、魔物は固有の能力を使えるんだ」
普通、魔石は単なる、魔力を貯めた石という使い方しかされない。
けど魔石の本質はそこじゃない。
「魔石には術式が刻み込める。ならここに、聖なる結界の術式を刻めばどうよ?」
「結界が発動する……」
「そういうこと。まあ色々手を加える必要あるんだけどね」
魔石の表面には、魔物本来の術式が刻まれている。
本来の術式を一度破壊する必要がある。
そうしないと新しい術式が刻めないからな。
「魔石を傷つけず、術式のみを破壊。その後、スキル天目一箇神で、聖なる結界の術式を刻む……とまあ、割とテクニックのいる作業で、現状俺にしか作れないわけよ」
魔石ってすんごい割れやすいんだよね。
この表面の術式を壊すには俺の万物破壊がいる。
そして壊れやすい魔石を、状態を守ったまま加工する方法は、いまんとこ天目一箇神しかない。
「す、すごいですわ……ヴィル様……。常人には決してマネできない、まさに神業。それを簡単にやってのけるなんて、ヴィル様は凄いです!」
「どうもどうも。ま、もうちょっと簡便なやり方を模索中だけどな」
「まだ手を加えるのですか!?」
ん? 何言ってるんだろう……。
「だって今だとこれ、俺にしか作れないだろ? 将来的にはたくさんの人に作れるようになったほうがいい」
「ど、どうして……? 権利を独占すれば、大金持ちになれるですのよ……?」
ああ、そう考えるわけか。
まあ王女様だからな。
国を回していくためには、お金ってやつがどうしても必要だもんな。
「俺は別に、俺にしか作れないアイテムを作って、儲けたいとは一切思ってないからさ」
ぽかん……とするラグドール王女。
「それより、たくさんの人が笑顔になれる。そんな道具を作りたい。俺が満足いけばなおよし」
みんなの生活が、便利なる。
そしてたくさんの人が、その恩恵を受けて、幸せになる。そんな道具を作りたい。
だって使う人が幸せになれば、使われる道具もまた、幸せだろう?
この世に生まれてきてありがとうって、思われる、そんな道具って、素敵だと思わないか?
というか、俺はそんな道具が作れれば、それでいいんだ。
「さすがヴィル様。立派なお考えですわ! ね、ポロさん!」
「そのとおりです! ヴィル様かっこいいです!」
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