58.獣人剣士、感謝されるもとまどう
ヴィルから与えられた聖剣で、獣人少女ポロは、病気の村人たちを直した。
しかし直後、魔力切れを起こし、気を失った……。
それからしばらくして、ポロは目を覚ます。
「ここは……」
「よっす、ポロ」
「ヴィル様……!」
ポロがガバッと身体を起こして、頭を下げる。
「申し訳ありません!」
「へ? 何謝ってんだよ」
「ヴィル様が作ってくれた剣を使ったのに、あのようなふがいない結果になってしまったことが、申し訳なくて……」
ポロは光の聖剣ルクスを使った。
しかし途中で、ポロは気絶してしまったのだ。
以前、セッチンによって破壊された王都を、ヴィルは同じモノを使って、一瞬で治し、さらにその後戦闘まで行ったというのに……。
一回使っただけで倒れてまうという、なんとも駄目な結果に終わってしまった。
これでヴィルの武器を、ひいてはそれを作成したヴィルの格を落とす結果となる……。
だがヴィルは、ニコッと笑ってポロの頭をなでた。
「どこがふがいないんだよ。大成功じゃあないか」
「え……?」
ヴィルが立ち上がって、ちょいちょいと手招きする。
どうやらここは、獣人たちの村にある、家のなかのようだ。
ヴィルと一緒に外に出ると……。
「あ! 勇者のお姉ちゃんだ!」
わっ! と獣人の子供たちが近づいてくる。
みんな笑顔で、しかもフレンドリーだ。
獣人はよそ者に対して、かなり警戒心を強く持つ。
同族であっても同じだ。
しかし村の子供たち、そして大人たちも、ポロに笑顔を向け、そして近寄ってくる。
ポロはその信じられない光景に思わず戸惑う。
「勇者様、ありがとうございます!」「おかげでおなかが痛いのがなおりました!」
「え……?」
周りに居る人たちが皆笑顔だ。
しかも治ったという……。
「そんな……途中で倒れたのに……」
「でも、ちゃーんと全員の治療はできてたみたいだぜ」
うんうん、と村人たちがうなずき、そして感謝の言葉を口にしていく。
全員が感謝していた。
……うれしさよりも、困惑してしまう。
同じ聖剣である夜空を使ったときは、ヴィルは褒めてくれなかった。
でも今は、よくやったと頭をなでてくれた。
この違いはなんなんだろう……。
「…………」
魔力が途中でつきて、気絶した。
明らかにルクスを使い切れていない。
絶対に、怒られるか、失望されるかと思っていたのに……。
『ポロよ。素晴らしかったのじゃ。わらわも使われる立場として嬉しく思うぞ。無論、ルクスもそう思っておるじゃろうな』
……闇の聖剣、夜空が言う。
それでもポロは、やはり納得ができなかった。
……どうしてみんな、褒めてくれるんだろうかと。
こんな、全然、聖剣を使いこなせない自分を……どうして、勇者って呼ぶんだろう。




