52.チェンソーのゴーレムで木々を薙ぎ払う
転移結晶を使って、俺たちは獣人国へと転移してきた。
そこには、ものすごい密林が広がっている。
「ヴィル様。ここが、獣人国ネログーマなのですか?」
「ん? おお。そう……だと思うけど」
前きたときより、明らかに緑が増えている気がした。
ここまでじゃなかったような……。
「そもそも獣人国ってどんなとこなのでしょう?」
すると王女ラグドールが、ポロに説明する。
「ヴィルさま達がいらした、人間国に隣接する国の一つですわ。ゲータ・ニィガから見たら東ですね」
■のなかから周辺地図を取り出す。
俺が拠点としたネログーマは、それぞれ獣人国、帝国と隣接している。
「獣人国は緑と水に恵まれた、素晴らしい国ですわ。それゆえ争いごとはほとんどおこらず、獣人たちは穏やかに暮らしている……そんな国、でしたわ」
過去形……か。
まあしょうがない。このジャングルっぷりを見ちゃな。
「前に来たときは、こんな植物が異常発生していなかった。ラグドール、たしか水の聖剣が異常をきたしたんだったな?」
話をまとめるとこんな感じだ。
半月ほど前、獣人国の王都に、七福塵と名乗る魔道具師が訪れた。
聖剣のメンテを請け負うといってきたらしい。
「七福塵……」
「知ってるのですの?」
「ああ……呪いの道具を配ってる、最低最悪のやつだ」
どうやら七福塵の魔の手が、こんな平和な国まで及んでいたらしい。
ちくしょう、あの野郎!
人を不幸にする道具を作るなんて、どうかしてる。
物は人の生活を楽にして、人を幸せにするものだろうが。
「悪い、続けてくれ」
「七福塵はお母様のもつ、水の聖剣アクア・テールに手を加えました。すると聖剣が暴走。周囲にあるものを、異常成長させてしまったのです」
「なるほど……このジャングルは、水の聖剣の力ね」
ポロが少し考えていう。
「あの……水をただ操作するだけの聖剣に、こんな植物を大きくする力があるんですか?」
アクア・テールは水を操る聖剣だ。
使い方は大気中の水分を操り、水を発生させるとか。
「アクア・テールは生物の水分にも干渉できるんだ」
「生物の水分……血とかですか?」
「そう。体の血の流れをよくして、代謝促進からの傷の治療みたいなことができるんだよ」
その技術を応用(というか暴走)させれば、なるほど、確かに可能かも知れない。
植物の成長を促進しまくって、こういう風にするのは。
「さすが天才職人、理解が早くて助かりますわ」
まあ人に説明しても、これは信じてもらえないだろうからな。
アクア・テールのメンテをしたことのある俺だからこそ、あっさり状況を飲み込めたと言える。
「国中こんな感じか?」
「はい……。今は被害が国内でとどまってるからいいものの、放置すれば……」
国外へと、この植物たちは根を伸ばしていくだろう。
そうなると、生態系が崩れてしまうのは必定。
「植物たちの異常増殖のせいで、作物が育たず、国内には突然変異した食虫植物たちによって、大変な被害を受けています。木々が建物を潰し、大地に穴を開け……国は壊滅状態です」
たった半月でこの惨状だ。
時間との勝負だろうって予想は、当たっていたようだな。
「原因はハッキリしてるな。アクア・テール」
「はい。もう壊すか治すかの二択で……。しかし、アクア・テールは国宝。壊すわけにはいかないですし、だいいち暴走した聖剣に獣人では太刀打ちできず……」
聖剣だけが暴走してる訳ではなさそうだ。
おそらく使い手である、水の勇者ペルシャも……。
「お願いです、ヴィル様! 国を、国民を……そして、母を……どうか……」
「おうよ。任せときな」
ここへ転移してきた時点で、俺の腹は決まっているのだ。
人を幸せにする物を、悪用するクズがこの世には必ずいる。
七福塵が最たる例だ。
あの野郎のせいで人が困ってるっていうんだったら、助けるに決まっている。
人も、物も、俺が救ってみせる。
「これからの方針としては、獣人国の王都【エヴァシマ】へ行き、アクア・テールを修復する感じだな。ここって……」
「【ミナカミ】ですわ」
エヴァシマの北西にある街だったな。
って、あれ?
「おかしいな。エヴァシマにいくつもりで転移結晶を使ってみたんだが……」
ミナカミへ飛ばされてしまった。
座標が狂わされてるのかな。
「ってことは、転移結晶は使わんほうがいいな」
どこへ飛ばされるのかわかったもんじゃないし。
徒歩でエヴァシマを目指す。
「よし、方針が固まった。じゃ、出発だ」
「しかしヴィル様。この密林を徒歩でとなると、そうとう、難儀するのではないでしょうか?」
あっちこっちぶっとい木々が生い茂るどころか、蔦や、食虫植物らしきものが行く手を邪魔している。
「ポロ。夜空の力で、この辺の邪魔な木々を飲み込むことってできるか?」
闇の聖剣、夜空には、全てを飲み込む闇を、自在に操る力がある。
しかし……。
「…………」
『すまぬ、創造主よ。ポロはまだ、力を完璧にコントロールできぬのじゃ』
あれま。
おかしいな。夜空は誰でも使えるってコンセプトで作った聖剣なんだが……。
「OK。わかった。じゃあ俺の作る魔道具で、サクサクっと伐採してくよ。■、オープン」
■から素材を取り出し、コツンとハンマーで叩く。
「超錬成!」
この密林をなぎ払うイメージを、形にした魔道具……。
「名付けて、【丸鋸マン】!」
「ま、まるのこ……まん?」
俺の目の前には、でかい魔導人形が置いてある。
両手の先には丸鋸が、そして頭にも丸鋸が着いてる。
もちろん両足にも丸鋸だ。
「魔導人形の四肢に魔法で動く丸鋸をつけてみた!」
丸鋸マンは、見た目は3メートルほどの巨大魔導人形。
その両手についてる、丸鋸が魔法で回転。
すると腕をすぅ……となでるだけで、ジャングルに生えている木々や蔦が、あっという間にスパスパ切れる。
「いけ! 丸鋸マン! まっすぐエヴァシマを目指すんだ!」
魔導人形はうなずくと、両手足についた鋸で、めちゃくちゃに植物をズタズタにしていく。
あとは、ハンマーで叩いて整えれば……安心で安全な道が完成するってわけ。
「あ、あんな規格外な魔導人形を作ってしまうなんて……さすがヴィル様!」
「え、規格外?」
「普通なら、人間サイズくらいで、命令も単純なものしか聞けないはずですわ。しかし、あのゴーレムは、植物だけをきってる! なんて繊細な動き! ありえないゴーレムですわ!」
驚くラグドール。
まあ俺は普通がどうとかありえないとか、考えてない。
ただ丸鋸たくさんついたゴーレムいたら面白そうだし、便利そうだなぁって思って作っただけだ。
うむ、いいものができた。
「んじゃ、ま、レッツラごー」
【★読者の皆様へ お願いがあります】
ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!
現時点でも構いませんので、
ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!
お好きな★を入れてください!
よろしくお願いします!




