51.超レアアイテム作って獣人の国へ
俺、ヴィル・クラフトは旅に出てすぐ、盗賊に襲われている馬車を発見。
助けたところ、中には獣人のお嬢さんがいた。
「って、あんたどっかでみたような……」
俺に嘆願してきたのは、身なりの整った、猫の獣人だ。
ドレスを着ている。
「あ、お城で」
「はい! わたくしは、獣人国ネログーマ女王が第3王女、ラグドールですわ」
そうだった。
女王のお子さんだ。
『む? 創造主はその猫と知り合いか?』
「ああ。獣人国の聖剣の使い手が、女王様なんだよ。たしか……ペルシャ様だったかな」
ペルシャ=フォン=ネログーマ。
獣人国ネログーマを治める女王だ。
「水の聖剣アクア・テールの持ち主でさ。メンテの時に何度があってるんだよ」
ラグドールは確か国外に留学に行ってるとかで、あんまり会う機会はなかったんだけどな。
晩さん会で一回会ったことがある。
「で、どうしたのラグドール様?」
「実は……母が、国が、大変なことになってるのです……!」
「ほぅ……大変」
「はい……聖剣に不具合が生じて、その影響で周りに不幸が訪れてしまっているのです!」
なんと不具合。
俺がメンテしたときに、アクア・テールには不具合がなかったんだが……。
待てよ。
まさかとおもうが、七福塵のやつの仕業じゃなかろうな?
いや、聖剣なんていう、人間じゃ取り扱えない武器に異常を発生させるなんて。
人間業じゃない。
「聖剣の鍛冶師であるあなた様に、助けていただけないかと思って……」
ディ・ロウリィにやってきたってわけか。
状況は理解した。
「OK。行こうぜ」
「え!? ご、ご主人様……?」
ポロが驚いている。
あらら?
「どうしたの?」
「え、なんでそんなあっさり決めちゃうんです……?」
「え、ああ。悪い。おまえと話し合わなかったな」
「いや、別に……わたしはヴィル様についていくだけなので……」
? じゃあなんで口挟んできたんだろうか。
「ご主人様が、助けに行く義理がどこにあるのかなと……」
「あー。動機ね。聖剣が壊れてる。だから治す。あと国の人たちを助けたい。そんだけ」
説明終わり。
だがポロは、どうにも納得がいってない様子で、不満げに唇を尖らせている。
うーん、どうにも俺の動機じゃ不十分って思ってるのかな?
「ポロ。俺は別に正義の味方じゃない。聖剣……物が壊れてたら修理したい。そして物のせいで不幸になってる人はほっとけない。これは、職人としてのポリシーがそうさせてるんだ。理解できないとは思うが、まあ、理解できないもんだと思って納得してくれ」
職人魂は普通の人じゃ理解できんもんだしな。
自己犠牲的な振る舞いみたいに見えてもしょうがない。
ポロは俺を見て、小さくうなずいた。
「わかりました……」
「俺のこと心配してくれたんだろ? あんがとな。俺は大丈夫だからよ」
くしゃくしゃ、と俺はポロの頭をなでる。
「じゃ、ラグドール様。ネログーマにさっさと行こうぜ」
「ありがとうございますわ! なんとお優しい!」
「いやいや、気にしないで」
俺は別に優しさから行くわけじゃないからな。
あくまでも、職人が行きたいってだけだ。
「善は急げですわ。さっそくネログーマに」
「つってもこっから馬車で結構離れてるよな」
「はい。三日はかかると」
「それじゃあ遅すぎだろ」
聖剣関連の不具合ってだったら、周りに結構被害が出てるだろうし。
なんだったら、もう今も進行中ってこともありえる。
俺は周囲を見渡して、石ころを拾い上げる。
「超錬成」
こつん、と神鎚ミョルニルで石を叩く。
すると、ただの石が、輝く結晶へと変貌を遂げた。
「! そ、それは転移結晶!? 超レアアイテムですわ! い、いったいどこから……?」
「石ころを錬成しただけだぞ?」
「え、ええええ!? ただの石がレアアイテムにぃいい!?」
俺の持つ5つの生産スキル。
そのうちの一つ、超錬成。
物質を作り替えるスキルだ。
俺はネログーマ行ったことあるから、転移結晶があれば一発で転移できるかなって思って作ったのだ。
「あ、そうだ。転移結晶じゃ一人しか転移できないじゃん。なら……」
もう一回コツン、と。
「はい大転移結晶」
「えええええええええええええ!?」
「どうした?」
「どうしたではありませんわ! え、SSランクの超超レアアイテムですわよ!?」
「ああ、それが」
「それがって……!?」
そんな驚くほどだろうか。
一人しか転移できない転移結晶を、複数人を連れてテレポートできる、大転移結晶に変えただけなんだが。
「さ、いきましょうかね」
「え、え、あ、はい……」
ラグドール様と護衛の人たち、そして馬車。
まとめて大転移。
一瞬の酩酊感が襲ったあと、俺たちはネログーマへと転移する……のだったが……
「なんだあこりゃ……」
そこは、密林といって差し支えない場所が広がっていた。
ネログーマは確かに、水と緑が豊かな国だった。
しかしこんな、密林レベルで木々が生い茂ってることはなかった。
「なるほど……聖剣の暴走による影響ってことか」
「え、ええ……そうですわ……。お母様の剣、アクア・テールが暴走し……国中の植物が異常発達したのです」
なるほどなぁ……。
これはいち早く、なんとかしないとな。
「よし、じゃあペルシャ女王様のとこを目指すか」
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