49.新しい旅立ち
俺の名前はヴィル・クラフト。
王都で職人をしていた。
職人としての屋号は、八宝斎。
武器から魔道具まで何でも作る鍛冶師だ。
ある日俺は婚約者と店を、弟に奪われて王都を追放された。
その後いろんな物を作りながら、獣人のポロや他国の勇者達と交流を重ねる。
その課程で、呪いのアイテムを配っては、人を不幸にしている存在、七福塵。
そして呪いのアイテムが擬人化した存在、付喪神と衝突する。
こないだは、弟が呪いのアイテムのせいで暴走、付喪神化した。
しかし俺は仲間と協力し弟を元に戻すことに成功。
王都を救った功績を使って、弟を救った俺は、再び、旅に出るのだった……。
★
セッチンの暴走から半月後。
帝国の領地、ディ・ロウリィ。
アルテミス皇帝陛下より賜った領地だ。
俺はなぜかここを治めることになっているのである。
「ヴィルさんまた旅に行っちゃうんすか?」
白髪の少女が、俺の前に立っている。
彼女はロウリィちゃん。
いにしえの時代から生きてる、すごい竜の魔神だ。
ここディ・ロウリィの守護者的存在だったのだが、呪いのアイテムのせいで暴走していた。
それを治してから、こうして仲間になった次第。
「ああ。悪いな、領地のこと、全部君に任せちゃってよ」
いちおう、俺は領主である。
だが領地を治めるほどの器でもないし、やり方もわからん。
するとロウリィちゃんが、あとの領地的な仕事を、担当してくれることになったのだ。
「いえいえ。問題ねーっす。わたし昔、領主の付き人やってたことがあるんで、領地経営はお任せありっす」
「領主の付き人……ねえ」
魔神なのに? 人の下につくものなのだろうか。
いえ、人には歴史がある。
色々あったのだろう、この少女にも。
「そっか。じゃあ任せるよ」
「うぃっす。ヴィルさんこれからどこ行くつもりなんす?」
「さぁてなぁ……」
「ノープランすか……」
「おうよ。目的のある旅っつーより、旅してそこで得た経験が、重要だからな」
ジッ……とロウリィちゃんが俺の右手を見やる。
俺の手の甲には、太陽の紋章が刻まれている。
「てか、ヴィルさんってもう目的達成したんじゃないんすか? 神器を、こないだゼロから作りましたよね?」
神器。
文字通り、神のごとき力を発揮する、凄まじいアイテム。
俺たち八宝斎の職人は、神器を作り、そして天に奉納することを使命としている。
俺の祖父、ガンコジーさんも、一生をかけて神器を作り死んだ。
彼と同じく、俺も神器を作りたいのだ。
とまあ、たしかに。
「ロウリィちゃんの言うとおり、俺は半月前に【ルクス】を作ったけど……さ。まだルクスは未熟……未完成だからな」
「ほぇ……ルクス? なんすかそれ?」
それとは失礼な。
「光の聖剣のことだよ」
「な、名前あるんすか……?」
「おうよ。ルクスは生きて、しかも自我があるしよ。まあまだ今は赤ん坊だがな」
光の聖剣ルクスは……。
現在、獣人ポロの腰についている。
「ポロちゃんが装備するんすか?」
「ああ。どうにもポロのもふもふを気に入ったようでな」
ということで、ポロは光と闇の聖剣、二刀流ってわけだ。
「でもまだ赤ちゃんでさ、夜空みたいにしゃべることはできないし。鞘から抜いて使うこともできない」
「どうやったら大きくなるんすか?」
「さぁてな……」
俺も聖剣のこと、そこまで熟知してるわけじゃないし。
そもそも聖剣を作った人間は俺が初だっていうし。
「まあそのあたりの方法を模索するのも、この旅の目的ってこと」
「なるほど……光の聖剣を育てつつ、新しい神器のインスピレーションを得る旅なんすね」
そういうことだ。
俺はまだまだ作りたいものがある。
新しく手に入れた、天目一箇神の力。
俺の作った物を全部、神器にするっていうすげえ力だ。
この力で、どんな物が作れるのか。
俺はわくわくしてたまらない。
「職人馬鹿っすねぇ……」
「まあな」
「自分で認めるんすか……」
ということで、俺はロウリィちゃんに領地を任せ、物作りの旅にでることにしたのだ。
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