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【完結】追放された鍛冶師はチートスキルで伝説を作りまくる 〜婚約者に店を追い出されたけど、気ままにモノ作っていられる今の方が幸せです〜  作者: 茨木野
二章

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48/283

48.二章プロローグ

新章スタートです!



 ヴィル・クラフトの従者、獣人のポロは夢を見ていた。

 幼い頃、まだ、彼女の両親が生きてるときの夢……。


『はぁ……! はぁ……! くそっ! 駄目だ、奴らが追いかけてくる!』


 ポロと一緒に逃げているのは、父、そして母。

 ふたりとも獣人で、薄汚れた格好をしている。


 彼らがいるのは洞窟のなかで、【それ】から逃げている最中だ。


『あなた……』

『ああ……』


 両親は、何かを決心したようにうなずく。

 幼いポロは気づかない。


 両親の目に宿った、覚悟の光を。


『ポロ、おいで!』

 

 母親がポロの手を引いて、先へ向かう。

 そこは、大きな石と石の間。

 大人は通れないが、子供ならばギリギリ入れる。


『ポロ! あなたはここに入って隠れていなさい!』

『! どうして!? おとうさんは? おかあさんはっ?』


 ポロの母親はニコッと笑うと、彼女の頭をなでる。


『大丈夫、お母さんたちは、【あれ】を倒して直ぐにあなたを迎えに行くわ』


 外では『逃げろ逃げろ!』『食われちまうぞ!』と大騒ぎだ。

 ポロは幼かったが、馬鹿では無い。


 母の悲壮な顔を見て、ただならぬ事態が起きているのだと理解した。

 ……もう二度と、あえなくなる。そんな予感がした。


『やだよ! おかあさんも、おとうさんも隠れよう! ね!』

『ポロ……良い子にしてなさい』


 母親はポロを、大岩の間に隠し、そしてその前に、蓋をするように岩をおいた。

『おかあさん! おとうさん! やだ! やだよ!』


 必死になってポロが岩をどけようとする。

 だがとても重くて、直ぐには動かせなかった。


『あなたっ!』『ぐわぁああああああ!』


 ……父の悲鳴が洞窟に響き渡る。

 他の人たちの声も聞こえる。


 恐い、恐い……。

 だがそれは、外に居る【あれ】の存在より、父や母、大切な人たちが死んでしまうことのほうが恐かった。


 ……どれくらい時間がたったろうか。

 ポロは岩の外に出た。


 岩をどけることができなかったので、地面にトンネルを掘って外に出たのだ。


 そこで……見た。


『いや……』


 血だらけになった、仲間達。

 その中には、父や、母もいた。


『お父さん! おかあさぁあああああああああああああああん!』


 倒れ伏す母に駆け寄るポロ。

 父は……完全に事切れている。


 母は……かろうじてだが、息が合った。

『ぽ……ろ……』

『おかあさん! まってて! 人を呼んでくるからっ!』


 ポロは洞窟の外へ向かって走る。

 大丈夫、直ぐに良くなる!


 だが……。


『なんだぁ……生き残りがいたのかね?』

『【ドエム・オシオキスキ】様!』


 陰気なツラをした、40くらいの、身なりのいい男が立っていた。

 彼の名前はドエム・オシオキスキ。


 ポロ達の【主】であるそいつに、ポロが話しかける。


『ドエム・オシオキスキ様! おかあさんが生きてます! すぐに助け!』

『ふむ……生き残りはチミだけかい?』

『はいっ! 多分……』


 はぁ……とドエム・オシオキスキはため息をつくと……。


『おい、この餓鬼を連れてけ』

『かしこまりました、ドエム・オシオキスキ様』


 ドエムの後ろに立っていた、従者らしき男が、ポロを俵のように持ち上げる。


『ど、ドエム・オシオキスキ様! なにをするんですか!?』

『なにって……決まってるだろ? チミを奴隷として売り飛ばす』

『なっ!? そ、そんな……い、いやです!』


 ポロはジタバタと暴れて、抵抗してみせる。

 だが従者の腕には力が入っていて、子供のポロでは抜け出せない。


『いや! やめて! お母さんを助けて! お願いします、ドエム・オシオキスキ様!』

『はぁ~……良いかねチミぃ……』


 ドエム・オシオキスキはポロの前髪を乱暴につかみ、顔を近づける。


『チミは、僕様の【物】なの』

『物……』

『そう。チミらはの所有者は僕様! ということは、チミらをどう使おうと、僕様の自由! チミはまだ若いから、売る価値がある。でも……傷付いたごみには、それがない』


 ゴミ……。

 傷付き、年老いた獣人奴隷たちを……ドエム・オシオキスキはそういった。


『連れてけ』

『いや! はなして! お母さんはまだ生きてるの! 助けてあげて! お母さんっ! いや、いやっいやぁあああああああああああああ!』


 抵抗むなしく、ポロは売り飛ばされることになる。

 父は死に、母は瀕死。


 そんな状況で、彼女は親を助けることすらできなかった。

 助けて欲しいと、頼んでも……。


 あの嫌味な人間、ドエム・オシオキスキは、助けてくれなかった。


 ……だから。

 だから、ポロは……。


    ★


「はっ! はぁ……はぁ……はぁ……」


 ヴィル・クラフトの従者、獣人のポロ。

 彼女は目を覚ます。


「ここは……」

『おお、ポロ。目が覚めたかの?』


 どこからか、女の声がする。

 壁に一本の、美しい剣が飾ってあった。

「夜空様……ごめんなさい、起こしてしまい」


 夜空。

 それがこの美しい剣の名前。


 通常剣がしゃべるなどあり得ないこと。

 しかしこの夜空は特別だ。

 自我と、強大な力を持つ剣……聖剣。


 闇の聖剣・夜空。

 ヴィル・クラフトが作った、聖なる剣の一本だ。


 ぱぁ……! と夜空が光り輝く。

 するとそこには、美しい着物姿の女性が現れた。


 聖剣に宿った意思、剣精。

 夜空のもう一つの姿である。


「だいぶうなされておったぞ? 大丈夫か?」

「はい……夢を見ておりました」

「夢?」


 ベッドに横たわるポロのとなりに、夜空が座る。


「昔の夢です。まだ……両親が生きていた頃の……」

「ふむ……おぬしは、たしか親がおらんのだったな?」

「はい……」


 父は死んで、母は瀕死の重傷を負ったまま、放置された。

 ……そして一人だけ、奴隷として売り飛ばされる羽目となった。


 ……あの、ドエム・オシオキスキのせいで。


 ぎゅっ……と歯がみする。

 その目には、ほの暗い闇が広がっている。


 夜空は使い手たるポロの目の奥で輝く、どす黒い感情の炎を感じ取る。


「これ」

「あいたっ」


 夜空はポロの頭を軽くチョップする。


「仮にも聖剣の勇者たるものが、そんな顔をするな」

「…………でも」


 でも、とポロはつぶやく。


「私は……夜空様を使いこなせておりません。ヴィル様が、誰もが使える聖剣として作ったはずなのに……」


 夜空がため息をつきながら、ポロの頭をなでる。


「王都であの馬鹿弟が起こした騒動から、半月……。おぬしは、ずっと悩んでおるよな」


 セッチンの騒動から半月後。

 ヴィル一行は、帝国にいた。


 ヴィルは皇帝陛下から領地を与えられている。


 ディ・ロウリィ。それがヴィルの領地。

 ヴィルは新しく手に入れたスキル……。

天目一箇神あめのまひとつのかみ】を使いこなすべく、ディ・ロウリィの領地にある工房に引きこもっている。

「主が引きこもり半月……。そろそろ工房から出てくる頃合いじゃ。そうなれば、また旅に出る」

「はい。それまでに、夜空様を使いこなすようになると、己に課題を出したのですが……」


 ポロがベッドから出る。

 ディ・ロウリィ、山の中にある館。


 館から出たあと、ポロが手を前に差し出す。

 夜空がうなずくと剣の姿となり、彼女の右手に収まる。


「すぅ……ふぅ……」


 朝靄が立ち上る森の中でひとり、ポロはたたずむ。


「やぁ……!!!!」


 裂帛の気合いとともに剣を振る。

 彼女の目の前に、黒い三日月が出現する。


 朝靄、そして周囲の木々を吸い込んでいき……。

 そして三日月が閉じる。


「駄目です……」

『いやいや! 何してるんすかあんたぁ!』


 バサッ……! と翼を広げて、ポロの目の前に一匹の竜が現れる。


「ロウリィ様。おはようございます」


 大きなこの白竜、名前をロウリィという。

 このディ・ロウリィの土地に住む魔神であり、ヴィルの仲間のひとりだ。


『なんすか今の黒い三日月!』

「闇の聖剣、夜空様の奥義ですわ」


 闇。

 あらゆる物を飲み込む、最強の力。


 今の黒い三日月は、闇の聖剣が作った物。

 その効果は、闇の中へ万物を吸い込むという恐ろしいもの……。しかし……。


「全然駄目です……」

『どこがっすか! 今のでもう十分、すげーじゃないですか!』

「駄目です。ヴィル様は……黒い満月を作って見せました」


 ポロは述懐する。

 夜空を手にしたヴィルが、巨大な黒い満月を作り……。


 そして、山一つ飲み込んだ姿を。


『確かに……まだおぬしは、わしの10%程度の力しか引き出せておらん』

『いや10パーでも十分じゃないっすか……』


 周囲一帯が更地になっているほどだ。

 黒い三日月は相当な威力と言えた。


 でも……。


「駄目です。私は……勇者なのですから……もっと強くならないと……」


 強くなりたい。

 ポロはヴィルに助けてもらって、旅に同行するようになってから、そういう意識が芽生えていた。


 強くなる。

 そして……。


「あの憎い……ドエム・オシオキスキを……!」

『きゅ、急になんすかドM? お仕置き? え、ポロちゃんそういう趣味があるんすか?』


 困惑する魔神ロウリィに、ポロが説明する。


「いえ、そういう人がいるんです」

『ドMにお仕置き好きな人っすか……ええ……絶対近づきたくないっすよ。確実にヤバいやつっす。100%関わりたくないっすね』


 と、そこへ……。


「ふぁああ……おはよ~」

「ヴィル様!」


 屋敷から、ひとりの青年が眠そうにしながら現れる。

 彼はヴィル・クラフト。


 黄金の手を持つ、世界最高の職人、【八宝斎はっぽうさい】。

 ポロの……今のご主人様だ。


「よっす。久しぶり」

『ヴィルさん、ずぅっと工房に引きこもってたっすね』

「ああ。ようやく、天目一箇神あめのまひとつのかみの使い方のこつがわかってきた。そろそろ、旅に出発しようと思ってよ」


 ……間に合わなかった。

 ポロは悔しそうに歯がみする。


 ヴィルが旅を再開するまでには、この闇の聖剣・夜空の力を100%引き出せるようになりたかったのに……。


「どうした?」

「……いえ」


 ……仕方ない。

 旅の途中で鍛えていくしかない。


 でも……。

 果たして、他の6人居る勇者のように、自分も強くなれるだろうか。


 ポロの胸中には、黒い不安のモヤモヤがかかっているのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 夜空の奥義ってまさか、冥道残月破のパクり…?
[気になる点] ドエム・オシオキスキのせいで。 ひでぇ名前
2023/02/26 22:10 退会済み
管理
[良い点] 第二章のスタートですか、ポロの過去が語られましたが・・・道を踏み外すなよ・・・ [気になる点] 今さらなんですが…王女アンネローゼはどこに?
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