エピローグ
これにて完結です!
あれから数年が経過した……。
俺はディ・ロウリィにかまえた工房で、日々暮らしてる……。
「なにぃ!? 海魔蛇の、新種!?」
工房で作業中に、七大勇者のひとり、ネログーマ女王のペルシャから連絡があったのだ。
通信用の魔道具ごしに、ペルシャの苦笑する声が聞こえる。
「海魔蛇の鱗は良質な海中装備の素材になる! 新種となればもっと良い性能のやつが手には入るかも! すすす、すぐいくぞお!」
俺は作業をほっといて、工房の外に出る。
「だでぃー」
小さな女の子が、俺の腰にしがみつく。
「おう、ロル! どうした?」
小さな、獣耳を生やしたこの子は……ロル。
俺とポロの娘だ。
あれから、俺とポロは結婚し、そして子供をもうけたのだ。
「だでぃ? またでかけるん?」
「おうよ! ちょいとネログーマまでな!」
「おー!」
目をキラキラさせるロル。
「ついてくるか?」
「うん!」
ロルは俺の作る道具、というより、魔物と戦う俺の姿に、興味があるようだ。
「あなた」
「ポロ」
人妻となったポロが、苦笑しながら、こっちへとやってくる。
その背中には赤ん坊、両手には幼女ふたり。
今、六人家族なのだ。
「またお出かけですか?」
「おうよ! すぐ帰ってくる!」
「そういって1ヶ月帰ってこないことざらじゃあないですか……もう~」
と言っても、ポロが俺を引き留めることはない。
「悪いな、皆を頼む!」
「了解です。遅くならないでくださいね。来週はセッチンさんたちとお食事会あるんですから」
そう、セッチンたちとは、また仕事を一緒にしだしたのだ。
彼は職人を辞めて、今は、シリカルと一緒に行商人をやってる。
自分で作ることをあきらめたセッチンは、妻を、そして潰してしまったハッサーン商会を、立て直そうと頑張ってるそうだ。
俺は彼らに、アイテムを卸してる。
別に同情からじゃあない。
彼らは俺の作ったアイテムを、ちゃんと扱ってくれるのだ。
彼ら商人もまた、職人にとっては必要な存在だと、最近俺は思うようになった。
いくら物を作っても、それを必要とする人のもとへ、届ける人が居ないとだめだってな。
そんなわけで、俺はセッチンたちと手を組んで、今は大勢の人たちに、アイテムを届けることをしてる。
で、たまに定期的に食事会をしてるのだ。大事な家族との会合、忘れないってばよ。
「んじゃ、ロル! いくぜ!」
俺はロルを肩にのせて、神鎚を取り出す。
転移門を作り出し、再び、冒険に出発する。
「いってきます!」
「いってらっしゃい!」
☆
俺、ヴィル・クラフトは、世界を救った後も、こうして、自由気ままに、物作りをする。
今までも、これからも。
伝説の鍛治師であるらしい俺は、今日もどこかで、無自覚に伝説を作りまくるのだった。
《おわり》




