282.裏、真
七福塵を撃破した。
世界に蔓延していた呪いは、すべて、やつが消えると同時に姿を消した。
今回の件で死傷者はゼロ。
それは各国の素早い対応、勇者達の奮闘、そして……俺の創った進化聖剣のおかげだったと、あとでゲータ・ニィガ王国の王女から褒められた。
今回の件で、俺は世界を救った英雄にしてくれると、王女さまが言ってくださった。
けれど、俺はそれを固辞した。
魔族国ケラヴノスティアのお姫様からも、獣人国ネログーマの王女ペルシャからも、帝国の皇女からも、英雄の称号をあげるといわれたが全部断った。
なぜって?
世界を救ったのは、俺ではないからだ。
勇者達、そして、この国に住まう人たち全員が、頑張ったから。
だから、危機を脱したのだ。
「あなた様は、本当に無慾な御方ですね」
ゲータ・ニィガ王女が、微笑みながら、そう言ってくれた。
そして、今回の一件を、俺ではなく、勇者達の頑張りということにして、公表してくれた。
ああ、そうそう。
元々勇者は、六大勇者だったんだけど、今回の件でポロが勇者に加わった。
結果、世界には七大勇者として、その名前が広まることになった。
勇者達は、呪いによって被害を受けた建物の復興に、力を注いだ。
その裏にはハンマーを持った見知らぬ男がいたらしい。ダレノコトダロウネー。
七大勇者+謎のハンマー男のおかげで、傷ついた大地は元通りになった。
エネルギーを失ったはずのこの星だけど、今のところは支障はでていない。
七福塵が妖刀となり、大地にエネルギーを帰してるからだろうと思われる。
やがて刃にこめられたエネルギーを、全て星に帰すことができるだろう。
そしたらやつは自由になれる。
……けど、その日がいつ来るのかは今んところ不明だ。
俺が死んだあとのことになるだろう。
もう七福塵……ご先祖さまには会えないのは、ちょっと寂しい。
けど、死んだらまた天であえるだろう。
☆
夢を、見た。
何もない白い空間。
そこに……懐かしい人がいた。
「親父! じーさん!」
俺の親父、そして、先代・八宝斎のガンコジーさん!
俺は彼らのもとへかけより、抱きつく。
『よくやったな、ヴィル』
『わしら八宝斎の使命を、よくぞ果たしてくれた』
じーさんたちは俺の背中を優しく撫でてくれた。
『八宝斎の使命は、神器を創り、天に奏上すること。おまえさんは、やり遂げた。自分のオリジナル神器を創った。そのうえ……八宝斎と七福塵の因縁を終わらせてくれた』
じーさん曰く……。
俺たち八宝斎の使命というのは、天に神器を奏上するっていうのは、表向きの使命だったそうだ。
裏の使命は、七福塵を凌駕する神器を創ることだった、らしい。
『そうだったんだ……』
『ああ。七福塵、先代を凌駕し、そして、先代を成仏させる。これこそが……真の使命だったのだよ』
裏に、真……ね。
「全然気づかなかったや」
俺はただ、創りたいものを創っていただけ。
じーさんたちから受け継いだ、神器を創れという使命の名の下に、好き勝手創っていただけだった。
裏や、真の使命なんて……ぜーんぜん知らなかったし、気にもとめなかったし、考えもしなかった。
『それでいい。おまえさんは、これからもそうやって、好き勝手に創りたいものを創るのだぞ……』
そう言って、じーさんたちは消えていった。
俺は……まだ生きてる。
まだまだ、創りたいものが、ある!
だから……そっちに行くのは、もう少し、待っててくれよな!
次回、最終回です。




