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【完結】追放された鍛冶師はチートスキルで伝説を作りまくる 〜婚約者に店を追い出されたけど、気ままにモノ作っていられる今の方が幸せです〜  作者: 茨木野
一章

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25.隠しダンジョンの地図を一瞬で作る



 ロウリィちゃんの新居に、謎の入り口があった。

 そこを抜けると、黄金の手の持ち主が作ったとされる工房を発見。


 工房というか、巨大な都市だが。

 しかしその都市のそとには、大迷宮が広がっていて、そこが七獄セブンス・フォールっていう、世界に七つしか無い超レアなダンジョンだったことが判明したのだった。


『これから、どーするんすか?』


 脳内にはロウリィちゃんの声が響く。

 彼女とは念話を通じて会話ができるのだ。


 彼女のこの力から、とある【アイディア】が浮かんだのだが、まあそれは追々。


「ちょいと中を検めようかなっておもってる」

『ダンジョン探索ってことすか?』

「まあそういうこと」


 ダンジョン攻略には正直そんなに魅力を感じていない。

 俺がほしいのは、ダンジョンでとれる素材だ。


 まわりをぐるりと見回す。

 青白い不思議な素材の鉱石で作られた、通路が奥へと向かっている。


「ううむ、これどういう鉱石なんだ? 神威鉄アダマンタイトとは違うし……ほ、ほしい……」


 未知の鉱物から、新しい武器が作れるかもしれないしな。


『いやほしいって言っても、ヴィルさん。ダンジョンの壁は破壊不能なんすよ?』


 ロウリィちゃんは、かつてすごい図書館で司書的なことをやっていたらしい。

 だから、俺たちの誰よりも知識がある。


『この迷宮の壁は絶対に壊せないんす』

「てい」


 俺は神槌ミョルニルを取り出して、適当に床を叩いた。


 ばきぃいいいいいいいいいいいいいいいん!


『なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!?』


 床の一部が粉々に砕け散った。

 おお、よしよし、回収完了。


『なんすか!? 今なにやったんすか!?』

「え、万物破壊スキルで壊しただけだぞ?」


 万物破壊。

 あらゆるものを存在から抹消させるほどの、強い破壊のスキルだ。


 壊しちゃうと素材が回収できないからな。

 万物破壊の強さを調整して、迷宮の床を【解体】したのである。


『いや! そんなあっさり言いますけどね、迷宮は破壊不可能な素材でできてるんすよ!? なにあっさり壊してるんすか!』

「いやまあ、俺の手ほら、結構あれなんで」

『やばすぎっすよ……万物破壊って、魔神が使うスキルっすよ?』


 あれ、そうなんだ。


『そっす。原初の七竜神(ピュア・カラーズ)っていう、女神様が作った7体の魔神が1体、【黒のカルマアビス】が使う、触れた物を跡形も無く消し飛ばす激やばスキルっすよ!』

「へー……」


 まじか。

 俺が普通に使ってたこのスキル、どうやら魔神の使うスキルだったらしい。


『人間に備わってること自体、おかしいんすけど……どうなってんすかあなた?』

「さぁ……?」

『自分でもわからないんすか?』

「まあな。生まれた時にはこの手あったし」


 じーさんからは、やばいから使い方には気をつけろとは言われていたけど。

 まさか魔神のスキルだったとはねえ……。


(ボックス)オープン」


 俺の前に、黒い■が出現する。

 砕いた素材をその箱のなかに収納した。


「よし」

『よしじゃねえええええええええええええええええええ!?』


 またも、ロウリィちゃんがツッコミを入れる。

 え、なんだ?


『なんすか今の、■って!?』

「ああ、これ? (ボックス)

『だからそれなんなんすか!? いきなり空間にあらわれて、アイテムボックスっすか!?』

「さぁ……?」

『さぁ!?』


 説明するのって結構難しいな。


「これも黄金の手に付いてる機能の一つなんだよ」

『黄金の手の記述に、そんなのないんすけど!?』


 あらまあ、そうなんだ。


『そもそも黄金の手ってのは、高位の生産スキルが付与された手なんす。しかも本来は1つだけ』

「あ、それは知ってる。でも俺5つあるんだよね」

『5つ!? 嘘でしょ!?』

「ホントホント。超錬成、付与、万物破壊、全修復、そんで……」


 最後の1つの名前を言うと、ロウリィちゃんは言葉を失っていた。


『そ、そんなスキルがあるんだったら、店なんて必要ないじゃねーすか。やりたい放題じゃん』

「まー……でも俺、この5つめのスキル、あんま好きじゃ無いんだ」

『どうしてっすか?』

「だって……なんか使い捨てるみたいでさ。好きじゃないだよね」


 俺は物にも心があるって思ってる。

 だから、俺の使っていない、最後のスキルは、使えないんじゃなくて、使いたくないのである。


『か、変わった職人さんすね……金儲けのために職人やってるんじゃなくて、最高の1作品を追求したいみたいな、まさに職人タイプなんすね』

「まあ、職人にもいろいろいるだろうけど、たしかに俺はそのタイプかもな」


 そもそも旅の目的が、最高の神器をゼロから作ることだしな。


「さて……いくか」

『まずはマッピングっすか? ダンジョンを歩いて』

「いや、もうマッピングは済んだよ」

『…………………………………………はい?』


 ロウリィちゃんが困惑してる。

 あれ、おかしなこと言っただろうか?


『ちょ、は……? え? ま、マッピングは済ませたって、いつ!?』

「今」

『今!?』


 あれ、気づいていないのか。


『つ、通常ね、ダンジョンのマッピングって言ったら、長い時間がかかるもんなんすよ。周囲を練り歩いて、少しずつ通路や部屋を調べてく、時間と労力のかかるもんす』

「へー……。でもできたよ。ほら」


 俺は(ボックス)から羊皮紙と炭を取り出す。


「あ、よいしょ」


 こつん、炭をハンマーで叩く。

 炭が粉々に砕け散って、その粉が羊皮紙に精密な図を描く。


 数秒もしないうちに、巨大な迷宮の地図が完成した。


「な?」

『な? じゃねええええええええええええええええええええ!』


 ロウリィちゃんがまたも渾身のツッコミ。

 どこか疲れたように、ぜえはあ……と息を切らしながら言う。


『今のなんすか!?』

「え、迷宮の情報を、紙の上に出力しただけだぞ?」


 炭を砕いて、錬成を使って図を書いたのだ。


『いやそもそも、迷宮の情報をどうやって手に入れたんすか!?』

「ほら、さっき迷宮の地面をぶったたいただろ」


 俺は神槌ミョルニルを手に持って言う。


「こつん、って叩いたときに、地面に走った衝撃を使って、周辺の探索を行ったんだ。ほら、ソナー的なあれだよ」

『こ、コウモリとかが超音波を出して、周囲の情報を手に入れるみたいな、あれっすか?』

「そうそう」


 ハンマーで地面をぶったたいて、迷宮の壁に衝撃を走らせて、通路や部屋の情報を探ったのだ。

 で、それを紙に出力しただけである。


『…………』

「しかしでっかい迷宮だなぁ。しかも入り口が、さっきの工房んとこからしかないや」

『…………』

「ん? どうしたのロウリィちゃん?」


 彼女は深々と、ため息をついたあとに言う……。


『ヴィルさん、あんたなんで職人なんてやってんすか? ふっつーに英雄になれるレベルで、やばいっすよあんた!?』

「えー……うそぉ」

『まじっすよ! どこの世界に、ハンマーコツンでこの巨大迷宮の、正確な地図を作れるひとがいるんすか!?』

「あー……まあ、でもほら、俺に特別な手があるからさ」

『だとしてもこんなのできるの、あんただけっすよぉ……!』


 そんなこと言われても……。

 物作り以外のこと、俺わからないしなぁ。


「先代の八宝斎はっぽうさい、ガンコジーさんも、このハンマーでマッピングする技術使ってたよ普通に」

『つーか! その八宝斎ってなんすか!? 自分が管理していた図書館に、そんな記述のってなかったすよ!?』

「まじで?」

『まじで!』


 あれ? そうなの……。

 八宝斎って、もっとメジャーだと思ってたし、結構昔からあるもんだと思ってたんだが。


『誰かが情報を操作してたのかもっすね』

「誰かって……誰が?」

『そこまではわからんねーすけど。少なくとも、こんだけやばすぎることができる職人が、昔からいるんだったら、歴史の教科書に載ってるはずっすよ』


 うーん……言われてみればそうかもしれないけど……。


「ま、興味ないね」

『そ、そーなんすか? 表に出れば、もっと評価されるっすよ。英雄的な扱い受けると思うっすけど。ハンマーマッピングなんてまじで、公表すれば世界中の人たちから依頼殺到されるでしょうし』

「興味ないない。俺は物が作れればそれでいいんだ」


 俺がしたいのは物作りだし、使った人が笑顔になれるような、そんな道具が作れれば俺は満足だ。

 別に英雄にもなりたくないし、伝説にもなりたくない。


『か、変わってるんすね……ヴィルさん』

「いやぁ……それほどでも」

『褒めてないんすけどね! ああもう、どうして強い力の持ち主って、みんな変人なんすかねえ、もぉおおお!』


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― 新着の感想 ―
[一言] ロウリィちゃんが良いツッコミ要員 エコーロケーションってヤツね
[一言] ロウリィが出てくる辺りから面白みが増してますね やはりツッコミ不在だと面白味も…?
感想一覧
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