240.風と獣人
《ポロ視点》
獣人勇者ポロは、風の勇者ミリスとともに、別行動をとっていた。
「ヴィル様……」
「ししょーが心配なの? ポロちん」
「ぽ、ポロちん……?」
風の勇者ミリス。
小柄で、愛らしい見た目の少女だ。
「ポロちんのことだよ!」
「わ、私ですか……?」
「そう! ぼくのことはみっちゃんって呼ぶといいよ!」
「え、いやそれはちょっと……」
相手は勇者、尊敬すべき存在だ。
そんな、あだ名で呼ぶなんて……。
「他人行儀よくないよ! ほら、みっちゃん!」
「ええー……っと」
言わないと許してくれなさそうだ。
「み、みっちゃん……」
「よーし!」
るんるん、とミリスが上機嫌で、街道を進んでいく。
正直……あまり勇者っぽくなかった。
でも逆に、だからこそ……接しやすい。
「みっちゃんは……いつから勇者に?」
「ん~。結構最近だよ。10年前……かなぁ」
……ミリスの外見は15歳くらい。
つまり、そんな小さいときから……。
「どったの?」
「いえ、5歳の時から勇者なんて……大変そうと思ったのです」
「あはは! ちがうよぅ。ぼくとイリスは、ハーフエルフ! 人間より長生きなのだ!」
あ、なるほど……とポロは納得する。
エルフは長命の種族だ。
ハーフエルフもまたしかり。
つまり、5歳で勇者ってことはなさそうである。
「なにポロちんぼくらのこと気になっちゃうの?」
「そりゃ……もちろん」
ポロは新米の勇者だ。
ほかの勇者のことを知り、勇者としての理解を深めたいと思っている。
一方ミリスは上機嫌だ。
「そっかー! ぼくに興味を持ってくれるとは! きみ……お目が高いね!」
友達に関心を持ってもらって、うれしい。
その程度の意識のようである。
「ぼくらはね~。孤児だったんだ」




