219.呪われし村
《ヴィルSide》
ロクサーヌちゃんに依頼され、魔族国へやってきた俺たち。
まずは捕らわれてる風と土の勇者を、助けに行くことにした。
「この辺にひとり勇者がいるはずなんだが……」
森を抜けた先に一つの村があった。
ロクサーヌちゃんが言う。
「ここにも、か弱き魔族の民がいたはずなのじゃが……」
一見、普通の村なのだが、人の気配をまるで感じない。
中へ入ろうとするが、ポロが手でそれを制する。
「ヴィル様。この村、邪悪なる気配を感じます」
「ほう……」
ポロは獣人、人間の何倍も五感に優れる。
人間ではわからない、なにか嫌な気配を、あの村から感じ取ったのだろう。
ポロは近くに落ちていた木の枝を拾って、村へ投げる。
バシュッ……!
「!? な、なんじゃ……何が起きてるのじゃ!?」
ロクサーヌちゃんが驚いてる。
ポロはびびっているようだ。
俺は……スタスタと落ちてるそれを取りに行く。
「ヴィル様!?」
「んー?」
俺は左腕だけを伸ばし、枝を取ろうとする。
バシュッ……!
左腕がミイラのように、しわしわになってしまった。ほほぉう、こういう仕組みか。なるほどねー。
俺は枝をつかんで戻ってくる。
「わかった。これ、水分を一瞬で失わせる結界が張られて……って、どうしたのおまえたち?」
なんか、ロクサーヌちゃんもポロもドン引きなさっていた。
んん?
「う゛ぃ、ヴィル様……その、もう少し危機意識を……」
「え、大丈夫っしょ。ほら」
俺はじーさんのハンマーで、こつんと左腕を叩く。
するとミイラになっていた腕が、一瞬で元通りになる。
黄金の手が持つ能力の一つ、修復だ。
「どんな呪いだろうがケガだろうが、こうして治せるしな」
「し、しかし……即死するような呪いだったら……?」
ロクサーヌちゃんが恐る恐る聞いてくる。
「木の枝が枯れた時点で、その線はないってわかってたしな。さすがに即死の呪いだったら触らなかったよ………………たぶん」
「たぶん!?」
いやほら、ね。
それはそれで気になるから……ね。触ってたかも。
「まあそれで死んでも何とかなる」
「ならぬわ……!!!」
「死ぬ前に細胞を修繕するとかさ」
「なんかもう常人には理解できぬ……ヴィル殿の物への執着には」
しかし……ふーん、触れたら水分を奪う結界か。
しかも、一般人や、職人の目を持つ俺ですら欺くほどの、高度な結界……。
「いいね! 作ったやつ誰だろう。どんなやつかなぁ」
「う゛ぃ、ヴィル様……それはあとにしましょうか」
「お、そうだな。この村に勇者がいるかもだし。てことで……」
俺は黄金の手のもつスキルの一つ、万物破壊を発動。
破壊の力をまとわせたハンマーで、結界を叩く。
バキィイイイイイイイイイイン!
「よし、中にはいるか」




