193.職人技
俺は戦法、英雄再現を使う。
触れた道具の、持ち主の動きを再現するというもの。
「んだよぉそれえええ! 意味わからねえよぉ!」
魔剣を手に、ウィニーちゃんが斬りかかってきた。
剣術スキルを創出し、それを使ってる彼女の動きは実に流麗だ。
俺を効率よく殺そうと、斬撃を放ってくる。
一方で俺は■から、かつて作った鉄の剣を手に持って、彼女の剣を受け流す。
どんな攻撃も受け流し、華麗に避けて見せる。
氷の勇者キャロラインの動きを再現してるのだ。
『すごいで……ヴィルやん』
「アイス」
キャロラインの聖剣の意思、剣精アイスバーグが驚いたような声を上げる。
『完璧に、うちのキャロラインの動きや。信じられへんわ……ほんまに触れただけで、その武器の持ち主の動きをまねられるなんて』
「そんなに信じられないか? 簡単だと思うんだけど」
たとえば、刃こぼれ。
それを見れば、どんな力で剣を振った、その結果剣が刃こぼれしたのかわかる。
柄のすり切れ具合を見れば、どの程度の力で握っていたのかわかる。
そんな風に、道具には使い手の記憶がたっぷり染みついてるのだ。
それを読み取り、再現する。難しいことじゃあない。
『いやいやいや、むずかしいわ! 人間業じゃあないで!』
「ああ、職人技だしな」
『誰が上手いことを言えと……!』




