185.好奇心
《ヴィルSide》
「……ヴィル様っ、準備が整いました!」
氷の勇者キャロラインが、レイピアを構えながら言う。
確かに彼女の持つ聖剣アイス・バーグからは、全てを凍りつかせるような凍てつく波動を感じる。
「こちらも準備万端です、ヴィル」
水の勇者ペルシャは長槍を構えながら言う。
彼女の所有する聖剣、アクア・テールの周りには無数の水球が浮かんでいた。
氷と水、二つの力を同時に発動させ、炎の魔神となったウィニーちゃんの体温を下げる。
そこへ、俺が接近して、彼女の体に組み込まれた炎の聖剣ファイア・ローを回収する。
それが今回の作戦だ。
しかし……。
「待った。ちょっと足りないかもしれない」
「「どうしてですか?」」
「なんとなくだけど、ウィニーの体から、他の神器の力を感じるんだ」
ほんとになんとなくなんだけどな。
まあ、あえて言語化するとしたら、あれほどまでの高熱を発していて、体が融解しないところだろうか。
「すごいです……ヴィル様はそんなことまでわかってしまうのですね!」
魔神の攻撃を闇の聖剣で消し飛ばしながら、ポロが感心したように言う。
火の勇者ヨウは魔法矢で敵の攻撃を打ち落としながら尋ねてくる。
「しかしではどうするのでありますか? 氷と水、お二人の力を使って敵の温度を作戦は……?」
「それはこのまま続行する。ただ、やり方を少し変える」
俺はキャロラインとペルシアを見て、考えを言う。
「なあ二人とも、俺に神器をあずけて……」「「もちろん!」」「くれないか、ってまだ言い終わってないんだが……」
キャロラインは笑顔でうなずく。
「……ヴィル様のお願いなら、なんだっていたします」
「ええ、キャロラインさんの言うとおりですわ。あなたになら全てを委ねることができる」
職人としての俺を信頼しての発言だろう。
力を認めてもらえたことがうれしかった……が。
同時に、ちょっと申し訳なかった。
「ごめん、これから俺がやることって、だいぶ個人的な事情入ってる部分あるんだ」
「個人的な……?」「事情……?」
「ああ、さっきウィニーちゃんの複合極大魔法、あったろ? アレ見てさ……創ってみたいなって、思ったんだ」
二つの究極の力を組み合わせた先に、どんな凄い道具があるのか。
俺は、見てみたいと個人的に思ってしまったのである。
「……ヴィル様らしいです」
「もちろん、勝算もおありのことでしょう?」
そうだ。
まあ好奇心からってのも強いんだけど、二つを組み合わせれば、炎の魔神がやどす炎を、どうにかできるって予感がするのだ。
「ふたりとも、いいか?」
「「ええ、もちろん!」」
「おっし……じゃあ、俺に向かって、神器解放を行ってくれ!」
神器解放。
それは、神器に秘められし力を解放して、相手にぶつける、神器使いの最大の奥義だ。
二人はうなずいて、レイピアと長槍を構えて、力を解き放つ。
「「神器解放……!」」
「超錬成……!」
ふたりの勇者の力、そして、俺の黄金の手の力が、渾然一体となって……。
新たなる伝説が、産まれようとしてる、そんな予感に、俺はただひたすらにワクワクしてた。




