第59話 破天荒な大晦日
旅行を終え、家でしばらくゆっくりしているとあっという間に大晦日を迎えていた。
今日で今年も終わりかと思うと今まであったことを色々と思い出す。
・・・うん、楽しいこともあったが色々と苦労した年でもあったかもしれない。
母さんは七海と一緒におせち料理を作っていた。今回はいつもより量が多くなりそうだ。
俺は部屋の掃除をしていた。必要なくなったものをゴミ袋に入れていく。
そんなことをしている時、後ろからガサゴソと音が聞こえたので振り返ってみると姉さんが何かを探していた。
「姉さん、どうしたんだ?」
「あ、優。あのね、カメラ無くしちゃって」
「あぁ、それなら。ほら、これだろ?」
「私のカメラ!!どこにあったの!?」
「今日起きたら俺の枕の上にあった」
「・・・」
「何か言うことは?」
「中見てないよね?」
「見てはないけど、勝手に撮られた写真は消した」
「やっぱり見てるじゃん!!」
姉さんは叫びながら下に降りていった。
全く、呆れた姉だ。もちろん、写真を消したなど嘘である。
見つけた場所は本当だがそこまでするのは面倒くさかった。
その後、母さんに怒られていた。俺も含め、俺は何もしてないのに・・・。
説教が終わり、再び部屋に戻って掃除を再開した。
床に掃除機をかけ終わり、服も整理しようとクローゼットを開けようとした時なぜか一瞬扉が開かなかった。
もう一度、手をかけると今度は普通に開いた・・・のだが。
既に整理されていた。しかも雑に入れていたものも綺麗に畳まれて。
こんなことができるのは一人しかいないので、いつもなら電話なり家に行くなりするのだが、今回は掃除の手間が省けたので許すことにした。
部屋の掃除を終え、リビングに戻ると燐と玲狐がお茶を飲んでいた。
「あ、優くん!お邪魔してるよ!!」
「お邪魔してます」
「いや、それは見てればわかるんだが。と言うか燐に関しては今日何回家に来てんだ?」
「数えてないのでわかりませんね」
「・・・おい待て、そんなに来てるのか!?」
「え、そうなの!?じゃあ私もいっぱい行くよ!!」
「いや来なくていいって!!」
「えぇ・・・燐ちゃんだけずるーい」
「玲狐」
「何?燐ちゃん?」
「これが現実よ」
「その辺にしとけって、それより今日は何の要件だ?」
「あ、そうだった!今年ももう大晦日でしょ?」
「あぁ、そうだな」
「そう言うことよ」
「うーん、大事な部分が抜け落ちてる気がするんだが?」
「それは気のせいだよー」
「気のせいね」
「たまには静かな大晦日も経験したいんだがな」
「えー、それは寂しいよー。みんなでお料理食べて、みんなでお蕎麦食べるほうが絶対楽しいよー」
「・・・それもそうだな」
その後もしばらく玲狐たちと話していると美玖が姉さんと帰って来た。
姉さんは片手に寿司を持ち、美玖はケーキを持たせられていた。
そしてその後ろに奏蘭さんもいた。
燐も驚いていた。どうやら何も聞いてなかったらしいな。
奏蘭さんは飲み物をもってきていた。
なるほど、だから冷蔵庫にはおせちのものばかりあったのか。
どうやら元々誘うつもりだったみたいだ。そうでなければ母さんが物を大量に買ってくるはずだしな。
みんな集まったところでテーブルに料理が並んでいく。
姉さんが持って来た寿司にオードブル、そこにケーキも並んで、これはもう最高じゃないか!
これだけあっても人数は8人、あっという間に無くなってしまった。
姉さんたちがお酒を飲み始めた頃、玲狐たちはお風呂に入っていた。
俺は簡単なつまみを作って、姉さんたちに渡してから洗い物を片付けた。
洗い物を終えてもまだ時間があったので、再びリビングに戻った。
すると、姉さんは既に酔っていた。悪絡みされる感じしかしなかったので早急に立ち去ることにした。
だが、今日は奏蘭さんがいると言うことを俺は完全に忘れていた。
玲狐たちがお風呂から上がり、リビングに戻ると奏蘭が優を膝の上に乗せワインを飲んでいた。
優の目は既に死にかけだったが、玲狐たちが戻って来たことにより、生気が再び宿った。
燐は奏蘭が酔っていることにすぐ気づき、解放しようとしたが何かに使えると思い放置していた。
そして、その姿を写真に収めた後に優を奏蘭から引き離した。
優はそのまま急いでお風呂へ向かった。
優がお風呂から上がった時には二人はだいぶ落ち着いていた。
優は一安心したが、奏蘭が再び優を強引に膝の上に乗せた。
姉さんも初めは引き離そうとしてくれていたが、奏蘭さんは異常に力が強かった。
そしてそのまま再び俺は奏蘭さんの膝の上に座っていた。
みんなに見られてはいたが母さんが年越しそばを持って来たことにより、なんとか解放された。
みんなで年越しそばを食べていると、除夜の鐘が聞こえて来た。
今年はどんな年になるかな、今年はもう少し落ち着けたらいいな・・・。
お読みいただきありがとうございました。ご意見ご感想などもお待ちしております。




