元カレにもらった宝石
剣のありかは俺の手で絶賛監禁中のギュンターが調べてくれた。
ギュンターは俺たちに負けた一件から俺に絶対的な忠誠を誓っている。少なくても表面上は。
あれだけ王に忠誠を誓っていた男だ。警戒を解いたら最後、後ろから刺される可能性は否定できない。
でもそれでもギュンターの歴史学者としての能力は他に代えがたい。
俺たちでは文献を読み解いて王の剣のありかを特定するのは無理だっただろう。
と、さも「俺ちゃん器でけえカッコイー!!!」と言いたそうな口調だが、内心はガクブルだ。
だってギュンター怖いもん。あの怖さは俺の中でもったいないお化けを超えたね。
戦国武将や三国志の登場人物ってチートレベルの器のでかさだわー。
正直言って俺には孟獲を仲間にできる器量はない。
デレた後のギュンターにすらビビりまくっているのだから。
俺だったら信長ちゃんに脅されたら平蜘蛛なんて土下座しながら差し出すもんねー。
と、まあ「俺に歴史に残る英雄属性はねえな」という冷静な分析をしてみると自分の立ち位置というものが見えてくる。
今のギュンターは王に捨てられた状態だ。
そりゃね。たとえ俺の暗殺に成功しても断頭台の露として消える運命だったわけだ。
王にどれだけの忠誠心があるのかは俺にはわからないがそれでも最後のご奉公だったのだろう。
つまり俺を殺すメリットはギュンターにはない。
それに俺はクズ親父のように人質を取る気はない。
王家がそういうことを繰り返したから、あの孤独でいびつな人格ができあがったのだ。
俺は同じ轍を踏む気はない。
俺は敵を作らないで上手にやっていくつもりなのだ。
そのためにはあの人にも本当の事を話す必要がある。
ローズ伯爵だ……
……俺、殴られるかも。
俺はフィーナを連れて現在ローズ伯爵が寝泊まりしている部屋を訪問した。
もしローズ伯爵がキレたらフィーナを盾にして……と、そこまで俺は外道じゃない。
とりあえず土下座をするつもりだ。
フィーナは止めてくれると嬉しいなあという淡い期待をこめて連れて行ったのだ。
「フィーナちゃん! パパりんの胸に飛び込んでおいでー!」
猫なで声だ。
「パパ」
「なあに?」
「殿下の前で恥かかせたら殺します」
「パパりんショック!!!」
フィーナは指をポキポキ鳴らす。
どうやらフィーナは武闘派らしい。
毒とか権力とかには弱いけど物理は無双か……
たぶんケンカした負けると思う。
これじゃどうやってセクハラすればいいのだ!!!
「フィーナさん」
「なんですか殿下?」
「ボクがセクハラするのはフィーナだけだよ♪」
「フライパン食べさせますよ」
にっこり。
次は拳が飛んでくるのでここまででやめよう。
では本題だ。
「ローズ伯爵」
「はッ!」
「実は私は……陛下の本当の子供じゃないみたい……なの♪」
語尾だけ可愛くしてみた。
はい。ローズ伯爵に殴られる用意。
対ショック防御。
「知ってますよ」
「はいいいいいいいいい?」
「フィーナに聞きました」
「……あの……私を抹殺する感じですか?」
ふぃいいいいいいいいなああああああああああッ!!!
ダメだ死んだ!
俺はギュンターには運良く勝てたがローズ伯爵に勝てる気はしない。
ギュンターには俺に攻撃できないという縛りがあったが、ローズ伯爵にはその縛りはない。
9割くらいの確立で負けるだろう。
正直言って虫のように潰される未来しか見えない。
「何を言っておられます。殿下は神祖の直系と聞いております。更には陛下が認めた第一王子なのです。それは揺らぎません。それに殿下が血の繋がらない母上と実の母上の両方を助けようと奮闘する姿……正直シビれました。今もその努力を続けておられるのでしょう。けなげな子供を助けるのは騎士の誉れにございます」
「あ、うん」
ローズ伯爵はとてつもなく好意的な解釈をしてくれたようだ。
「でも……大人を騙すのは感心しませんな。このたびこのローズも軍に復職することに相成りました。担当は殿下の教育係でございます。第一軍仕込みの地獄の訓練でビシバシ鍛えさせて頂きます! なにせ娘の夫となるお方ですからな。どんな地獄のような戦場でも生き延びることができるように鍛え上げますとも!」
あっれー。
よくわからないところで死亡フラグが立ったぞー。
よかったねー。
よくないわ! ぼけー!!!
「さて、殿下は何か企んでおいでだ。違いますかな?」
「はい。私もそろそろ父上の手の平から抜け出そうと思いましてね。なので手を貸して頂きたく……」
「もちろんですとも!」
悪代官と越後屋モードになった俺たちは悪だくみをする。
俺たちは妙に息が合うのだ。
◇
夜半、黒い服で身を固めたゲイルと俺は玉座を目指した。
『王の剣』を確認するためだ。
俺だってなにも神剣一つで国を獲ることができるなんて思っていない。
だがそれでも家族全員の安全を確保するためには必要だったのだ。
『王の剣』の偽物は玉座の後方の壁に吊されている。
この剣は長くて大きい両手剣。
『ツヴァイハンダー』なんて言われているものに近い。
だが俺たちが探しているのは小ぶりの両手剣だ。
いわゆる『クレイモア』と呼ばれるものに近いものだ。
俺たちが謁見の間につくと兵は誰もいなかった。
いやこれは王の挑戦状だ。
見つけてみろと言っているのだ。
「本当にここにあるんですか?」
俺は念を押した。
少なくとも玉座の後ろの剣ではないはずだ。
「ギュンターが言うにはここにあるはずです。なんでも王権を示す神器なので捨てるに捨てられないものだそうです」
俺が他人行儀な口調だったのと同じようにゲイルも親子とは思えない態度で答えた。
あれから俺たちは人前では王子と道化師でいようと決めた。
少しさびしいが仕方がないのだ。
でも軽口は忘れない。
「元カレにもらった宝石みたいなものですか」
「殿下。その言い方は全男の子を敵に回すのでやめなさい」
おっと失言だった。
ユーモアって難しいよね。
俺は特に弁明することもなく話を続ける。
「なにか口伝とかは聞いてますか?」
「ええ。『太陽のある場所に神器は眠る』だそうです」
俺は考えた。
太陽。
前世の世界では王を太陽に例えることがあった。
この世界も似たようなものかもしれない。
だとしたら太陽のある場所とは……?
「太陽、太陽太陽太陽太陽太陽……太陽は王のことです。だとしたら『太陽のある場所』とは王の居場所……玉座ですね」
俺は玉座の裏に回った。
そして考える。
「この城って築城何年ですか?」
「100年ほどかと」
「ジョン一世は何年前の人ですか?」
「およそ200年です」
なるほど。
「そのころの玉座は?」
「この部屋です」
「なるほど……」
一気にハードルが上がった。
俺は今度は石壁を叩く。
ゴツゴツという重い音がする。
「なるほどなるほど」
俺は壁を叩いていく。
玉座の後ろの壁を叩く。
ごんという音がして壁にはまった石が動いた。
「ここの石が動く」
「まかせてください!」
ゲイルが石をどかすと中からは折れた剣が見つかった。
刀身が短い両手剣だ。
「なるほどね。本当に元カレにもらった宝石だったわけか……」
俺はつぶやいた。
これで必要なものは揃った。
俺たちの決戦の日は近くなっていたのだ。
レビューありがとうございます。
あと数話で完結いたします。がんばります。




