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南野の指摘を受け堂本が声を出す。
「あの。有安君と南野先生に話さないといけないことがあります。通信機器が壊されていて、外部とは連絡できないんです。この島は携帯電話の基地局外ですし。三日後に来る船に乗らないと脱出できません」
「その心配はありません。予備の通信機器を持っていますから。それで外部と連絡しましょう」
「なぜ都合よく予備の通信機器を持っている。まさか殺人事件が発生するのを予測していたのか」
有安の指摘を受け南野は笑って答える。
「まさか。そんなことはないでしょう」
南野の一言は亡霊風水にとって誤算だった。
(南野朱里。余計なことをしやがって。いや。これは罠かもしれない。ここで動けば犯人として疑われる。警察に通報されればすぐにトリックが暴かれてしまうだろう。その前に最後の罪人を始末しなければ)
亡霊風水は焦る。その焦りが犯行を認めることになるとは知らずに。
午後一時。有安は土田と南野朱里と共に南野が所有する無線機やラジオを遊戯室に運んだ。
無線機が遊戯室の机に置かれ、成瀬が手を挙げた。
「ここは私がやろう。私はアマチュア無線の資格を持っている。それに顧問教師として生徒たちに無線で外部と連絡させるわけにはいけないだろう」
成瀬は無線を捜査して外部と連絡を取る。
五分後無線機から男の声が聞こえた。
『こちら黒川修三。どうぞ』
「成瀬隆司です。今大分県沖にある無人島浦内島にいます。あなたには大分県警に電話していただきたい。浦内島で殺人事件が発生したと」
『分かった。今から警察に電話するから、無線を切らずにしばらく待ってくれ』
黒川と名乗る男性は大分県警に通報する。その様子は無線を通して有安たちの耳にも届いていた。
『こちら。黒川修三。大分県警への通報を完了した。浦内島へ一時間前後で大分県警捜査一課の捜査員たちを乗せた船が到着する』
「分かりました。黒川さん。ありがとうございます」
成瀬は無線を切り、このことを報告する。一時間後に大分県警が到着するという事実を聞き亡霊風水の焦りは強くなる。
(時間をかけて最後の罪人をジワジワと追い詰める予定だったのに、タイムリミットが一時間になるとは。想定外だ。早く最後の罪人を処刑しなければ)




