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ウザいけどカワイイ後輩と四六時中ダベる日々。  作者: かるたっくす
2年・春――後輩、ときどき押しかけ新妻的な日々
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54.愛羽の嘘



 鍵を預かってるだって?

 ということは、愛羽は今、自分の部屋に入れないことになるわけだが。


「部屋には合鍵もあったはずだ。それを隠し持っているという可能性は?」

『それも預かっとるって話だよ。志賀さん家も厳重に管理しとらしたから、持ち出さてもいないみたいだって』

 それが事実なら、愛羽はどうやって自分の部屋から荷物を出そうというのか。

 実家には内緒で複製した合鍵をこっそり隠し持っているとか……いや、フォックスリバーの囚人じゃあるまいし。アパートの鍵なんてそう簡単には複製できないだろう。

「そもそもの話なんだが、なんであいつは一人暮らしなんてしたがったんだ。実家からは確かに遠いだろうが、通えない距離でもないだろ」

『なんだい、そんなことも訊いとらんとかい』

「訊いたよ。何度も。でも教えてくれない。ばあさんはなにか知ってるのか?」

『……さあね。そこまでは聞いてなか』


 なんだその不自然な間は。知っているけど隠しているんじゃないだろうな。

『どっちにしたって、愛羽ちゃんももうそのアパートには戻れんかもしれんけどね』

「戻れない?」

『志賀さん家も、やっぱり一人暮らしはやめさせた方がよかとじゃなかかて。こぎゃん問題ば起こすようやったら――』


 ばあさんの声が半端に途切れる。

 電波ではなく物理的な問題で、耳元に構えていたスマホが、背後からすっと取られたのだ。

 さすがに驚いて振り返ると、愛羽が立っていた。いつの間に戻ってきたのか。

「先輩のおばあさん、声が大きいですね。全部聞こえちゃってました」


 不敵に笑いながら、ピッと通話をキャンセルする愛羽。

 その意見については大いに同意するが、今はどうでもいい。


「勝手に通話中のスマホを横取りするなと習わなかったのか」

「横取りじゃありません。後ろから抜いたんです」

「どっちにしても手癖が悪い……そんなだから、一人暮らしもやめさせられる破目になるんだ」

「お説教なら間に合ってます。先輩とは、そんな話したくないです」


 どこかつまらなそうに言いながら、愛羽は部屋の奥へと入っていく。もはや自分の部屋のように遠慮がない足取りで、俺に背を向けたまま軽く伸びをしたりもして。


「随分慣れたもんだな。他人の部屋だっていうのに」

「他人じゃないです。先輩の部屋ですから」

「ほぼ同じだ……で、荷物を取りにきたとか言っていたはずだが。鍵もないのにどうやって入るつもりだったんだ」

「あたしはなにも、自分の部屋に荷物を取りにきたとは言ってませんし」

「また揚げ足取りか。そろそろ無意味な嘘はやめにしたらどうだ。時間の無駄だ」

「……それもそうですね。嘘があったことは認めます。本当は荷物じゃなくて、先輩に用があったんです」


 くるりと振り返った愛羽は、もう幾度となく見せたいかにも小生意気な微笑みを浮かべていた。


「お尋ねものを匿うとかって、興味ないですか」

「なに?」

「分かりづらかったなら、ストレートに言いますね――あたしを、泊めてさせてくれませんか? 先輩の部屋に」


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