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ウザいけどカワイイ後輩と四六時中ダベる日々。  作者: かるたっくす
2年・春――後輩、ときどき押しかけ新妻的な日々
53/57

53.久しぶりの二人きり



 ワックでポテトを食べ終わると、愛羽はアパートに荷物を取りに行きたいと言い始めた。俺は別についていきたいわけじゃなかったが、帰路に着くなら結局同じ道を行くことになる。

 例によって隣を歩く愛羽は、ワックの中にいるよりも多少慎重な振る舞いに見えた。キャップを目深に被り、すれ違う誰とも目を合わせないよう顔を俯かせている。


 それだけなら、俺も百歩譲って文句はなかったのだが……。


「なんでそんなにくっついて歩くんだ。逆に不自然だろ」


 駅前通りを過ぎた辺りから、愛羽は越冬を控えたミノムシのごとく俺の右腕にしがみついていた。歩きづらいことこの上ない。


「だってしょうがないじゃないですかぁ。今のあたし、お尋ねものみたいな感じになってますし」

「自業自得だろ。そもそもお尋ねものだから俺の腕に抱き着くというのはどういう因果関係だ」

「あんまり難しい言葉を使わないでください。弱く見えますよ、あたしの頭が」

「概ね事実だろ。目立ちたくないなら普通に歩け。その方が見つかりづらい」

「嫌です。離れたら先輩、逃げちゃいそうですし。あたしの体が手錠代わりです」


 お尋ねものみたいになっているやつが言うセリフとは思えなかった。相変わらず口だけは達者だ。

 いっそ見回りの先生に見つかって強制送還にならないかと真面目に期待したが、不幸中の幸いか、あるいは悪運高いというべきか、特に誰ともエンカウントすることなくアパートに着いた。


「いやぁ、久しぶりのお部屋ですねー。我が家に帰ってきたような気分です」


 違うだろ、と後頭部にチョップをかましてやりたい気持ちを必死に抑える。


「なに普通に上がり込んでる。お前の部屋は隣だろ」

「え、てっきり愛羽ちゃんお帰り記念の先輩主催パーリナイを催してくれるのかと」

「そんな陽キャはこの部屋にいない」

「ふっ、陽キャって。先輩もそんな言葉、使うんですね」


 変なところで噴き出す愛羽。

 こいつと絡んでいなければ、あえて使う必要もなかっただろうがな。


「荷物を取りに来たんだろ。さっさと用事を済ませて早いとこ帰れ」

「はーい。部屋から荷物を取ったら帰りますね、この部屋に」

「いや、ここじゃなくて実家に――」


 俺が言い切るよりも先に、愛羽は玄関を飛び出していた。恐らく聞くつもりなど最初からなかったのだろう。

 制服のネクタイを緩め、俺も一息つく。久しぶりに振り回されたせいでどっと疲れた気がした。やっぱりあいつと一緒にいるとろくな思いをしない。


「……まあ、あの調子なら大丈夫か」


 一週間停学はさすがに堪えているのではとも思ったが、屁とも思っていない様子だった。この分なら停学明けも今まで通りになるのだろう。ウザ絡みも健在、またデブ研の部室でも、この部屋でも……。

 なんて考えていた時、ポケットの中のスマホが振動した。

 ばあさんからの電話である――なんとなく嫌な予感がした。


『もしもし? 愛羽ちゃんはそっちにいるかい。ほら、志賀さん家のお孫さん』


 案の定だった。この人がわざわざ俺に電話してくるなんて、最近では愛羽絡みくらいのものだ。

 そしてこのタイミングで連絡してきたということは、恐らく用件は……、


「補足されなくても分かるよ。今じゃお隣さんだからな」

『そのお隣さんが、志賀さん家を抜け出したみたいなんだよ。なにかまずいことしでかして、自宅で大人しくしてるようにって話なのにね』


 やっぱりか。なにも言わずに脱走してきていたわけだ。

 で、志賀さん家のばあさん経由で、うちのばあさんにも連絡がいってとりあえず俺に電話してきたと。まあそんなところだろう。


 しかしなんと答えたものか。本当のことを言うのは簡単だが、アパートに戻ってきていることを俺が知っていると分かれば、実家まで連行してこいとか言われかねない。それは正直面倒くさい。しらを切って一人で帰らせる方が断然いい。

 なんとか上手い誤魔化し方を急ピッチで考えた始めた俺だったが、せっかちなばあさんの二の句には敵わず、


『部屋には戻ってないはずだって、志賀さん家は言ってるけどね』

「戻ってない、はず?」

『いや、戻れないって話だったかな――なにせ今、愛羽ちゃんの部屋の鍵は、志賀さん家が預かってるらしいから』



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