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ウザいけどカワイイ後輩と四六時中ダベる日々。  作者: かるたっくす
2年・春――後輩、ときどき押しかけ新妻的な日々
42/57

42.マジで修羅場る5秒前



 なぜ俺がこんなに焦っているのか。

 それはもちろん、主たる原因がまだ部屋にいるからで。


「すぅ……すぅ……」


 夕方に入ってから、志賀は壁にもたれて居眠り状態だった。

 看病の疲れもあったのかもしれない、と思うと無理やり起こすのも多少は忍びなかったが、仕方がない。


「おい、志賀。ちょっと起きてくれ」

「んんぅ……先輩? どうかしましたか」


 幸い眠りが浅かったのか、すぐに反応があった。


「緊急事態だ。今すぐ部屋に戻ってくれないか」

「緊急……? なんですかそれ、おいしいんですか」

「古典的なボケに付き合ってる暇はないんだ。頼むから、わけは訊かずに自分の部屋に帰ってくれ」

「んー、あたしまだ眠くって……先輩が古典的な方法で起こしてくれるなら、ばっちり目も覚めるかもですが」

「古典的な方法?」

「はい。王子様がお姫様を起こす時の方法、博識なら先輩ならもちろんご存知ですよね?」


 目をつむったまま、薄い唇を微かに動かす志賀。

 そんな要求ができるくらいならとっくに目が覚めているだろう。


「もうすぐ、冴姫さんがここに来そうなんだ」


 猶予がどれだけあるか分からないため、俺は賭けに出ることにした。


「元部長さんが、ですか?」

「そうだ。俺を看病してくれたとはいえ、お前はほぼ仮病で休んでるようなものだろ。面倒なことになる前に帰った方が――」

「元部長さんは、ここになにをしに?」

「え? いや、たぶん見舞いに……」


 俺の願望混じりの推測を聞くと、志賀はぱちりと目を開ける。

 そして、にんまりと、いたずらっぽく微笑んだ。


「大丈夫です。ご心配には及びませんよ、先輩。あたしが迎え撃ちますから」

「は? 迎え撃つ?」

「そうです。だってもう、お見舞いなんて必要ないわけですし。先輩にはあたしがいますから」


 どういう理屈なのかいまいち読み込めないが、志賀の表情からは謎の気迫が感じられた。

 なにをどう突っ込んだらいいか迷っていた時――ついに玄関の呼び鈴が鳴った。


「秋月君? 榊原だけど、いる?」


 ドアの向こうから聞こえてきたのは、言うまでもなく冴姫さんの声。

 もう誤魔化しは効かない。とりあえず俺が出て外で対応するか、あるいはこのまま居留守か。スマホではまだ在宅とは返答していないし……。

 そんな俺の苦悩をよそに、立ち上がった志賀が玄関へと歩いていく。


「おい、なにする気だ」

「なにって、あたしが迎え撃つって言ったじゃないですか」

「いや、だからお前が出たら面倒なことに」

「安心してください。あたしに考えがありますから」


 やけに自信たっぷりな言葉と背中だった。

 賭けてもいい。絶対ややこしいことになる。

 俺もようやくあとを追ったが、後ろから肩を掴んでの制止もむなしく、志賀の手が玄関の鍵を回し――ドアを開いた。



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