表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウザいけどカワイイ後輩と四六時中ダベる日々。  作者: かるたっくす
2年・春――後輩、ときどき押しかけ新妻的な日々
32/57

32.看病、その二



 額に心地よい冷たさを感じ、目を覚ました。

 枕元には体育座りをした志賀の姿があったが、装いが制服ではなくなっていた。白のパーカーに灰色を基調としたラフなショートパンツ。どうやら部屋着のようだった。


「あ、先輩。具合はどうですか?」


 俺が目を開けたことに気づいたらしく、志賀が気遣うような声で訊ねてくる。


「一応、あたしの部屋から冷えピタ持ってきて貼ってるんですけど、気持ちいいですか?」

「……まだ、いたのか」


 本来なら感謝を述べるべきだったのだろう。

 分かってはいたが、口からこぼれたのは率直な疑問が先だった。


「学校はどうした。早く行かないと……」

「大丈夫です。あたしも休みましたから」

「なんだと?」

「もう朝の十時です。先輩、あれからまた三時間くらい眠ってたんですよ」


 三時間か……俺も休むとは決めていたが、随分派手な二度寝をかましたわけだ。

 ――なんて自虐はともかく。


「なんでお前まで。今日から集団宿泊だったんだろ」

「はい。でも、こんな状態の先輩を置いていくわけにはいきませんから」

「だからって、嘘ついてまで」

「嘘はついてないですよぉ。ちゃんと連絡フォームにも書きましたから――『具合悪いので欠席します』って」


 してやったり、と言わんばかりのいたずらっぽい笑顔だった。

『誰の』具合が悪いかまでは明言していないから嘘ではない、というロジックなのだろう。小賢しいという感想以外浮かばない。


「修学旅行ならともかく、集団宿泊なんて面倒なことしかないって知ってますから。あ、でも安心してください。たとえ修学旅行だったとしても、先輩を見放して旅立つつもりはありませんでしたから」

「バカ言うな……俺のことはいいから、今からでも」

「もうっ、素直じゃないですね。バスはとっくの昔に出ちゃいましたし、今から行くなんて絶対無理ですから。そんなことよりも先輩の看病の方が大事です」


 はっきり言い切ると、志賀は立ち上がって台所へ向かい、ほどなく茶碗とスプーンを手に戻ってきた。


「看病その二はご飯です。お粥を作ったので、あたしが食べさせてあげます」

「……どうでもいいが、その一はなんだったんだ」

「顔の汗を拭いて、冷えピタを貼ってあげたことです。安心してください、添い寝してねんねんころりんの工程はまだこれからなので」

「まったく期待していない工程だ……普通に一人でゆっくり寝かせてくれ」

「相変わらず天邪鬼さんですね先輩って。じゃあ寝たままで結構ですので、ちゃんとお口開けてくださいね」


 つまり、あーんを受け入れろというわけか。

 普通なら絶対に断るだろうが、確かに今は上体を起こすのも辛い状態だ。無理ではないが、気持ち悪くなって吐き気を催しかねない気配はある。

 ここは有難く従っておこうと口を開けた――が、口元まで来たはずのスプーンはなぜかUターンし、


「ふーふーするの忘れてました。やっぱり看病といえばこれが定番ですねぇ」


 ……少しでも有難く感じた俺がバカだった。平手打ちしたい、俺自身を。

 しかしまあ、志賀お手製のお粥はほどよい温度で食べやすく、塩味も効いていて非の打ちどころがない出来栄えだった。多少悔しく感じるほどに。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ