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ウザいけどカワイイ後輩と四六時中ダベる日々。  作者: かるたっくす
2年・春――後輩、ときどき押しかけ新妻的な日々
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29.ずぶ濡れの王子様



 雨がやんでくれることを祈っていたが、儚い祈りだった。

 むしろ雨粒は大きくなったらしく、走っているうちに服はびしょびしょになっていた。制服から私服に着替えていたのは不幸中の幸いだったかもしれないが、薄手のパーカーを着てきたせいでやたら体に張りついて気持ち悪い。


「これでいなかったら、マジで恨むからな……」


 いっそのこと本当にいてくれない方がよかったかもしれない。

 が、ずぶ濡れになりながら走った甲斐はあったらしく、駅前の屋根があるロータリーのところに、志賀らしき女子生徒の姿を見つけた。

 ――しかしどうにも、面倒なことに巻き込まれているようだが。


「ねえねえ、いいじゃん。彼氏さんももう来ないっしょ」

「すっぽかされたんだろ? そんなやつ放っといて一緒行こうって。な?」


 志賀の前に、他校の不良っぽい男子が二人。

 いわゆるナンパか、ただ絡まれているだけなのか。

 いずれにしてもきなくさい雰囲気なのは遠目でもひしひしと伝わってくる。


「すっぽかされてません。もうすぐ来ますので、どうぞお構いなく」


 志賀は普段通りの食えない態度でにこやかに対応している。

 ただ、どこか苛立ちが透けて見えるような気がするのは俺の思い違いだろうか。


「いやいやいや、もう絶対来ないっしょ。だって俺、君が十八時くらいからここに立ってるの見たぜ?」

「もう一時間以上経ってんじゃん。そんな薄情なやつなんか待つことねえって」

「お気遣いどうも。でも、十八時じゃなくて十六時半から待ってますから。その程度のお気遣いで反故(ほご)にするような(もろ)い約束じゃありませんから」


 いや、待ち合わせは確か十七時だったはずだろ。三十分も早くから待ってったてのか、あいつ。

 というか、本当に彼氏だったとしたらあの二人組の言い分は割と真っ当なんだよな……尤も、俺は彼氏でもないし、一方的に取りつけられた約束だから守る理由もなかったわけだが。


 それでも――俺は来てしまったわけだ。

 薄情なやつになると分かっていながら、あのバカ正直な後輩のために。


「――待たせたな、愛羽(・・)


 俺の声にまず不良二人組が振り返り――揃って目をぎょっとさせる。

 まあ当然の反応か。背後にこんなずぶ濡れの男が突っ立っていたら誰だって驚く。


「先輩っ……!」


 ――いや、誰でも語弊があったかもしれない。

 なにせ志賀だけは、俺の姿を見るなり目を輝かせていたのだから。


「遅れて悪かった。見ての通り色々あってな。走ってきたんだが……この二人は知り合いか?」


 こういう時、自分の無愛想さは武器になることを知った。

 およそ尋常ではない状態の俺から睨むような眼差しを向けられ、二人組は特段(ひる)んだわけでもなかったが、とにかくつまらなそうな顔をして俺たちの前から離れていった。

 見た目や言葉遣いから勝手に不良と思っていたが、意外なほど諦めが早い。長いことこの場所に立っていたであろう志賀を割と本気で心配して声をかけていたのかも、と思うのはさすがに性善説が過ぎるだろうか。



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