表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウザいけどカワイイ後輩と四六時中ダベる日々。  作者: かるたっくす
2年・春――後輩、ときどき押しかけ新妻的な日々
23/57

23.ハンバーガーとカップ麺



 頼まれたわけでもないのに、志賀は俺のためにカップ麺の調理をしてくれた。

 一応、部屋に居座ることへの引け目でもあるのかもしれない。


「はい先輩、カップラーメンですね。熱いのでお気をつけて」

「……おお。悪い」

「いえいえ。あっ、あたしがふーふーして食べさせるとかは」

「いらん。自分で食える」


 急いで志賀から箸をぶんどる。ちょっと気を抜くとすぐに人をおちょくってくるのだから油断ならない。

 志賀は苦笑いを浮かべながら、買ってきたハンバーガーとポテトをテーブルに広げ始める。チーズバーガーとMサイズのポテト、そしてドリンク。食べ盛りの高校生にしては少な目のセットに思える。


「あ、ポテトは先輩も食べていいですよ。どうせあたしだけじゃ食べ切れないと思いますので」

「食べ切れないって、自分で選んで買ったメニューだろ」

「最初から先輩のお部屋で一緒に食べようって思ってましたから」

「そういうことか……いや、俺がもう晩ご飯を済ませてたらどうする気だったんだ」

「食べ盛りの男子高校生なんですから、晩ご飯のあとにポテトくらい余裕かと」


 普通の男子高校生とはそうなのだろうか。俺はあまり間食をする方ではないからよく分からないが。

 いや、もしかすると部活動生の兄貴がいる影響かもしれない。男子高校生=よく食べる、みたいなイメージになっていても不思議ではない。


 とりあえずラーメンを啜りつつ、ポテトも少しだけ頂戴した。

 買ってからだいぶ時間が経っているのか、揚げ立てとはほど遠いしなびたポテトだったが。


「ふふっ、なんだか変な感じですよね。同じ部屋でお互いに別々のジャンクフードを食べてるなんて」

「確かに変だが、九割方お前のせいだろう。自分の部屋に帰って食べればいいものを、あえて居座ってるんだから」

「だって、一人より二人で食べる方がおいしいじゃないですか。カップ麺だって、自分の手で作るより、可愛い後輩の愛情が込められた方が絶対おいしいと思うんです」

「カップ麵は誰が作っても同じ味だ。作り手で味が変わっていたら意味ないだろ」

「も~、先輩のいけずー。ほんとは作ってもらえて嬉しいくせに」


 ……こいつはなぜこうもポジティブシンキングなのか。

 普通ここまで邪険にされれば、まともに会話するどころか顔を合わせるのだって気が滅入りそうなものなのに。


「あ、そうだ。せっかくだし、お互いに一口ずつシェアしません?」

「シェア? ラーメンとハンバーガーをか?」

「はいっ。二人で別々のものを食べてるのも、シェアするためってことなら全然変じゃないと思うんです」

「また謎の理論を……そもそもお互い食べかけじゃないか」

「え、先輩ってもしかして間接キスとか気にしちゃう人ですか? へ~、結構うぶなところもあるんですね、先輩って」


 にやにやと、小バカにしたような笑いが向けられる。

 こんなあからさまな挑発に誰が乗るものか――そう考えて一度は無視しかけた俺だったが、


「まあ、間接キスならもうしちゃってるんですけどね。実は」


 聞き捨てならない言葉に、俺は思わず反応してしまった。


「どういう意味だ」

「だってさっき、台所で味見しましたもん。そのカップ麺」

「味見……?」

「はい。カップ麵といえど振る舞う以上、調理した者としてちゃんとできてるか確認してから出す責任がありますので。先輩のそのお箸を使って、ほんのちょっとだけ食べちゃいました。てへっ」


 いや、『てへっ』じゃないんだが。

 そんなことよりも、志賀がこの箸を使って味見をしたということは、今まで俺が口をつけて食べていたこと自体が――。

 箸で掴んだラーメンを啜れないまま固まっていると、志賀が「ふふっ」と噴き出すように笑い、


「先輩、やっぱり気にしてる」

「いや、俺は別に……」

「じゃあ、どうしてさっきから箸が止まってるんですかぁ? あたしが口をつけちゃった箸って分かった途端、食べるのを戸惑ってるように見えるんですけどぉ」

「ただの息継ぎだ。無限にラーメンを啜れるほどの肺活量があるわけじゃないからな」

「ふっ、なんですかそれ? 先輩もテンパると変なこと言うんですね」


 認めるのも癪だが、変なことを口走っている自覚はあった。

 志賀は俺の反応を見て面白がっているだけなのだから、いちいち動揺せずさっさと食べてしまっていれば――なんて悔やんでいた矢先、


「まあ、味見したなんて嘘なんですけどね」

「……は?」

「いくらあたしでも、カップ麵の味見までするわけないじゃないですか。引っかかりましたね、先輩っ」


 にやにや顔が満面の笑みにランクアップする。実にご満悦な微笑みといった具合に。

 ……女を本気で殴りたいと思ったのは生まれて初めてだ。

 なんてジョークはともかく、こうも自分がもてあそばれやすい人間だとは。我ながら情けなさ過ぎる。


 しかし、このままやられっ放しというのは先輩として立つ瀬がない。

 挑発には乗るまいと意気込んでいたが、仕方がない。

 やられたらやり返す――倍返しだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ