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ウザいけどカワイイ後輩と四六時中ダベる日々。  作者: かるたっくす
2年・春――後輩、ときどき押しかけ新妻的な日々
21/57

21.おかえり、なんて言ってやらない



 久しい談笑も、所詮コンビニまでのひと時でしかない。

 買いものを済ませた冴姫さんはその後、普通に予備校へ戻っていった。特に名残惜しい様子を見せることもせず。


 せっかくだからもう少しくらい一緒にいたかったが……。

 しかしもう、冴姫さんは受験生なのだ。

 用もないのに、ただ話したいからなんて一方的な理由で引き留めるなんて、俺にはできない。


「……あいつなら、こんなこと考えないんだろうけどな」


 ふと、屈託なく微笑みかけてくる志賀の顔が脳裏をよぎる。

 厚かましいことこの上ない後輩だが、時には羨ましく思わないこともない。

 他人にあれだけ近寄っていけるのはもはや才能の域だろう。

 ……その才能がなぜ俺なんかに向けられているのかは未だにさっぱりだが。


「――やばい。特売に行くんだったな」


 駅前まで来た本来の目的を思い出し、スーパーへ急いだ。

 結論から言うと、俺は出遅れたらしい。

 目当ての総菜はあまり残っておらず、好みの弁当も少なかった。


 弁当についてはあと一時間くらい待てば補充されるだろうが、あいにくこの辺りには時間を潰せる場所が少ない。

 いや、俺にとっては少ないだけで、カラオケやゲーセンといった普通の高校生が寄り道しそうな店は結構ある。しかし俺はまったく興味がないし、一人で行くような場所ではないことも理解している。


「せめて、書店の一つでもあればな」


 昔は駅前にもあったと聞くが、この辺りでは今やショッピングモールの中に大型書店が一つあるくらい。

 祖母の家があった辺りよりは栄えていても、所詮はこの辺りも田舎の街なのだ。


 結局そのまま帰路に着いた俺は、昨日と同じスーパーで買いものを済ませることにした。

 そしてなにを思ったか、総菜ではなく普通に食材を買っていた……まあ、たまには自炊してもいいだろうと。今から帰れば時間もそれなりにあるし、野菜炒めくらいなら作れないこともない。


 ――なんて曖昧な決意ほど、忘却しやすいものもないわけで。


 帰宅してからの俺は、ひとまず買ってきた野菜やら肉やらを冷蔵庫に入れ、部屋着に着替えを済ませた。

 まだ料理を始めるには早いと思い、居間の端っこに座り込んで読みかけの本に手を出した――これが悪手だったと気づいたのは、窓の外がすっかり暗くなった頃だった。


「……もうこんな時間か」


 そう呟いた時には、スマホの時刻は二十時を過ぎていた。

 まさか、空腹も自炊しなければいけない事実も忘れて読みふけっていたなんて。


 本の虫だと散々に言ってきた志賀に知られれば、またからかいの種にされかねないな――なんていらぬ想像をした時だった。

 玄関のドアががちゃりと開き、さも当然のように志賀が部屋の中に侵入してきたのは。


「ただいまです、先輩。はぁ~、今日も疲れましたねぇ」

「……俺も今まさに、徒労感が臨界点に達したところだが」


 嫌味のつもりだったが、俺の声に覇気がなかったせいか、志賀は「はい?」と聞こえていないようだった。

 いや、こいつのことだから都合の悪い言葉をスルーした可能性もあるが……しかし当たり前のように『ただいま』なんて言って入ってくるなんて。お前が住んでる部屋は隣だろうに。



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